表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

756/2052

Act7-96 血涙の剣

 本日十七話目です。

 肉だるまは悲鳴のような醜い声を上げ続けている。


 いったいどこからそんな声を上げているのかと思うけど、どうでもいいことだった。


 三光を宿した「黒狼望」でただ切り刻む。


 サラさんの援護である氷と炎のブレスが時折放たれていたが、サラさん自身も魔法を放ちながら、攻撃を仕掛けている。


 たいていは風系の魔法。いや、久しぶりに見る「嵐」の魔法を次々に放っていた。


「風刃」の「嵐」版である「嵐刃」が、次々に肉だるまを抉っていく。


 肉だるまはそのたびに、悲鳴をあげている。


 それでもサラさんは手を止めない。止まることなく、「嵐刃」を放ち続けていた。


 その表情は鬼気迫るものだった。


 やっぱりうちの嫁ズはぶち切れるとみんな怖いよね。


 でもそういうところも好ましいと思えるのが、俺の凄いところなのかな?


『……むしろ、あの表情を見たら百年の恋も醒めますよ、普通は』


 あ、やっぱり?


 でも現状では、ああいう表情を見られる方が俺としては好ましいよ。


 なにせ、娘を想わせる子の尊厳を愚弄されてしまっているんだ。


 怒るのも当然だもの。


 むしろここまで怒ってくれて、かえって嬉しいよ。


 ちゃんとサラさんはシリウスを娘と思ってくれている証拠だもんね。


 パパとしては、それがなによりも嬉しいよ。


『……本当にあなたはパパですね』


 恋香がなぜかあたりまえなことを言っている。こいつはなにを言っているんだろう?


 俺がパパだって?


 あたりまえだよ。俺はシリウスのパパなんだから。


『そういうことを言っているわけではないんですが、まぁ、いいです』


 恋香がため息を吐く。なにが言いたいのかはさっぱりだよ。


 でもまぁ恋香のことはいいかな?


 いま大事なのは、目の前の肉だるまを消滅させることだ。


「カティ」のことを俺はなにも知らない。


 けど、この子がまだ甘えたい盛りの子だってことはわかる。


 まだこの子の世界は両親だけだってこともわかる。


 そんな子を、生き地獄においやった。


 それが何年前なのかはわからない。もしかしたら神代の頃からいままで封印され続けてきたのかもしれない。それまではただ眠り続けていただけなのかもしれない。


 その眠りかは醒めたばかりで、消滅させられる。それだけを見れば憐れだろう。


 きっかけは誰かが結界を壊したことで、再び目覚めただけ。


 そう、こいつはまだ目覚めただけだ。


 それ以外のなにもしていない。


 けどな。


 それでもこいつは存在しちゃいけない。


「カティ」を何年もその身に取り込み続けてきた。


 それを俺は許すことはできない。


 なんで「カティ」を取り込んだのかは知らない。


 そんなことには興味はない。


 大切なのはひとつ。それは──。


「ぱぱ、たすけて」


 ──それはこんな幼い子をこいつは泣かせ続けてきたってことだ。


 まだ親と一緒じゃないと生きていけない幼子を苦しめ続けてきたってことだ!


 だから俺はこいつを滅ぼす。……「カティ」に対して俺がしてやれることはそれだけなのだから。


「「カティ」、もう少しだ。だからもう少しだけ、我慢できるかい?」


「もうすこしがまんすればいいの?」


「ああ。パパが「助けて」あげるからな」


「わかった。かてぃ、がまんする」


「……いい子だ。ちょこっと痛いかもしれないけど、我慢するんだよ」


「うん、ぱぱ」


「カティ」が笑っている。泣きながら笑ってくれている。


 ああ、胸が痛い。心が軋む。けれど笑っていよう。もう「カティ」は目さえも見えていないんだろう。


 それでも、この子の「ぱぱ」の代りにこの子を救ってあげるために。俺は笑っていなければならないんだ。


「もう少しだからな」


「うん」


「カティ」と話をしながら、歪む視界のまま俺は「黒狼望」を振るい続けた。

 続きは十七時になります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ