Act6-98 兄との再会
更新祭り始めます!
まずは一話目です。
眠いなぁ。
やらなきゃいけないことがあったはずなのだけど、すごく眠い。まぶたを開くことさえできないくらいに眠い。このまま眠ってしまおうかな。
どうせこのまま眠りこけたところで誰にも迷惑はかけないし。うん、そうしよう。普段から忙しいんだから、少しくらい寝坊したっていいよね。
そうだよ。俺はここ最近めちゃくちゃ忙しかったんだから、少しくらい寝坊したって問題ないよね。そう問題はなにもないんだ。
「あれ? どうして忙しかったんだっけ?」
理由が思い出せない。
どうして忙しくなったのか、その理由がわからなかった。
「ん~。でも思い出せないってことは大した理由じゃないよねぇ」
大切な理由があるのであれば、そのうちに思い出せるだろうし、なにの拍子でひょっこりとその理由が現れるだろうし、いますぐに思い出せないのであれば、深く考える必要はない。
「じゃあ、おやすみ~」
とりあえず寝よう。もう眠くて仕方が──。
「こんのっ、大バカ野郎が!」
「ぎっ!?」
寝ようとしたところで、聞き憶えのある大声が聞こえてきた。
次いで頭頂部に憶えのある痛みが走った。この情け容赦のない痛みは──。
「てめぇ、香恋! いつからそんな半端になりやがった!?」
「つ、毅兄貴?」
思った通り、目を開けるとそこには俺の長兄である毅兄貴が立っていた。
「すけひと」と書かれた白いつなぎに、金髪をバンダナで隠すといういで立ちは相変わらずだった。
ぶっちゃっけチーマーと間違われてもおかしくない恰好ですけど、この人見た目はこれでもすごく真面目な人なんですよね。
礼儀はきっちりとしているし、敬語だってきちんと使える。
ただ見た目がどう見てもチーマーだから、初対面の人には勘違いされやすいんだよなぁ。
そのことをよく久美さんに愚痴っているけれど、自業自得と言いますか──。
「な、なんで毅兄貴が──ぐえっ!」
毅兄貴の登場に驚いている暇もなく、兄貴はそのまま俺の襟首をつかみあげてくれました。あ、あの、一応俺はあなたのしすたーにあたるんですけど?
「妹だろうが、弟だろうが、半端な奴は許せねえ」
メンチを利かせながら、はっきりと言いきるまいぶらざー。うん、やっぱり本物ですわ、この人。
だってさ、言動すべてが毅兄貴そのものだもの。
「とりあえず、シメさせろ。腹が立って仕方がねえ」
「すでに絞まっています、絞まっています!」
パンパンパンと毅兄貴の腕を叩く。意味合いは違うけど、すでに絞まっているのだから、これ以上は勘弁してくださいませんかね!?
言っても無駄でしょうけど!
うちの家族は大抵俺の話を聞かんけど、一番聞かないのが毅兄貴なんですよ!
むしろ、俺の声なんてそよ風程度にしか思っていないんじゃないですかね?
「どうでもいいことをぐだぐだ言っているんじゃねえよ。てめえの半端っぷりを矯正しないと気がすまん!」
「そ、そう言われましても、首が絞まっているんで、勘弁してほしいんですけど!?」
これ以上絞められたらマジ死ぬわ。
半神半人とは言え、半分は人間なんだから首を絞められたら普通に死ねる。
けれど話を聞いてはくれないんだよなぁ。もうどうしろと?
あ、ヤバい。なんか気が遠く──。
「兄貴。その辺で」
不意にまた聞き憶えのある声が。見れば眼鏡をかけたインテリジェンスなイケメンさんが──。
「なんだよ、和樹。邪魔をするのか?」
「邪魔をする気はない。ただそのままだと香恋が気絶すると言っている。香恋をシメるのは兄貴の勝手だが、気絶されると面倒だろう?」
「あ? なんで気絶なんて」
「首を絞めれば普通はそうなるよ」
「首? あれ? いつの間に?」
毅兄貴が不思議そうに首をかしげていた。
あぁ、無意識でしたか。本当に勘弁してほしいわ、この人。
どんだけやんちゃなんだろう?
俺もわりとやんちゃだけど、この人ほどやんちゃではないよ。
でもやんちゃではあるけど、仕事をするうえで大切なことはすべてこの人が教えてくれた。
和樹兄ほどではないけど、本を結構読んでいるし、こう見えてわりと理系脳な人だ。
適当なところはあるけど、勉強だってきっちりと教えてくれた。
恩義という意味合いであれば、毅兄貴には返しきれないくらいの恩を受けてきた。
……それ以上にシメられてもいたので、ちょっと苦手な人でもあるのだけど。
「道理でごちゃごちゃ抜かしていたんだな、このバカ妹は」
「……兄貴、怒りたくなる気持ちはわかるが、少しくらい手加減してやれ。まだ香恋は「力」に目覚めてはいないんだからな」
「わかっているよ。でもよ、悪いのはこのドバカだろう? 母さんがさんざん手を貸しているって言うのに、いまだに「力」を目覚めさせない、このねぼすけが悪いだろう?」
「……どうせそれだけじゃないくせに。義姉さんに「コレクション」を隠されたあげく、その鍵を香恋が持っていってしまったことを根に持っているんだろうに」
「ば、ちげえよ!」
「あぁ、もしくは香恋の嫁さんたちがたいてい巨乳であることが気に食わないとかか?」
「ち、違いますぅ~! そうじゃありません~!」
「慌てると下手な敬語が出る癖は直せよ、兄貴。貧乳こそがステータスだぞ?」
眼鏡をキラリと輝かせながら、ダメなことを言いきってしまう和樹兄。
bうちの兄貴どもはどうしてみんな性癖がダメな人ばかりなんだろう。
b性癖さえまともであれば、そう性癖さえまともならば素直に尊敬できる人ばかりなのに。
「「おまえにだけは言われたくねえよ!」」
毅兄貴と和樹兄が揃って突っ込んでくれた。
なんだか懐かしいね。
「座れ! 説教だ!」
「無論、正座だぞ、香恋」
毅兄貴と和樹兄のお顔がしかめっ面に。お兄様方の迫力はあいかわらずですね、はい。
bだからと言って、はいそうですかと座ると思うなよ? 俺だって少しは成長したんだ!
「はい、すいませんでした!」
その場で飛び上がりながらの見事なジャンビング土下座を披露した。
え?
どこが成長したんだと?
バカを言わないでいただきたい!
毅兄貴と和樹兄の怒っている現状でちんちくりんの俺がなにか言えるわけがないよ!
だってさ、やんちゃな人と精神的に人を叩き潰す人を怒らせて無事でいられるとでも?
なら余計なことを言わず、さっさと土下座でも正座でもした方が得じゃん!
「……おまえは本当に変わらねえよな」
「まったくだ。いつまで経っても不出来な妹のままだな」
毅兄貴と和樹兄が呆れている。
でもいくら呆れられようともこればかりはどうしようもないんですよ。怒らせたら面倒なトップ2を相手にどうしろと?
「……まぁ、不出来な妹のわりには頑張っているがな」
「そうだな。少し大人っぽくはなった」
不意にふたりの表情が変わった。
ふたりとも優しく笑っていた。
「兄貴たち、どうしてここに? というかここは?」
さっきから思っていた疑問をぶつけるとふたりは──。
「あの声が聞こえないのか?」
「さっきからおまえを呼んでいるだろうに」
「「旦那さま」」
耳を澄ませると、プーレの声が聞こえてきた。
続きは三時になります。
あとhttps://www.magnet-novels.com/novels/52679 始めました。
内容は「なろう」版とはだいぶ変えています。定義的には「なろう」がオリジナルと思っていただければと。一話目と同時にこちらも更新している予定ですので、よろしければお越しくださればと思います。




