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Act7-12 狩り勝負

 恒例の土曜日更新です。

 まずは一話目になります。

「決着の方法に異議はないな?」


「こっちのセリフだ」


 ワイバーンの長老の息子さんと竜族の長老の息子さんが等距離でにらみ合っている。その周りには取り巻きさんたちが同じようににらみ合っていた。


 とはいえ、これから殴り合いの喧嘩が始まるわけじゃない。最初はそういう方高に話が進んでいたのだけど、ゴンさんとサラさんが──。


「我の前で下らぬ喧嘩をするつもりか、貴様ら?」


「当代の風のドラゴンロード様の御前であるぞ! 弁えぬか!」


 ──本来の竜の姿に戻って脅、もとい説得した結果、狩りでの結果で勝敗を決めるというやり方になったんだ。


 ちなみにふたりともいまだに竜の姿でワイバーンと竜族たちを見下ろしている。その眼光に参加者は全員震えているのがなんともシュールです。


「では、風のドラゴンロード様からのお言葉である! 心して聞くがよい!」


「「ははぁ!」」


「……実際に「ははぁ」って言う人たちっているんだね」


「「旦那さま」、お口チャックなのですよ?」


 プーレが小声で注意してくれる。人差し指を唇に当てるポーズは、どこの世界でも共通なんだね。


 正直人差し指をどかしてキスしたいという謎の衝動に駆られるけれど、我慢です我慢。


 どこからともなく『えー、しましょうよ~』とか聞こえてくるけれど、そんなものは無視だ、無視! 


 こんな衆人観衆の前でプーレとキスなんてできるかよ! 


 むしろそんなことをしてしまったら、レアがなにをするかわかったものじゃないもん。


 だからここは我慢なのですよ。が・ま・ん!


『そこはレヴィアごと食べちゃえば』


『黙っていろ、脳内ピンク!』


 脳内ピンクがいろいろとほざいているけれど、そんな話を聞くつもりはない。


 そもそもレアとプーレを同時に相手するとか、そんな体力はありませんからね! 


 だってさ、レアは夜すごいけれど、プーレも夜はなにげにすごいんだよね。


 ふたり一度にとか確実に体が保たないよ。


『ですよねぇ~。レヴィアは攻め攻めですが、プーレは誘い受けと言うか。涙目になりながら「だんなさまぁ」って言われるのがなんとも──』


『そうそう、あれだけでご飯食べられ──ってなんでおまえが知っているんだよ!?』


 なんでプーレとの一夜のことをこいつが知っているんだよ!? あの頃にはこいつはいなかったはずなのに──。


『ふふふ、私はあなたであり、あなたは私であるのですよ? あなたの記憶を盗み見ることくらい簡単ですよ』


『な!?』


『しかし、香恋はベッドの上だと豹変するんですねぇ。普段はわりと穏やかであるのに、ベッドの上だとかなりドエスに。そこのところどう思いますか? プーレとレヴィア』


 脳内ピンクがいきなりプーレとレアに話しかけやがった。まぁ、それだけだと理解できないような──。


『ご安心を。プーレとレヴィアには最初からつなげて話していましたから。あとサラにもですね。シリウスには武士の情けでやめてあげましたが』


『それ、武士の情けって言わないっすよ? 恋香さん』


 シリウスにつなげなかったのは当然のことだからね? 


 まだ産まれて一年足らずの子に、そんな生々しい話を聞かせてどうするんだよ!


 いや、それは置いておくとして! 


 問題なのはなんで三人にこんな生々しい話を聞かせますかね!? 


 確実に俺が窮地においやられるだけじゃねえか!


『それはもちろん、嫌が、げふんげふん、後学のためにと思いまして』


『いま「嫌が」って言わなかったか? 「嫌が」って!?』


 どう考えても嫌がらせとしか思えないんですけど!? 


 この野郎、俺にばっかり嫁がいるからって嫌がらせするかよ、普通!?


『……えっと、ベッドの上だと「旦那さま」はすごいのです』


『そうね。ベッドの上だと、すごくなっちゃうよね』


『プーレさんとレアさんや! そんなことは言わなくもいいんですよ!?』


 なぜにこの状況でこんなことを言っちゃうかな、このふたりは!? 


 わざわざ言わなくてもいいじゃんか! なのになぜに言うのよ、このふたりはさ。


『……うぅ~、職務に集中できないですよぉ~。というか羨ましいのですよぉ~』


 サラさんもサラさんでなにやら暴走していますし。


 しっかしサラさんって職務中だとまともな話し方ができるんだね。


『まぁ、これでも姉様の補佐役を仰せつかっていましたからねぇ~。百年ぶりではありますがぁ、うまくできてよかったですよぉ~』


 そう、サラさんはゴンさんの補佐役をしていたそうなんだ。


 古竜であるトカゲジジイを風の竜族のトップだとすると、当代のドラゴンロードであるゴンさんがナンバーツー。  


 そしてサラさんはナンバースリーにあたる。


 そのナンバースリーが百年も家出をしていた。


 うん、そりゃあゴンさんがあれだけ怒るのも当然だわな。


 そのナンバースリーさんは現在表情を変えないまま、ゴンさんの隣でその演説を聞いておられますが。


 もっとも内面ではいつも通りのサラさんなんだけどね。


 だからかな。時折ゴンさんが俺の方を見るんだよね。それも苦苦しそうなお顔をされてです。


『サラの手綱はちゃんと握っていてくださいねぇ~?』


 しまいには俺にどうしろと言うようなことをゴンさんは仰ってくださいました。


 本当に俺にどうしろって言うんですかね、ゴンさんってば。


 そんなことを言われても俺にもどうしようもないと思うんですけどね。


 だってこればっかりは個人の趣味嗜好ですから。


 なんて言っても聞いてくれそうにないよね。


 サラさんがこうなのは正直俺のせいじゃないと思うんだけどなぁ。


『とにかく、愚妹のことはお任せしましたからねぇ~?』


 それだけ言ってゴンさんからの念話は途切れた。そしてゴンさんの演説も終わりを迎えていた。


「では、これより狩猟による決闘を始める! 双方ともに力を尽くせ。だが決して竜の誇りを穢さぬよう、ある限りの力を尽くすがいい!」


「「御心のままに!」」


 ゴンさんが締めくくると件のふたりは揃って頷いた。


 こうしてワイバーンと竜族の狩猟による決闘は始まりを告げたんだ。


 ちなみに──。


「ベッドの上でのプーレちゃんはかわいいということなのに、私が攻め攻めというのはどういうことでしょうか? ご説明いただけますよね、「旦那さま」?」


 ──笑顔のレアさんに俺が迫られてしまったのは言うまでもない。

 続きは二十時になります。

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