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Act6-85 この浮気者がっ!(Byデウス様

「ふむ。妾の玉体はあいかわらずの至高よな」


「ですねぇ~。今日もお肩を」


「触るな、駄メイド!」


「ぼ、ボクなにもしていないですよ!?」


「わぅ、うるさいの」


「我慢だ、シリウス」


 デウスさんたちがお風呂場に来てからというもの非常にさわがしくなってしまった。


 どうにもデウスさんがタマちゃんに対していままでになく、警戒しているようなのだけど、あの駄メイドさんはいったいなにをやらかしたんだろう?


 まぁ、警戒しつつもデウスさんはデウスさんで本当に嫌がっているようには見えない。


 嫌も嫌も好きのうちと申しますからね。


 まぁさすがにデウスさんがタマちゃんをそういう目で見ているとは思えないのだけどね。


 それはタマちゃんも同じだ。


 タマちゃんは俺の希望を虎視眈々と狙っているからね。


 だからデウスさんをそういう目で見ているわけがない。


 そう、見ていないはずなんだけど──。


「デウス様、せめてお髪だけでも洗わせてください!」


「断る!」


「なんでですか!? ボクのテクであれば、きっとデウス様をご満足させられるはずで──」


「テクとか抜かすな、この駄メイドが!」


「ひ、ひぃぃぃ!」


 ……えっと、なにこれ?


 タマちゃん、いつの間にデウスさんに鞍替えしたの?


「……タマモがデウスさんとイチャイチャしているね」


 冷静にシリウスが客観的な意見を述べてくれる。うん、でも実際そうとしか言えないもんね。


 タマちゃんとデウスさんのやり取りは、デウスさんが本気で抵抗をしているけど、そのやり取りはどう見てもイチャイチャしているとしか思えないものだ。


 このふたり、いつの間に付き合いだしたんだろう?


「ふたりは恋人さんなの?」


 シリウスがとっても聞きづらいことを口にしてくれました。


 まぁ俺も聞きたいっちゃ聞きたいが、とても聞きづらいことだった。


 無邪気さゆえの勝利とでも言えば──。


「な、なにを言うておる!? わ、妾がこのようなちんちくりんと」


「そんなわけがないじゃないですか。嫌だなぁ、シリウスちゃんは」


 デウスさんは慌て、タマちゃんは笑いながら否定をする。


 ふたりともそろって否定はしているのだけど、反応を見るからに状況は察することができた。


 まだ幼いシリウスにも現状がどういうことなのかは理解できたみたいで、「なるほど」と頷いている。


 まぁ、理解できる云々以前の問題と言いますか。ふたりの反応を見れば一瞬で理解できましたよ。


「なにを頷いているんですか?」


 シリウスの反応に不思議そうに首を傾げるタマちゃん。


 ……無自覚ですか、タマちゃんや。


 でもタマちゃんらしいのかな? 


 なにせEKOでも「姫」さんにあれほどアプローチをされていたというのにさ、まったく気付いていなかったもんなぁ。


 どれだけ希望にぞっこんなんだよとうちのクランと「姫」さんのクランの中心メンバーとで思ったもの。


 あのときばかりは、対立していたクラン同士で心が通じ合ったと思うよ。


 それほどにタマちゃんの無自覚っぷりはひどかったからなぁ。


「デウスさん、大変なの」


 シリウスがタマちゃんの言葉に憐れんだ顔でデウスさんを見やる。


 デウスさんが「なんじゃ、その顔は」とか叫んでいるけれど、同情するのも無理はないと思うよ。


 なにせ望み薄すぎるもん。というか性質が悪いと言いますか。


 タマちゃんって一途なくせに、無自覚に誑しちゃうんだよね、昔から。


 まぁ、昔からというほどタマちゃんを何年も前から知っているわけではないけど。


 これでも二年は一緒にゲームをした仲であるから、タマちゃんがどういう人物であるのかを知るには十分すぎる。


 ぶっちゃけたことを言うと、タマちゃん曰く現地妻を何人も作る俺よりも、タマちゃんの方がはるかに性質は悪いんですよ。


 だってさ、普通の人は心に決めた人がいるというのに、無自覚天然で女性を落とすことなんてしません。


「姫」さんはどうもタマちゃんがドストライクすぎたみたいで、話をする以前に落ちてしまったみたいだけど、タマちゃんってばそこからさらに「姫」さんをより落としてしまったというか、ぞっこんにさせてしまったんだよね。


 もちろん無自覚ですよ? あの駄メイドさんはああ見えて下手なホストよりも女性を撃墜させてしまうんだよね。


 だというのに本人は希望に一途というね。


 俺も人のことはあまり言えないけどさ、タマちゃんは俺をより発展させたひどい誑しなんですよ。


 しかも無自覚かつ天然でそれをやってくれるから、余計に性質が悪い。


 その性質が悪いタマちゃんにデウスさんは惚れてしまったみたいですね。


 思えばデウスさんと「姫」さんはわりと似ている。


 カリスマがあるところもそうだけど、傲岸不遜を地で行くところも似ている。


 一人称はさすがに「妾」ではなかったけれど、その口調はかなり似ている。


 ついでに胸部装甲の大きさもね。


 デウスさんといい、「姫」さんといい、カリスマ溢れる女傑っていうのはタマちゃんみたいなタイプに落とされやすいのかもしれないな。


「カレン、貴様、なんじゃその目は!?」


「えっと、ここにもタマちゃんに誑しこまれた人がいるんだなぁと」


「誰が誑しこまれ、うん?」


 デウスさんの動きが不意に止まる。あ、余計なことを言ったっぽいか、これ?


「ここにも?」


「えっと、タマちゃんと知り合ったところで、デウスさんと同じタイプの人が見事に誑しこまれてしまっていて」


 なんて説明するべきなのかを考えつつ、ぼかしつつ説明をした。


 いくらなんでもフルダイブ式のVRMMOなんて言っても理解してもらえないだろうし。


 とにかく大事なのはタマちゃんの所業を伝えることだ。その本人は「ふぇ?」と首を傾げている。


 おいおい、この駄メイドさん、「姫」さんのことを完全に忘れていませんかね? 


 より憐れになるからやめてあげてほしいんですけど。


 まぁ、この場は思い出さない方が最適なんですけど──。


「あー、もしかしてアオイさんのことですか?」


 言っちゃったよ、この人。


 なんでよりにもよってこの場で「姫」さんの名前を出しちゃいますかね。そんなことをしたら──。


「駄メイド。アオイとは誰だ?」


 デウスさんが表情を失くしてタマちゃんを見やる。


 無機質な目をしている。感情が一切ない目だ。それがとても怖いですね、はい。


「え、えっと、ボクとレンさんの世界で有名な遊びで知り合った、とてもボク好みの女性で──」


「ほぅ?」


 デウスさんの口元が怪しく弧を描いた。


 あ、ヤバい奴だわ、これ。


 タマちゃんもデウスさんの変化に気付いたのか、顔が引きつっています。けど、もう遅い。


「のぅ、駄メイド。妾が嫌いなものを知っているかえ?」


「き、嫌いなものですか?」


「うむ。妾が嫌いなもの、それはな」


 デウスさんがごきりと指を鳴らした。


 ただ指を鳴らしただけなのに、死神が臨戦態勢を取ったようにお目折るのは気のせいですかね? 


 死神が素振りで鎌をフルスイングしているように思えます。下手なことを言うと死にそうですね。


「貴様のような浮気者が妾は大っ嫌いじゃぁぁぁーっ!」


「う、浮気者って、なんのことで」


「黙れ! 今宵こそははく製にしてやるわぁぁぁーっ!」


「ひ、ひぃぃぃっ!?」


 デウスさんがブチ切れてタマちゃんに飛びかかった。


 飛びかかりながらどこからともなくえらく鈍い色をしたなにかを取り出して──。


「鈍い色?」


 その輝きが、鈍く光るそれが俺の琴線に触れた。


「……もしかして」


「パパ?」


「そうだよ。どうして気づかなかったんだ?」


「どうしたの?」


 シリウスが不思議そうな顔をしている。でもいまは構ってあげられる余裕がなかった。


「シリウス。サラさんとヴァンさんを連れてきてくれ」


「わぅ? ふたりを?」


「うん。試してみたいことができたんだ」


 もしかしたらグラス作りが一気に進展するかもしれない。


 胸が張り裂けそうなほどに高鳴っていく。


 高鳴る胸の鼓動を感じながら、俺はデウスさんの怒りの咆哮がこだまするお風呂場を真っ先に出て行った。


 ちなみにその後タマちゃんは、一晩中デウスさんに追いかけまわされることになったそうだけど、まぁ、自業自得ですね。

 タマちゃんのお嫁さん候補が増えました←笑

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