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Act7-90 風評被害

 本日十一話目です。

「ふ、ふわぁ~」


 透明な窓に映る光景はすごいものでした。


 マモン様とティアリカ様が黒い肉塊と戦っているのです。でも同じ戦っているでも、マモン様とティアリカ様とでは、まるで違うのです。


 マモン様は力ずくというか、膂力を持って叩き潰すというやり方なのです。


 実際肉塊はマモン様の槍で何度も叩きつぶされているのです。


 そのたびに肉塊は再生していますが、マモン様は涼しい顔のまま、次々に肉塊をミンチにされていくのです。その戦いぶりは「鬼王」と謳われるのも頷けるものでした。


 対してティアリカ様はと言うと、マモン様の真逆なのです。マモン様を剛とすればティアリカ様は柔と言えばいいのでしょうか。


 ティアリカ様が剣を振られているのですが、その剣の動きがまるで見えないのです。気づいたときには肉塊はふたつに別れているのです。まさに一閃なのです。


 そのうえティアリカ様は、ただ剣を振るわれるだけではないのです。


 時に宙へ舞い、時にくるりと回転され、時に駆け抜ける。


 そのすべてがとてもお美しくかつ、とても軽やかな動きをされています。


 それはまるで舞踊をされているかのような光景だったのです。


「まるで剣舞ですねぇ」


 駄メイドが圧巻とされています。でもそれもわかるのですよ。ティアリカ様の戦い方は剣舞と言うのが相応しいのです。


「ふふふ、ティアリカの戦い方は変わらないなぁ。いいえ、昔よりも洗練されているね」


「んだんだ。昔からきれいだったけんど、よりきれいになっただなぁ」


 レア様とゴレムス師匠が惚れ惚れとされているのです。でも無理もないのですよ。ティアリカ様の戦いは見惚れてしまうほどにお美しいのです。


 もっともお美しいからと言って、私が好きになるということはありえないんですが。私は「旦那様」ひと筋なのです。


 でも「旦那様」はいまのティアリカ様を見られたら、どうなるんでしょうね。


 ……なんだかとっても嫌な予感がするのですよ。


「旦那様」ってば、ティアリカ様をお嫁さんにしてしまいそうな気がしてならないのですよ!


「むぅ~。ティアリカ様が加わったら、余計に魔境なのですよ」


「……さすがにないと思うよ、プーレママ」


 シリウスちゃんが若干呆れた顔をしているのです。でもシリウスちゃんの意見は甘いのですよ!


「いいですか、シリウスちゃん。相手は「旦那様」なのですよ! あの「旦那様」であれば、たとえ普段が若干アレなお人であっても、問答無用に嫁入りさせてしまうのです!」


「いや、さすがにそれは」


「あるったらあるのですよ!」


「……プーレママ、お顔が怖いの」


 シリウスちゃんが怖がってしまいました。でもこればかりは譲れないのですよ。いえ、こればかりは予言できるのです!


「ああ、「旦那様」がいまこの場に現れたら、きっととんでもないことになるのですよ!」


 具体的にはどうなるのかはわからないのです。


 けれど「旦那様」であれば、きっと、きっと予想を裏切った行動に出るに決まっているのです! 


 だって「旦那様」だもん!


「……そうね、「旦那様」であれば、いまのティアリカを見たら、不思議な経緯ののちに嫁入りになりそうよね」


 レア様も同意見のようですね。さすがは私と同じ「旦那様」のお嫁さんなのですよ。だからこそなのです。


「ティアリカ様の嫁入りは断固阻止なのです!」


「というか断固拒否しないといけないと思うの」


「その通りなのですよ!」


「……ママたちが怖いの」


 シリウスちゃんがなぜか離れていますね。でもシリウスちゃんには悪いのですが、いまはそれどころではないのですよ!


「というか、そもそもカレン様がどこに行ったかわかっているだか?」


 ゴレムス師匠が正論というよりも、現実を突きつけてくれました。たしかに、たしかにそうなのです。けれど「旦那様」であれば、そのうちどーんと登場なさるに決まって──。


 ちゅどーん!


 ……なんでしょうか、いまの変な爆発音は? そう思ったときには、なぜかティアリカ様の頭上へとまっすぐに落ちていく「旦那様」のお姿が透明な窓に映ったのでした。

 続きは十一時になります。

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