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Act7-112 報復と地震

 本日は恒例の土曜日更新です。

 まずは一話目です。

 ヴァンさんの一撃は、俺が廃棄場でカオスグールに放った突きによく似ていた。


 でも、似ているだけで威力は段違いだ。


 俺は上位属性を使ったとはいえ、三つの属性までだった。


 けれどヴァンさんは六つの属性を同時に付与させていた。


 それも光魔法のひとつ「無影(インビシブル )」を併用してだ。


 残像、いや、残影に光以外の属性を付与させる。


 それも本命の五つ以外にも見せかけだけしてだ。


 相手にしてみれば、本命がどの残影なのかもわからない。いや、残影どころか、本物のヴァンさんさえ見つけられてない。


「無影」というのは、相手を幻惑させる魔法だ。その「無影」を使って攻撃力をあげるなんて俺は考えたこともなかった。


 その「無影」の残影とともにヴァンさんは六属性を付与させた突きを放った。


 相反した属性同士が合わさることで、基本属性とはいえ、その威力は爆発的に上がっていた。


 しかも相反する属性を三組だ。


 上位属性とはいえ、相反しない属性三つだった俺と、基本属性とはいえ相反する属性同士を三組を合わせたヴァンさんの一撃。


 どちらがより破壊力があるのかは考えるまでもないことだった。


 その一撃でカオスグールは断末魔の悲鳴をあげることさえできずに消滅した。あとに残ったのは、カオスグールの足跡だけ。


 その足跡から離れた場所で、ヴァンさんは剣を振り刀身を払ってから、静かに納刀していた。


 その姿はとてもきれいだった。純白の衣装から覗く褐色の素肌がアクセントになっていて、より一層その姿を可憐にしていた。


 たとえ中身が俺の知っている、あのヴァンさんであっても、いまの姿はただただ美しかった。それこそ目を奪われても無理がないほどに。その姿はきれいだった。


『ふふふ、神子様。我が主の姿はお眼鏡にかかりますでしょうか?』


 なにやら声が聞こえてきたぞ? さっき話しかけてきたミドガルズとかいう剣の声かな?


 ガルム同様に意思持つ剣のようだね。珍しいとか言っておきながら、自分でもちゃんと持っているじゃんと言いたいところだけど、さてどうしたものかな?


 どうにもこのミドガルズさん。ヴァンさんを俺の嫁にしたがっているみたいですよ? 


 まぁ、たしかにヴァンさんは美人さんだけどさぁ。中身がなぁ。


『ふふふ、神子様もまだまだですね。あれは主ティアリカの本来の姿ではないのです。いまの姿こそが本来の主ティアリカです。見たところ、神子様は貞淑な女性がお好きな模様。であれば、現在の主ティアリカはまさに神子様の理想の女性と言っても過言では──むぎゅ』


 ミドガルズさんの口調がセールストークじみてきたなと思ったら、なにやら潰れたような声を。


 見ればヴァンさんがミドガルズさんの刀身を無言で殴りつけている。


 一切の表情を消して、淡々と殴り続ける姿は一種の恐怖です。


 ヴァンさんはミドガルズさんを殴りつけると、とても清々しい笑顔を浮かべた。……どうしてだろう? うちの嫁ズと共通するものをこの人からは感じるんだが?


「ふふふ、いいですか、大将」


「あ、はい」


 清々しい笑顔を浮かべながら、ヴァンさんが俺を見つめる。とても怖いです。


「剣だけではないのです。基本こそが奥義というのは、剣だけにあらず。属性においても変わりません。私とあなたとでは、属性の使い方がまるで違う。ゆえに同じ重ね合わせるにしても威力に差が出てしまうのですよ」


 ヴァンさんは髪をそっと押さえながら言った。その姿はたしかに貞淑という言葉が似合うのかもしれない。……その少し前に起きたミドガルズさんへの愛情表現と言う名の体罰から目を逸らせば。 


 しかし基本が奥義ね。ちょっと耳が痛いな。


 なまじ天属性を使えていたからこそ、基本を疎かにしていると言われているようなものだからね。なにごとも基本が大事だと言うからなぁ。


「……まぁ、ティアリカの言うことは多少極端ではあるんだがな」


マモンさんがため息を吐きながら、フォローしてくれた。


いまのところ、その極端っぷりは俺には感じられないけど、マモンさんが言うのであれば、そうなんだろうな。でも基本こそが大事。その言葉は今後胸に刻むことにしようか。


「とにかく、これでカオスグールも退治できたかな?」


 ちょっと大変だったけど、大事にはならなかった。これで万事解決。そう思った、そのときだった。また「禁足地」が大きく揺れ動いたんだ。

 続きは二十時になります。

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