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Act6-86 突破口発見?

 恒例の土曜日更新です。

 まずは一話目です。

 デウスさんの城の鍛冶場。ヴァンさんの職場に俺はヴァンさんとサラさんを呼び出した。


「急に呼び出してどうしたんだい?」


 シリウスに頼んで呼び出してもらったヴァンさんが不思議そうに首を傾げていた。


 その隣にはやはり呼び出したサラさんがいる。サラさんも事情がわかっていないから首を傾げていた。


「急に呼び出してごめんね」


「いや、別にそれはいいが。なにかあったのかい?」


「もしかしてぇ~、なにか思いつかれたんですかぁ~?」


 ヴァンさんは呼び出された理由がわからなかったみたいだけど、サラさんはわかったみたいだ。


 当てずっぽうというか、よくよく考えればそれしかないという結論に達するのは、ある意味では当然のことではあるのだけどね。


 どちらにせよ、サラさんの言っていることが当たっているのは事実だ。


 もしかしたら現状を打破できるかもしれないんだ。ならばさっそく試すべきだった。


「うん。とりあえず試してみようと思ってさ」


「ほう? なにを試すんだい?」


 ヴァンさんは興味津々な顔で、サラさんに至っては目をきらきらと輝かせている。


 最近はあまり見られなかったサラさんの表情でとてもかわいらしかった。


「うん。いままではさ、不純物をすべて取り除くことに集中していたじゃん?」


「そうですねぇ~。不純物が多いから透明にはならないんだと考えていますねぇ~」


「……もしかしたらそれが違うとでも?」


 話の流れからヴァンさんは俺の言いたいことを理解してくれみたいだ。


 そう、俺たちはいままで砂から石英だけを取り除くことに、不純物を徹底的になくすことばかりを考えていたし、なくすことだけに集中していた。


 砂鉄を取るときみたいに磁石を利用して不純物だけを取り除いたり、思い切って水で砂を流したりといろんな方法で石英と不純物を乖離させようとしていた。


 正確には石英だけを使おうとしていたんだ。


 でも何度やってもそこから先がうまくいかなかった。


 どうしてうまくいかないのか。考えても答えは出ないままだった。そういままでは。


「うん。石英だけじゃダメだと思うんだよね」


「ん~。不純物も混ぜるということですかぁ~?」


「不純物もありでいいなら、わりと楽にはなるが、あくまでも楽になるだけで、それ以前となんら変わらんことになるぜ?」


 そう、不純物を混ぜるだけであれば、俺たちが挑戦する前のグラスとなんら変わることはない。


 原点回帰というか、元の木阿弥になるだけだ。


 でもそうじゃない。俺たちがこれからすることはそういうことじゃないんだ。


「ずっと考えていたんだ。どうしたら透明なグラスになるのかなって。普通は透明ってことは不純物がなく、純粋にそれだけだと思っていた。でも考えてみれば、純粋にそれだけであったとしても、自然にあるものから作り出すのであれば、当然的に個体差は出てしまうよね?」


「……たしかにな。同じ石英であっても、すべてが同じってわけじゃない」


「鉱石でもぉ~、ものによっては傷ついているものもあれば、まったく無傷のものがありますからねぇ~」


 そうだ。人が作りだしたものでも、ひとつひとつにどうしても違いは出てしまう。


 であれば自然由来のものであれば、当然それ以上に違いは出てくる。


 同じ石英だからと言って、すべてが同じ品質とは限らない。


 つまり仲には石英の結晶自体が傷つき、使い物にならないものだって存在しているってことだ。


 石英だけを使用したからと言って、透明になるとは限らない。


 むしろ使い物にならないもののせいで、透明さがより失われてしまう可能性が高い。


「っするてーと、なにかい? 今回からは石英の品質でも取り分けるとでも?」


「……それはぁ、ちょっと時間がかかりすぎるようなぁ~」


 ヴァンさんだけではなくサラさんも苦苦しい顔をしている。


 たしかにここまでであれば、そういう発想になるのも無理はない。


 むしろそうなってしまうのは当然だよね。でも俺が言いたいことはまだ終わっていないんだ。


「ううん。それはしない。というかしたところで意味はないもの」


「意味がない?」


「うん。だってどんなに品質を厳選したところで、どうしても品質の差は出てしまうでしょう? 冒険者で言えば同じCランクであったとしても、Bランクに近い人もいれば、Cランクでも中間の人もいるし、Dランクと差がない人だっている。それと同じで、同じ品質同士にしたってその中でもまた差ができてしまうのは当然じゃなないかな?」


「たしかにそうですねぇ~。品質を揃えたところでどうしても差は出てしまうものですからねぇ~」


「大きな目で見れば同じ人であっても、より細かく見れば同じとは言えなくなっちまうもんな。そういう意味では、どんなに品質を揃えようとしたところで無理があるな」


 ヴァンさんもサラさんも理解をしてくれたようだね。


 ならば本題に入れそうだ。俺が思いついた解決策を話すことができそうだった。


「だから品質は揃えない。けれど違うことはする」


「なにをするんだい?」


「混ぜるのさ」


「なにをですかぁ~?」


「鉛をだよ」


 にやりと笑うとふたりは唖然とした顔をしていた。


 まぁ、無理もないかな。なにせ透明とは程遠いものを言ったら、誰だってそうなるよね。


「鉛って、あの鉛か?」


「うん」


「私たちにわりと縁があるあれですかぁ~?」


「そう、その鉛」


 サラさんとヴァンさんは顔を見合わせていた。


 予想だにしていなかった答えすぎて、なにも言えなくなってしまっているみたいだ。


「なんでまた鉛なんぞを?」


「あんなのを混ぜても透明にはぁ~」


「普通はそうだよね。でもだからこそ、やってみるんだよ」


「いまいちカレンさんの言いたいことがわかんねえな」


「説明してくださいますかぁ~?」


「もちろん」


 どんと胸を叩きながら、俺は鉛を使うに至った理由を説明していった。

 続きは二十時になります。

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