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Act7-54 ツンデレ

 なんだったんだろう?


 恋香の奴、いきなり変なことを言いやがって。あいつ変なものでも食ったのかな?


 だってさ、俺のことを「お姉ちゃん」だぜ?


 たしかに双子みたいなものだと言ったし、妹という扱いをしましたよ?


 でもまさか「お姉ちゃん」と呼ばれるとは思っていませんでしたよ、はい。


 いや嬉しくないわけじゃないよ? 


 ただ、その、なんというか違和感がすごいと言いますか。


 気恥ずかしいと言いますか。


 うん、とにかく、なんとも言えない感じなんですよ。


「どうされましたか?」


 隣を歩くレアが不思議そうに首を傾げている。


 なんでもないと言うのは簡単だったけれど、レアに隠し事をするとあとで怖いから、正直に言おうか。


「恋香の奴がなんか不思議で」


「あの子はもともと不思議な子ですけど?」


「いや、それはそうなんだけどね?」


 というか、あれを不思議のひと言で片づけるのは無理がある。


 あれは不思議ではなく、変態と言った方が手っ取り早いし、的を射ている。


 どこの世界に堂々とNTRを希望する奴がいるよ。


 中にはいるだろうけれどさ、普通はそんなのと巡り合う機会なんて早々ありませんって。


 なのにレアってばあれを不思議扱いか。まぁ、かなりオブラートに包んでくれたんだろうね。


 あれも一応は俺だからね。だからこそのオブラートなんだろう。レアには頭が上がらないよ。


「なんだか急に「お姉ちゃん」って呼んできてさ」


「へぇ? あの子がですか」


「うん。ちょっと気味が悪かった」


「……それはさすがにかわいそうかと」


 レアが困ったように笑った。


 いやレアだけじゃないな。


 ゴレムスさん以外の全員が困ったように笑っている。


 でもみんなは知っているはずだ。あれがどれだけ変態なのはか。


 だからこそ気味が悪いと言ってもなんの問題もありませんよ。


「……パパは私のことをツンデレ、ツンデレって言うけど、パパだって十分ツンデレだと思う」


 まさかの愛娘からのひと言だった。


 思わぬ衝撃というけれど、それはまさにこんな感じなのかもしれない。


 というかなぜに俺がツンデレになるのよ? 意味がわからないんですけど?


「本当は嬉しいくせに、強がるパパはツンデレで十分だよ」


 ふふんと鼻を鳴らしながら胸を張るシリウス。とても愛らしいです。


 だけど、今回ばかりは見当違いだね。


 どうして俺があの変態相手に嬉しがらにゃならんのだ? 意味がわかりません。


「パパは本当にツンデレだね。レンゲから「お姉ちゃん」と呼ばれて嬉しいくせに」


「そんなことないよ? あんな変態にそんなことを言われても」


「その割には変態を連呼しているよね? 普段なら変態ってそんなに言わないのに」


 にやりと意地悪そうにシリウスが口元を歪める。


 なにを言えばいいのか、一瞬わからなくなってしまった。


 って、ちょっと待ってくれ! 


 それじゃまるで俺があの変態女からの「お姉ちゃん」呼びを喜んでいると認めたようなものじゃないか!?


 いやいや、それはない、それはない。だって俺はあんな変態女になにを言われても喜ぶわけが──。

「いい加減素直になればいいと思いますよ?」


「「旦那様」は素直じゃないのです」


「もっと素直になればいいのにぃ~」


 嫁三人がなぜかシリウスに結託してしまう。


 嫁たちがおかしいです。


 いきなりなにを言い出すのだろう? どうして俺があんな変態に──。


「レンさんは昔から素直じゃないですよねぇ~」


「なんだ? カレンさんは昔からこうなのか?」


「ええ、それはもう。昔からこんな調子ですよ」


「はぁ~。それがモテる秘訣なのかもなぁ~。ほら、普段素直じゃない奴ほど、いきあり素直になるとこう、ね?」


「はい、その通りです。レンさんはそうしていままで数えきれない女性を落として」


「風評被害はやめろ、駄メイド!」


 なんだってこの駄メイドさんは風評被害なんてしてくれますかね!? 


 というかいったいいつ俺が数えきれない女性を落としてきたよ!? 


 妙にモテるようになったのはこの世界に来てからだよ! それまでは一切モテなかったつーの!


「……ご覧の調子ですよ」


 やれやれとため息混じりに肩を竦ませるタマちゃん。


 この駄メイド、そろそろ息の根を止めてやろうか? 


 いや止めずにはいられねえ! いつぞやのダブルノックダウンの続きだ。覚悟しやがれ!


「上等ですよ! 今度こそボクが圧勝してノゾミさんをボクの嫁にするのです!」


「抜かせ! 駄メイド!」


 唐突に俺とタマちゃんの間でいつぞやの続き、第二ラウンドのゴングが鳴り響いた。


 お互いにけん制することなく、真っ先に腕を振り抜こうとしたところで──。


「ほいほい、着いただよ、オラの家だぁ」


 ゴレムスさんが不意に立ち止まった。


 その先には大きな洞窟があった。


 洞窟の前に表札替わりなのか、ゴレムスさんを模した石像が立っていた。


「……続きはまた」


「そうですね。続きはそのうちに」


 お互いの顏数センチ手前で拳を止め合いながら、俺とタマちゃんの第二ラウンドは延期することになった。


 非常に残念だが、いまはゴレムスさんの家にお呼ばれする方が先決だった。


 さてさて洞窟の中はどうなっていることやら。


 タマちゃんから視線を外し、ゴレムスさんの家である洞窟を見つめたんだ。

今夜十二時からマグネット版の八話目を投稿します。いろいろと差異があるマグネット版ですが、一番の違いが八話目になります。

https://m.magnet-novels.com/novels/52679

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