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Act7-14 「禁足地」について

 よし、よし!

 日曜日なのに、十六時更新できました!

 ……ええ、わかっていますよ。あたり前だろうってことは。

 それでもちゃんと更新できてよかったです。

「ふぅ~、食べた食べた。いやぁ~、プーレちゃんは料理上手だね! いいお嫁さんに、ってもうお嫁さんになっているか、ははは!」


 ベルフェさんはプーレの作った料理に満足してくれたみたいだ。


 作ったのは肉と山菜を炒めて丸めたソーセージっぽいものをコッペパンのようなパンで挟んだホットドッグのようなものだったり、別個で炒めた山菜とパスタ状の麺を絡めたペペロンチーノに近いものだったりとこういう宴会というよりかはパーティーでありそうなものだった。


 ……ホットドッグがパーティーで出るかどうかはさておいて。


 とにかくプーレが作ってくれたものは気軽に食べられるようなものでありつつ、家庭料理でもあり、お店でも出せるようなものだった。


 その味はたしかなもので、シリウスってば「わぅわぅ」と鳴きながら夢中になっていたものね。


 ただ、プーレが俺のためによそってくれていた分まで食べてくれましたけど。


「クロノス」で希望が玉子焼きを作ってくれたときのことを思い出したよ。


 あのときは希望に「あんたのしているのは、躾じゃなく意地悪」だと切り捨てられてしまったから、今回はシリウスが食べるのを眺めていただけだったけど、食欲が暴走してしまったシリウスをプーレはもちろん、レアやサラさんも穏やかな顔で見守っていた。


 そんなシリウスの隣ではベルフェさんが盛りに盛ったペペロンチーノをすごい勢いで食べていましたけど。


 どうもプーレの料理をいたく気に入られたみたいで「禁足地」のことを話すのも忘れて食事に没頭されていましたね。


 たしかに口の中にあるものを食べ終えてからとは言ったけど、まさかそのまま食事が終わるまで待たされるとは考えてもいなかったよ。


 でもその食事もともとようやく一段落ついた。


「禁足地」がなんであるのかは、興味があった。


 逆に言えば興味本位でしかないから、教えてもらえなくてもいいのだけど、ここまで待ったのだから少しくらいは話を聞きたいな。


「さて「禁足地」についてだけど、なにから言えばいいかなぁ」


 腕を組ながら考え出すベルフェさん。


 考え込む前にお口回りのソースはどうにかした方がいい。


 ソースべったりなのは、うちの愛娘もですけど。


 こういうところは、グレーウルフの頃から変わらないねぇ。


 とりあえずシリウスの口回りはパパとして拭いておきますかね。ふきふきと。


「あ、シリウスちゃんばかりズルい! ボクも拭いてよ」


「……ご自分で拭けるかと」


「それを言うならシリウスちゃんだってそうだろう~。えこひいきはずるいぞ~」


 ぶーぶーと文句を言うベルフェさん。……なんでこの人はダメなときは本当にダメなんだろうか?


 メリハリをつけろとは言うけれど、この人の場合はメリハリをつけすぎな気がするよ。


 言っても無駄でしょうけども。


 まぁできるときのこの人の言動を踏まえれば、それほど「禁足地」については話しづらいということなのかもしれない。


 むしろ話しづらいからこそ、ごまかすために言っている気がする。


 考えすぎと言われるかもしれないけど、話の流れを踏まえると、ごまかすためにというのは十分に考えられる。


「……ちぇ~、ごまかされてはくれないかぁ~」


 ベルフェさんは肩を落としながら言うと、「あんまり話したくないことなんだけどねぇ~」とぼやきながらも「禁足地」についてを教えてくれた。教えてくれたのだけど──。


「「禁足地」というのは、神聖な土地のことさ。母神となにかしらゆかりがある土地を「禁足地」として崇めている」


 ──あまりにもあっさりとしすぎていた。


 ごまかす内容なんてなにもない。むしろこれだけでごまかすはずがない。


「……それ以上は言えないと?」


「さて、なんのことかな?」


 ベルフェさんは口の回りのソースを拭きながら、首をかしげる。


 これ以上は自分で調べろということなのかな?


 それとも余計なことには首を突っ込まない方がいいと忠告してくれているのかな?


 たぶん両方だと思う。


 毒蛇がいる藪を下手に突っつくことはない。


 いや蛇どころか予想だにしていなかった猛獣が潜んでいるのかもしれない。


「禁足地」とはまさになにが潜んでいるのかわからない藪なのかもしれない。


 興味本位ならばここで終わらせておくのが得策なのかもしれない。


「……答えがわかったら伺わせていただぎす」


「……物好きだねぇ。ヴィヴィやプーレちゃんといったお嫁さんがいて、シリウスちゃんというかわいい愛娘もいるのに、余計なことに首を突っ込むんだ?」


 ベルフェさんは呆れている。でも呆れながらも笑ってもいた。


 俺を「誰か」と重ねているんだろうか? 俺を見る目は穏やかだけど、どこか悲しそうでもあった。


「……まぁ好きにするといいよ。ボクは一応止めたからね」


 それだけ言ってベルフェさんは取り皿を手に、料理が置かれたテーブルへと向かっていく。


「……本当に母親とそっくりだね」


 ぽつりとベルフェさんがなにかを言った。けどその声は宴会の喧騒で掻き消されてしまった。


 のんびりと歩くベルフェさんの背中を俺は見送った。

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