Act7-113 不意打ちのキス
本日二話目です。
タラシ警報と閲覧ちゅーい報が出ていますので、ご注意をば。
「禁足地」全体が揺れる。
さっきも揺れてはいたけど、今回のはさっきとは比べようもないほどに揺れていた。
「わわわっ!」
後ろからプーレの慌てる声が聞こえる。
地震なんてそうそう起こらないこの世界では、地面が揺れているのは珍しいどころの騒ぎじゃないのかもしれない。まさに驚天動地ってところなのかな?
しかもこの揺れは、地震大国である日本でもあまり起きない大規模のものだった。
プーレが慌ててしまうのも当然だ。
「ふ、ふわわわ!」
うん、当然なんだけどさ?
プーレさんや?
あなた、俺の方にわざと向かってきていないかな?
だって顔は慌てているのに、目は慌てていないもん。「チャンスなのですよ!」とか思っていそうな目だもん。狙い済ました狩人の目をしているように思えるんだけど?
気のせいだよね?
気のせいだと思いたいんだけど──。
「あ、あぁれぇ~なのですよ!」
──普段のプーレであれば、ほぼ間違いなく使わないであろう「あぁれぇ~」なんて言いながら、俺の腕の中に飛び込んできたよ、この子。
やっぱりかと思いつつも、抱き留める。避けるなんて選択肢はないからね。
「……演技ご苦労さん」
抱き留めながらも腕の中のプーレに声をかけた。するとプーレは不満げに頬を膨らました。
「そこは「大丈夫か、まいはにー」とか言うべきなのですよ!」
「……プーレのキャラじゃないよね、それ?」
「キャラとかそんなのはどうでもいいのですよ! いいから言ってほしいのです!」
「……ダイジョウブカ、マイハニー」
「もっと感情を込めて、甘い声で囁いてくださいなのですよ!」
プーレがなぜかわがままを言っている。カティがいるのだから、あまりわがままを言わないでほしいんだけど。
というかなぜにこんなわがままを言っているのかな、プーレは?
普段はこんなわがままなんて言わないはずなのに。
「一晩中心配をかけたのだから、少しくらいは労うべきなのですよ!」
「ぁ」
……そういうことか。
たしかに一晩中行方知れずになっていたんだ。
プーレも心配してしまうか。いや、プーレだけじゃない。レアだって心配してくれたはずだ。
それはうちの嫁たちだけではなく、ヴァンさんやマモンさん、タマちゃん、そしてシリウスだって同じだ。
たしかに心配をかけさせてしまったのだから、その分報いなければならないな。
「……心配をかけさせたね。ごめんな、プーレ」
いつぞやのレアの真似をして、プーレの耳元で唇を鳴らした。
……いや、心配をかけさせたと言ってもさ、プーレご所望の言葉なんて俺言えないもん。
恥ずかしくて言えないですよ。
でも、心配をかけさせたのは事実なわけだから、妥協案としてこれを選んだわけだ。……思っていた以上に恥ずかしいけどね、これ。
レアもよくこんなのできるよね。まぁレアだもんなぁ。
「ふひゅぅ~」
……なんだかすっとんきょうな声が聞こえてきましたよ?
恐る恐ると腕の中を身やると、プーレが鼻血を出しながら気絶していた。……ナゼニ?
『く、くぅ~! なぜ、なぜ私ではないのです! 私であれば、私であればぁ~!』
脳内ピンクが絶叫しているけど、いまはそんなことはどうでもいい!
「レア! プーレを預かって──」
「ふーんだ。知りません。プーレちゃんばかり優しくして」
まさかのヤキモチを妬いてくれていた。
なんでこんなときにヤキモチなんて妬くかな、この人は!?
いまはそういう状況じゃないんだよ!
「ちょ、ちょっとレア!」
「知りませんよーだ。「旦那様」のバカ」
……完全にへそを曲げていらっしゃるね、この人。
ど、どうしてあれくらいで怒るんだか。レアだって俺にさんざんしたじゃんか!
「……たしかにしましたけど、でも「旦那様」にはされていません。なのにプーレちゃんにはしてあげるんですもの。妬かないはずがないじゃないですか」
頬を膨らまして、ちょっと涙目になっていた。
たしかにレアからはされたけど、したことはなかった。でもだからってこんなときに。
「どんなときでも関係ありません。私もあなたの嫁なんですから」
すがるように俺を見つめるレア。きちんと話をするべきなのだけど、そんな時間はない。
そもそもなにが起こっているのかわからないのだから、集中すべきなのだけど、プーレを抱いているいま、集中なんてできるわけがない。
かといって、蔑ろにはしたくない。レアの言うとおり、レアも俺の嫁なのだから。それにプーレのわがままを半ば聞いた以上、レアのわがままを聞かないわけにはいかなかった。
「……わかった。わかったよ! あとでする! レアにもあとでしてあげるから!」
やけくそ気味に叫ぶとレアの目がきらりと輝いた。そそくさと俺のそばに来ると、プーレをあっさりと抱き抱えてくれた。
「プーレちゃんは任せてください!」
「……現金だよね、レアってば」
「褒め言葉として受け取っておきますね。あと」
「うん?」
「これは前払いとしていただきますね?」
レアの顔が一気に近づいた。そう思ったときには唇が塞がっていた。それも唇をあっという間に割られてしまった。
まぶたを閉じたレアの顔がすぐ目の前にある。
絡み合う水音が、場違いだというのにこだまする。
レアからの一方的なそれはどれくらい続いたんだろう?
レアはひとしきり交わし合うとようやく満足したのか、顔をほんのりと赤らめていた。
彼女との間にかかる白銀の橋を視界の端に納めながら、ぼんやりとレアを見つめていた。
「……続きは今夜です。シリウスちゃんは寝かせておいてくださいね?」
くすりと笑いながらレアが離れていく。その後ろ姿をぼんやりと眺めていると、いままで以上に地面が揺れ、そしてそれが現れた。
続きは明日の十六時にしたいです←




