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Act0-76 友達 その十二

PV9900突破しました!

いつもありがとうございます。

 ブラックウルフどもを、次々に「風刃脚」で倒していく。


 我ながら、なかなかの魔法を考案したものだ。


 まぁ魔法というよりかは、魔法と格闘技を合わせたものだから、「魔拳技」ってところかな。


 個人的には、「魔闘技」と言いたいところだが、魔闘と言うと、「天地」と「構え」をつけたくなる。


 この世界であれば、できるんじゃないかと思うけれど、俺が使っちゃダメだろう。


 あの奥義は、やはり大魔王が使ってこそだ。


 子供の頃に、毅兄貴と一心さんと一緒にあの奥義を使えないか試して、カイザーなフェニックスの再現ができなかったので、泣く泣く諦めた思い出がある。


 でもいまなら、カイザーなフェニックスも使えるんじゃなかろうか。


 となれば、あの奥義も使えるはず。最終的には「大魔王からは逃げられんのだ」と言えたら最高だよね。あ、でも俺大魔王とかになる気がないから言えないか。


 そう言えば、この世界って魔王という存在はいるのかな。


 「七王」さんたちがその代わりなような気がするけれど、勇者がいるんだから、魔王にもいてほしいものだ。


 そんなとりとめもないことを考えつつ、「風刃脚」を次々に放っていく。


 ブラックウルフどもは、「風刃脚」を防ぐどころか、避けることもできない。


 そのくせ次々に出て来るから、そのたびに「風刃脚」を放つだけでいいというほとんど作業ゲーのような感じになってしまっていた。


 これは一種の無限湧きのようなものかもしれない。


 ゲームであれば、無限湧きの敵キャラほどありがたいものはない。



 だってそのたびに経験値とお金が得られるのだから。経験値稼ぎにも金策にもなる。無限湧きは、そういう意味ではありがたい。


 もっとも某狩りゲーの羽根虫。あいつらだけはだめだ。


 こっちじゃなく、大型のモンスターに特攻かませよと言いたくなる。


 あいつらの麻痺針のせいで、何度ベースキャンプに戻らされたことか。ここぞというときに刺してくるのが、とても腹立たしかった。


 その狩りゲーが、次にいつできるのかは、完全に未定だが、次にプレイするときは、今度こそ刀系の武器をすべて作りたいものだよ。


 弘明兄ちゃんには、「壮大な無駄だ」と言われてしまったけれど。別にいいじゃんか。そういうプレイをしたってね。


 そのためにも、ここでブラックウルフどもは殲滅しておかないといけない。


 件のナイトメアウルフといつ遭遇するかもわからないんだ。相手の戦力はさっさと減らしておくのに、越したことはない。


 だが、一番削っておきたい戦力であるダークネスウルフは、さっきから姿が見えているのだけど、なかなか「風刃脚」の有効範囲に入ってこようとはしていない。


 有効範囲を見極められているのか。


 それともナイトメアウルフからの指示でも待っているのかはわからないが、姿を見せてから、なぜか立ち止まっているあいつを見ていると、妙な胸騒ぎを憶えてしまう。


 なにか見落としがあるように感じられる。


 そのなにかがなんであるのかまではわからないが、あいつをこのまま放っておくと、後悔しそうだ。


 かといって、有効範囲まで入り込んでも、すぐに距離を取りそうな気がする。


 俺ひとりであれば、追い付くまで追いかけてやるところだが、それではモーレを置いて行くことになってしまうし、意趣返しをされてしまうだけだろう。


 意趣返しっていっても、俺がしていたような殲滅ないしは撒くための手段とは違い、こいつらの場合は、確実に俺を罠にはめるためのものだろうから、意味合いはだいぶ異なるのだろうけれど。


 どのみち、あのダークネスウルフの始末は、次々に押し寄せて来るブラックウルフどもを殲滅し終えてからだ。じゃないと後ろが怖くて、攻撃なんてできやしない。


 せめて「風刃」よりも、射程距離が長い魔法があれば。


 「風刃脚」のように飛ばすこともできるのだけど。


「もうちょっと勉強しておけばよかった」


 各属性の初級魔法しか俺は知らない。


 中級まで習っておけば、「風刃」よりも強力で、長距離にまで届く「魔拳技」を編み出せたかもしれないのに。


 後悔先に立たずか。


 まさかその言葉をここまで的確に感じられるとは思わなかったよ。


 まぁ、いまはそんなことを言っている余裕はないし、ちゃちゃっとブラックウルフどもを殲滅しますかね。


 押し寄せて来るブラックウルフどもに向かって、何度めかになる「風刃脚」を放った。そのとき。


「か、カレンちゃん!」


 モーレが叫んだ。


 慌てて振り返ると、そこには一頭のブラックウルフに組み伏されたモーレがいた。


 組み伏されてはいるが、喉元を噛まれないようにナイフでブラックウルフの牙を防いでいた。


 いつのまに、ブラックウルフが。


 だがブラックウルフ程度であれば、すぐに始末できる。


 「風刃脚」を放つまでもない。普通の回し蹴りでブラックウルフを蹴り飛ばそうとした。


 だが、蹴り飛ばそうとして放った回し蹴りは、そのブラックウルフに咥えこまれ、防がれてしまう。


「嘘だろう!?」


 いままで倒してきたブラックウルフとは、動きがまるで違っていた。


 というか、いつのまにモーレのナイフを放したのだろう。その動きさえ見えなかった。


 だが咥えこまれたのは、逆にありがたい。


 とりあえずこれでこいつは動けなくなる。ならその隙に攻撃を叩き込む。


 咥えこまれたのとは、逆の脚でブラックウルフを攻撃しようとした。だが、それよりも早くブラックウルフは頭を左右に大きく動かした。


 踏ん張ることができず、空中で体を左右に振り回され、最後は投げ飛ばされてしまった。


 スピードもパワーもブラックウルフとはまるで違う。


 ダークネスウルフとも違う。


 ダークネスウルフがかわいく思えてしまうほどの力と速さ。


 背中を地面に強く打ちつけながら、着地する。受け身を取ることさえできなかった。


「まさか」


 見た目はブラックウルフと変わらない。


 ダークネスウルフの上位種だから、より大型な狼だと思っていたのに、その姿はダークネスウルフよりも二回りは小さい。


 毛並みの色は、下位種ふたつと同様に、真っ黒だが、ブラックウルフと見間違うほどの小柄な体型のわりに、とても艶やかだった。


 ブラックウルフはもちろん、ダークネスウルフの毛並みとも比べようもない。漆黒と言っても過言ではないほどに。


 目はとても紅い。


 宝石と言ってもいいほどにとてもきれいな瞳。


 だが、その瞳に宿る光は狂気を帯びて、その瞳に映る相手を、萎縮させるかのようだ。


「こいつが、ナイトメアウルフ」


 その姿は、たしかに悪夢と言ってもいいのかもしれない。


 下位種であるブラックウルフと見間違うほどの体格なのに、その力はブラックウルフが進化したダークネスウルフをも、はるかに凌駕している。


 それほどの力を持った個体に、ブラックウルフと勘違いして、仕掛けてしまった冒険者にとっては、悪夢以外の何物でもない。


 いわば、ダークネスウルフの力をその小さな体に凝縮し、強力にした個体ってことか。


 技術の進歩は小型軽量化にあるけれど、まさか魔物にもその理論が当てはまるなんて、誰が考えるだろうか。


 しかし理屈はわかる。


 進化するたびに大型化していったら、どこかで頭打ちになる。


 だが進化し、それまで以上の強力な力を、小柄な体に納めればどうなるのか。答えが目の前のナイトメアウルフってことなのだろう。


「……反則だろ、それ」


 ダークネスウルフでも、侮りがたいところはあったが、ナイトメアウルフは、ダークネスウルフ以上の身体能力に加えて、幻覚能力まである。


 パワーとスピードを兼ね備えただけではなく、トリッキーな部分もある。


 どう考えても強敵だ。それでいて、これでまだBランク(推定)とは。AランクやSランクの魔物はいったいどれほどのレベルだって言うんだろうか。考えたくもないな。


「それでもやるしかねえか」


 モーレはナイトメアウルフの下敷きになっている。


 モーレを守るためには、ナイトメアウルフを倒さなければならない。


 正直狼系の魔物を舐めていたかもしれない。速さだけは一丁前のカモだとしか思っていなかった。だが、それは間違いだった。


 いま目の前にいるのはカモじゃない。下手をすれば食い殺されかねない強敵だった。この強敵に勝つためには、手段なんて選んではいられない。


「行くぜ、ワン公!」


 正直怖いが、怯えるわけにはいかない。


 モーレを助けるためには、怯えてはいられない。


 痛む体に鞭を打ち、立ち上がろうとした。だが、大きな黒い塊が突っ込んできた。対処できずに、ぶつかってしまう。体が宙に打ち上げられた。


「カレンちゃん!」


 悲痛なモーレの叫び。返事をする間もなく、今度はうつ伏せで地面に着地してしまう。痛みが全身を駆け巡っていた。久しぶりに痛いと思えた。


 だが、痛いからと言って、モーレを助けないわけにはいかない。今度こそ立ち上がろうとした。だが、背中を強く踏みつけられ、地面とキスする羽目になった。


 口の中に土の味が広がる。


 見れば、ダークネスウルフが俺の背中を踏みつけている。


 さっきまで「風刃脚」の有効範囲に入らないように、立ち止まっていた個体だった。


 ナイトメアウルフが勝ち誇ったように、遠吠えをあげると周囲から無数のブラックウルフと十頭ほどのダークネスウルフが現れた。


 まだこんなにいたのか。


 その途方もない数に唖然となる。


 同時に理解できた。無限湧きとまではいかないが、いつまで経ってもブラックウルフの供給が絶えないわけだった。


「くそ、やられた」


 やはりおびき出されていたのは、俺たちだったのか。


 あのまま考えなしに走っていたら、いま以上の物量に晒されていたのかもしれない。が、いま以上の窮地に立たされていたわけじゃないだろう。


 俺もモーレも組み伏されてしまっている。


 動こうにも動こうとした瞬間に、俺の上のダークネスウルフは体重を掛けて来る。


 いくら身体能力が超人レベルになっても、自分よりもはるかに重い魔物を持ち上げることは、そうたやすいことじゃない。


 逆転の目はあるのか。


 考えようにも、モーレのことが気にかかって、まともに考えることができない。


「モーレ!」


 すぐ近くにいる。


 なのに届かない。


 その届かないはずの距離に向かって、俺は必死に腕を伸ばした。

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