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Act6-81 時間がないのに、いろいろと言われています(Byカレン

 今日も元気にグラス作りだ。


 グラスの材料である石英だけを抽出する方法はまだいまいちわからない。


 なんとなくこれかなぁと思うことはあるんだけど、やっぱり一から技術を確立するのは難しいね。


 そもそもの話、以前の缶詰作りだって途中から希望の調理チートがあったからこそどうにかなったわけであって、そのチート技術がないのにどうやって技術を確立しろというんだろうね。


 それも「狼王祭」までそんなに日がないというのにも関わらず。


 デウスさんのところは下手なブラック企業もびっくりするくらいにブラックだよ。


 納期が短いというのにも関わらず、技術を確立しろなんてとんだブラック企業ですよ。


 これこそ訴えたら確実に勝てるレベルだと思うの。


 まぁ、残業代は出ないけれど、報酬は破格と言えば破格なんだよね。


 なにせ星金貨一枚の報酬だもの。日本円にしたら、たぶん億は下らない報酬だもの。


 億の報酬だからこそ、こんなブラックなことをさせられているんだ。


 いやむしろ億の報酬の割にはまだ簡単なのかもしれない。


 あくまでも客観的に見れば、デウスさんのところの労働条件はブラック企業ほどヤバいものではないんだろうね。


 俺はまだブラック企業で働いたことはないけれど、話に聞く限りだとブラック企業ってほとんど休みがないうえに、労働基準法なにそれってらしいし。


 あ、ちなみにうちのギルドは労働基準法には違反していませんよ? 


 社員みんなが和気あいあいとする笑顔の絶えない職場がモットーなので。


「そういうことを言っているところほど、労働条件が過酷なんじゃよな」


「ですねぇ~。そういうところほどブラックですからねぇ~。そもそも笑顔が絶えないと言っても、その笑顔が本当に笑顔なのかは怪しいところですもん」


「じゃな。笑顔ではあるけれど、それはみなが笑っていないとやっていられないという状況だからこそかもしれぬからの。実際がどうなのかは怪しいところじゃよ」


「特にレンさんがマスターですからねぇ~。「俺ができるんだから、おまえらもできるだろう」とか言い出しそうで怖いですよ」


「ああ、それな。自分ができるからと言って、ほかの誰にもできるとか思うているタイプってわりとおるものっよ。そういうタイプが上に立つとわりと破綻することが多いんじゃよな。そのくせ能力はあるから、性質が悪いんじゃよなぁ」


「ですよねぇ~」


 しみじみとタマちゃんとデウスさんがいろいろと言ってくれているが、ひとつ言おうか。


「外野は黙っていてよ!」


 二人が言うようなことはないよ! 


 せいぜい執行部のメンバーには無茶をさせているだけだもん。


 だって上が大変な仕事をするからこそ、下の立場の人たちも「自分たちも頑張ろう」って思うんだよ。


 上の立場の人間がふんぞり返っていて、誰が仕事をするって言うのさ? 


 少なくとも俺はそんなところでは仕事なんてしたくないもん。


 上司も部下も分け隔てなくともに苦労を味わってこそ、職場の一体感が生まれるわけであってだね──。


「それ完全にワーカーホリックですよ? というかワーカーホリックが蔓延しちゃうダメな状況なんですけど?」


「うむ。上司みずから率先して仕事をするのはいいが、その状況じゃとかえって面倒なことになりかねぬな。下手したら職場が全滅するの」


 ……デウスさんとタマちゃんがいじめる。


 現実逃避をしたいのに、現実ばかり見せてくるんだけど、どうしたらいいんでしょうか?


「経営コンサルタントに頼むのも手ですかねぇ」


「コンサルタント?」


「ああ、ボクらの世界ではそういう職種があるのです。簡単に言えば経営が行き詰っている会社が「どうすれば会社を立て直せますか」とか「現状の赤字をどうすれば減らせますか」とかをお金を払ってアドバイスしてくれる職種ってところですかねぇ」


 かなりざっくりとした説明だけど、タマちゃんの説明でデウスさんは「ああ、なるほど」と頷いていた。


 ざっくりとしているけれど、要はそういうことだもんね。実際はちょっと違うんだろうけれど、おおむねは間違っていないはず。


「たしかにこの世界にはない職種じゃな。まぁ、この世界ではそのような専門の職種はないが、似たようなことはしておるよ。主に新興の国の王や商会長が大国の王や老舗の商会長などに「お伺い」と称してアドバイスをしてもらうというのはある。おそらくはおぬしらの世界のコンサルタントとやらも、そういう流れから派生したのではないかえ?」


「ん~、たぶんそうだと思いますよ? さすがにボクもレンさんも成り立ちまでは知らないんですけど、でもそういう「お伺い」をしたのが最初かなと思います」


「であろうな。でなければそんな職種など成り立つとは思えぬ。基本的に仕事というものは「なにかを生み出すもの」じゃ。形あるものでも形なきものでもいい。なにかしらのものを作りだし、その作りだしたものから利益という目に見える形での収入を得てはじめて仕事というものは成り立つのじゃ。最初は善意でのアドバイスから始まり、そのアドバイス料だけでも仕事になると目をつけたものがいた。おそらくはそういうことであろう。もちろん考えなしにアドバイスをしたところで、先行きなどは見えておる。ゆえに統計を取り、その統計から産出したデータと比較するという作業は必要になるであろうな。いやそれ以前に統計を取ることもまた」


 デウスさんが脚を組み直しながら、経営コンサルタントのことを考えはじめていた。口にする言葉は、本当に知らなかったのかと言いたくなるほどに的を得たものばかり。


 ラースさんやレアも切れ者の王さまではあるけれど、切れ者さではデウスさんの方が上を行っているのかもしれない。少なくともレアよりかは切れ者だと思う。


「「旦那さま」、いま不穏なことを考えておられませんでしたか?」


 とても穏やかな声が背中から聞こえてきました。


 振り返ると満面の笑みのレアさんがいらっしゃいます。


 うん、現実逃避をしていましたけど、現実と目を合わせなきゃいけないみたいですね。


 レアはさっきから俺の背中にぴたりと張り付いていました。というのも──。


「プーレちゃんにばっかりご褒美をあげるんですもの。次は私の番ですよね?」


 とこめかみに青筋を浮かべられながら仰ったからです。


 ご褒美なんてあげていないと言っても聞く耳もたずでした。


 おかげで背中に圧倒的なブツを押し付けられながら作業しているわけです。


「さぁさぁ、早くお仕事を終えてくださいね」


 ふふふとレアが笑っている。笑うレアを怖いと思いつつも、俺にはどうすることもできない。


 どうすることもできないまま、俺はレアにぴったりと密着されながら作業をするしかなかった。

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