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Act7-38 ヤキモチは誰に向けて?

 今回はプーレ視点になります。

 ちなみにですが、カティアさんは狼系の獣人さんです。

「「旦那様」がベルフェ様に引きずられて、城内へと戻っていきます。


 引きずられながら、「旦那様」は「あの女」とか「スケコマシ」とか言っています。誰のことを言っているのかは考えるまでもないのです。


『「旦那様」をからかいすぎなのですよ、「カティア」さん?』


 普通の会話を交わしながら、念話で「カティア」さんとお話をする。


 めちゃくちゃ大変なのですが、教えてもらったおかげでどうにかできるようになりました。


 それでも時折とちってしまいますけど、教えてもらった直後よりかはましになってきているのです。あくまでもましな程度ですけど。


『さて? なんのことでしょう?』


 くすくすと「カティア」さんは楽しそうに笑っているのです。


 普段とはまるで違う口調ですが、他人を演じていることを楽しんでおいでのようですね。


 意外と趣味が悪いのです。


『とぼけないでください。私と「旦那様」が話をしているのが気にいらないからって、なにも遮らなくてもいいじゃないですか? 「カティア」さんって心が狭いのですよ』


『いいじゃないですか。あなたは「私」がいない間は、あの人と一緒にいられたんですよ? なのに私の前でイチャイチャしようとしているんですから、少しくらい意地悪しても罰は当たらないかと思いますよ、プーレ様?』


『そのプーレ様はやめてくださいなのです。「カティア」さんに様付けされるなんて、違和感しかないのですよ。そもそも立場は同じなんですから、様付けはおかしいのです』


『ふふふ、その同じ立場には、蛇王様もおいででしょう? あの方には様付けをしているのに、あなたには様付けをしてはいけないのはおかしなことではなくて?』


『むぅ。ああいえばこういうのです』


『年上というのはそういうものですよ』


『たった二歳しか変わらないじゃないですか』


『二歳でも私が年上なことには変わらないでしょう? プーレ様』


「カティア」さんはなにを言っても暖簾に腕押しなのです。


 くすくすと上品に笑われるだけでなにを言っても通じないのです。


 それを「カティア」さんは年上ゆえの余裕みたいなことを言っていますけど、たった二歳の違いでそこまで大きく違うことはないと思うのですよ。


 そもそもその上品な話し方はなんなんですか? 


 できるのであれば、普段からしてほしいのです。


 シリウスちゃんの影響に与えてしまうから、そういうところはきちんとしてほしいのですよ。


 というか、「カティア」さんは産まれが産まれだから、そういう話し方は普段から気をつけていればできるでしょうし、その気になれば服装や態度だって相応のことができるはずなのです。


 なのに「カティア」さんが普段そういうことをしないからこそ、シリウスちゃんはちょっぴり悪い子になっちゃっているのですよ。


 まぁ、シリウスちゃんの場合、「カティア」さんの影響を受けているというわけではなく、単純にそういう難しいお年頃になってしまっているというだけのことなんでしょうけど、それだって「カティア」さんがもっとちゃんとしていればよかったと思うのです。


 なのに「カティア」さんはできることを面倒くさがってやらないから──。


『はいはい、わかりました。お小言は結構です』


「カティア」さんがため息混じりに肩を竦められます。


 ちょうど実際に話している内容が、治療のために必要なものが足らない時期になっていることに対して、タイミングが悪いですね、と「カティア」さんがため息を吐いたところですから、ある意味ちょうどよかったのです。


 というよりも狙ってやりましたよね、この人?


『無駄に芸が細かすぎるのですよ』


『性分って奴ですよ、プーレ様』


 ふふふと「カティア」さんが上機嫌に笑いました。


 実際の会話はないものねだりをしても仕方がないのです、と私が言ったことに対して、「カティア」さんがプーレ様は前向きなお方ですね、と言われたため、場の雰囲気に合っているものになりました。


 ……なんだか「カティア」さんの掌の上で踊っているみたいで、ちょっと癪なのですよ。


『なんかちょっと腹が立つのです』


『ふふふ、怒らないでください、プーレ様。これからは「翼王」陛下からの命令であなたの従者としておそばにいることになるのですから、以前同様に仲良くしましょう?』


『いったいいつの間に、ベルフェ様に取り入ったのですか?』


『企業秘密ってところですね』


 覆面から覗く紅い瞳でウィンクしながら、「カティア」さんは言いました。


 会話の内容を完全に無視してくれましたが、いまは大事の最中ですから、誰も気にはしていないのです。


 ……以前はこういう悪戯を仕掛けることはなかったと思うのですが、もしかしてこの人こういう性格だったのです?


『あともうひと』


『はいはい、なんでしょう?』


『……「旦那様」にいつ言われるんですか?』


「旦那様」にこのまま勘違いさせ続けるのはどうかと思うのです。


 だって「旦那様」は誰よりも「カティア」さんに会いたがっているのです。


 なのに名乗らずに勘違いさせ続けるというのは、「旦那様」がかわいそうすぎると思うのですよ。


 それに「カティア」さんだって、本当は「旦那様」に会いたいはずなのです。


 だからこそさっきは私にヤキモチを妬いたわけであって──。


『そうですね。いつかは言わないといけませんね。ずっと黙っているというのは性に合いませんから。……いつかは言いたいな、「旦那様」に、また会ったねって』


 覆面から覗いた紅い瞳が揺れ動いていく。


 瞳は悲しみの色を帯びているのです。


 私としても「カティア」さんは「カティア」さんとしてではなく、「本来のこの人」として「旦那様」に会ってほしいのです。


 でもまだそれをする時期ではないのです。


『まぁ、とりあえずはしばらくの間、従者として使ってくださいね、プーレ様?』


『……できるかぎりのことはしますよ、「カティア」さん』


 ある意味茶番のようなことですが、これも必要なことなのです。


 私は小さなため息を吐きながら、「カティア」さんと一緒に怪我人さんたちの治療に取り掛かって行きました。

 ぶっちゃけプーレと「カティア」さんのやり取りが夫婦のそれっぽく見えますね。……ある意味カップリングになりそうですね←ヲイ

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