Act7-128 パパは負けません!
本日三話目です。
捕まったら死ぬ。
そんな恐怖の鬼ごっこはいつものように時間切れで終わった。
いや、時間切れというか、審判という名の神の声、つまりは──。
「ぱぱとあそびたいの」
カティの鶴の一声により、嫁ズの動きはぴたりと止まった。
今回は壁際まで追い込まれなかったよ。でも三人に囲まれてしまいましたけどね。
……壁際に追いこまれるよりも怖かった。
でもそんな窮地のぱぱを助けてくれたのだから、カティは本当に優しいいい娘だね。娘の鑑と言っても過言では──。
「むぅ。どうせ私は優しくもなければ、失格な娘ですよーだ。パパのバカ」
──待って?
なんでそうなるの?
なんでいじけちゃうの、シリウスちゃんや!?
ただ、カティを褒め称えただけなのに、なんでいじけちゃうのさ!?
欲しがっていた妹ちゃんですよ!? なのにその妹が実際にできたらいじけるのはどうかと思うの!
まぁ、そういうところもパパは堪らなくかわいいんですけど──。
「わふぅ。カティはかわいくないの?」
──待って?
なんでそうなるの?
シリウスお姉ちゃんをかわいいと言ったら、なんでそうなるの!?
カティはかわいいよ!? 舌っ足らずな「ぱぱ」という声に、パパがどれだけ心の中で悶えていることか!
甘えん坊で、ちょっぴりわがままなところもかわいくて──。
「つまり私がカティくらいのときはかわいくなかったと」
「なんで!?」
なに、この堂々巡り!? シリウスを立てればカティが。カティを立てればシリウスが。どうしていじけちゃうのさ!?
これじゃパパはなにも言えないじゃんか!
なに、これはパパいじめか!?
新手のパパいじめなのか、シリウスちゃん、カティちゃんや!?
「そろそろいいかな、カティ」
「わふぅん。わかったの」
不意にシリウスとカティがアイコンタクトしていた。カティはやっぱり視線があらぬ方へと向いていたけど、それでも姉妹間での意思疏通はできている模様です。
でも俺にはさっぱりわかりませんけどね?
姉妹同士でやりとりされても困るのよ。もっとパパともお話しようよ。パパ寂しくて泣いちゃうよ?
「パパ、キモい」
「きもーい」
……うん。パパ死にたい。
というか死のう。うん、いますぐ今生とグッバイしたい。
娘たちにキモいと言われて生きている価値なんてない!
あぁ、いますぐにこの素っ首切り落として──。
「というのが、全シリウスお姉ちゃんの中で流行中のパパ遊びだよ、カティ」
「わふぅん! わかったの、シリウスおねえちゃん!」
──うん?
ちょっとパパ、意味がわからないよ?
なに、「パパ遊び」って?
パパをいじめて遊ぶことなのかい?
なにその悪夢の遊戯は!?
そんな悪魔じみた遊びはダメでしょう!? パパをいじめて遊ぶのはそんなに楽しいとでも──。
「楽しいけど?」
「たのしいの!」
──この小悪魔シスターズめ! そんな小悪魔どもにはオシオキだ!
「パパの怒りと悲しみと愛を喰らえ!」
そう叫びながら俺は小悪魔シスターズへと突貫し、そして──。
「これがパパのオシオキだ!」
愛娘たちを全力で抱き締めて頬擦りをした。
ふふふ、どうだ! オモチャのパパに頬擦りされる気分は!? パパは嬉しくて気持ちいいよ!
「……「旦那様」、それは気持ち悪いと思うのですよ?」
「気持ち悪い以外の何者でもないですねぇ~」
「でもそういうところもレアはお慕いいたしますよ」
娘の次は嫁たちからか。世知辛い世の中だぜ。
そしてレアさんや? それフォローになっていないよ?
でもそんな嫁ズの侮蔑の視線にも耐えて、愛娘ズのオシオキをする俺。これぞ俺流のパパの在り方だ!
「……うぅ、キモいの」
「きもーい」
……負けないもん。パパは負けないもん!
そうして愛娘からの非難にも負けず、涙ながらの頬擦りをし続けたんだ。
続きは三時になります。




