Act7-69 無力
ラストがショッキングです。ご注意ください。
サラさんが地面に転がっていく。
でも転がっても何度も立ち上がっては必死に立ち向かっていた。なんでそこまでするんだろう? どうしてそこまでしてくれるんだろう?
俺はサラさんが好きだ。
でも心の底から愛しているとはまだ言えない。
その愛しているとは言えない相手を何度も抱こうとしたくせに、なにを言うのかとは思うけれど、実際俺はサラさんを心の底から愛しているとは、まだ言うことはできない。
愛せたとしても、俺はサラさんを一番に愛することはできないと思う。
俺の中での一番は、俺が一番愛する人はすでに決まっていた。それはきっとサラさん自身もわかっている。
なのになんでサラさんは、ボロボロになっても立ち上がろうとするんだろう。立ち上がってくれるんだろう? こんな最低な俺を助けるために命をかけてくれているんだろう?
いやわかっている。理由なんてないことは、俺にもわかっている。
だって俺もそうだから。
もし希望が俺を一番に見てくれていなかったとしても、俺は希望のためであれば、なんだってすると思う。
希望を助けるためであれば、命を捨ても惜しくない。
俺にとっての希望が、サラさんにとっては俺だったというだけのこと。
そう理由なんてそれくらいだ。ほかに大きな理由はない。
いや、その理由以上に大きな理由なんて存在しない。
人は愛のためであれば、命を懸けられる。それは人だけじゃなく、竜族もそして獣人だって同じなんだ。だからこそサラさんは、そしてカルディアも命を懸けたんだ。
あのとき、俺はなにもできなかった。
ただ見ていることしかできなかった。見ている間にすべてが終わってしまった。カルディアを目の前で喪ってしまった。
あんな想いはもうごめんだ。あんな悔しい想いはもう二度としたくない。そう思っていた。なのにこのざまはなんだ?
「やっぱり竜族はいいオモチャになってくれるわ。いくら攻撃してもなかなか壊れない、本当にいいオモチャよね」
「……「だんなさま」をはなせ!」
サラさんが飛びかかった。けれどそんなサラさんの腹部に手が添えられ、そして──。
「はい、残念」
とても楽しそうな声とともに炸裂音が響いた。
サラさんの身体が宙を舞い、地面に叩きつけられた。それでもサラさんはゆっくりとだが、たしかに立ち上がった。
なんだよ、このざまは。本当になんなんだよ、このざまは!?
悔しい思いはもう二度としたくないとか言っておきながら、また見ているだけじゃないか!
どうして俺はいつもこうなんだ? どうして守りたい人を守ることができない? どうしていつも目の前で喪ってしまうんだ?
「離してほしければ、もっともっと頑張りなさい? ほら、もっと私を楽しませてよ」
「ばけ、もの、め」
サラさんは立つのもやっとの身体で牙を剥いている。でもそんなサラさんを見ても、この女は笑っている。笑ってサラさんを嬲る。
やめろ。もうやめろ。やめてくれ。
見たくない。見たくないのに、見せられ続ける光景に涙がこぼれた。
それでも女はやめようとしないし、サラさんは立ちあがり続けている。
どうすればいい? どうすれば助けられる? どうすれば今度こそ俺は守ることができるんだ!?
「ふふふ、香恋ちゃんの泣き顔、すごくかわいいわね。あの子にそっくり。ふふふ、興奮しちゃう」
女の舌が俺の頬をゆっくりとなぞっていく。その光景にサラさんの目に怒りがともった。
「「旦那様」に触るなぁぁぁ!」
サラさんが吼えた。まっすぐに、いままで以上のスピードで突っ込んでくる。それでもこの女はあっさりとサラさんの動きを見切ってしまった。そして──。
「そろそろ飽きたわ」
「──あ」
──放たれた貫き手がサラさんの胸を貫いた。
サラさんの身体から力がゆっくりと抜けていくのを俺は見ていることしかできなかった。
香恋のトラウマがまたひとつ。
今夜十二時から、マグネット版の第五話です。
初めてのステータス表示しました。考えるのが大変でした←
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