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Act7-111 剣閃転じて

 こ、この駄剣んんんんんーっ!


 よりにもよってのことをしてくれましたね!?


 よりにもよって、大将になんてことを言ってくれるのですか!


 そもそも誰が生娘ですか! た、たしかにそういう経験はありませんよ? ありませんけど、それを実際に言う必要はないではありませんか!


 そ、それをこの駄剣はぁぁぁぁぁ!


『ふふふ、どうされましたか、主ティアリカ? なにやらご機嫌ですが?』


 駄剣がとても楽しそうに笑っていますね。でも手前は楽しくないのですよ! というか楽しいのはあなただけでしょうに!


「だ、黙っていなさい、駄剣!」


 いまはこの駄剣の声を聞きたくありません。集中が乱れます。いま目の前にいる腐肉に集中しないといけないわけであって──。


「ヴァンさん、来ているよ!」


「くぅっ!?」


 あ、あぁ、た、大将の声が聞こえて。ってそれどころじゃありません。実際にあの腐肉が突っ込んできているではありませんか。


 油断するべきではないですね。集中、集中。すべての情景を追い出して、目の前の腐肉だけを見つめる。避けるのは少々難しい。であれば、断ち切るのみ。


「行きますよ、駄剣」


『ふふふ、久々に駄剣扱いですね。でも、それもよろしいでしょう。参りましょう、主ティアリカ』


 駄剣のくせに生意気な。久々どころか、あなたは昔から駄剣でしょうに!


 まったく兄上もとんでもない置き土産を残してくれるものです。


 置き土産でなければ、兄上が最後に打ち上げた剣でなければ、とうの昔に切り捨てているところです!


 ……まぁ、兄上が打ち上げてくれた剣を、切り捨てたことはいまのいままで一度もありませんから、最後の剣であろうとなかろうと、この駄剣を切り捨てることなどなかったでしょうが。


 それをわかっているからこそ、この駄剣は調子に乗っているわけでしょうけど!


「ヴァンさん!」


 そんな駄剣のせいで大将をまともに見られないではないですか!


 それどころか、大将のお声を聞くだけで集中力が削れて。


 あぁ、もう!


「やってやりますよ!」


 もう、こうなったら破れかぶれでございますよ!


 腐肉との距離はもうわずかしかない。


 でもそのわずかしかない距離でも手前には十分です。


 いまこそお見せしましょう。「剣仙」の字をいただいた一振りを。


 兄上にお見せするはずだった剣。そして大将が見据える先にある剣を!


「光魔法。無影(インビジブル)発動」


 まずは「無影」による質量を持った残像とただの残像を二重発動させる。


 無数の残像の中で五人の手前に、手前の光以外の各属性を付与させていく。


 狙うはひとつ。


 ただ真っ正面を貫くのみ。


 手前の動きに合わせて、すべての残像が体を一歩引いていく。


 刀身に付与させた属性を、切っ先に集中させる。


 これにて準備はできた。あとはただ貫くのみ。


「「剣仙」ティアリカ。参ります」


 一歩目を鋭く、速く、そして深く踏み込んだ。


 すべての景色を置いていき、この身さえもただひとつの剣と化す。


 それがこの一振り。


 五人の手前を、光以外の五属性を付与させた手前の残像を取り込み、一時だけ、ただ一時だけ統一させた一撃を放つ。


 それがこの剣。この身を「剣仙」と謳われた剣。その名は──。


「無影六閃剣」


 ──これが「剣仙」の由来。閃光の剣。剣閃を転じて剣仙となる。それが「剣仙」、すなわち手前なのです。そしてこの剣こそが大将の目指す先にあるもの。六属性同時付与の剣。ゆえに──。


「目に焼き付けてくださいませ、大将」


 手前をまっすくに見つめる大将へと出前は出来る限りの笑顔を浮かべるのでした。

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