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Act6-64 この駄メイドがぁぁぁーっ!(Byデウス様(ブチ切れ)

 今日からしばらくデウスさま視点となります。

 真面目に書く予定が、うん←顔を逸らす

 いつものようにまぶたを開ける。


 窓の外から差し込む光はない。当然か。この首都付近には日の光が届かぬように妾が調整しているのだから。おかげで眷属どもはのびのびと暮らしている。


 なかには助長する愚か者もいなくはないが、愚か者などその気になればすぐにでも屠ることができる。


 それは愚か者どももわかっているだろう。だから表向きにはなにもしておらん。しかし密やかにことを為そうとしている者は少なからずおるのであろうな。


「……面倒よな」


 体をベッドから起こす。日の光に妾の玉体が照らされるのも美しいとは思うのだが、それでは眷属どもが生活できぬ。


 とはいえ眷属どもばかりをひいきするのもよくはない。


 実際この国では日に焼けた肌をしたものはほとんどおらぬ。


 日の光を浴びることは生きる上では重要なことだ。だがこの「ラスト」では叶わぬことだ。


 それでもこの「ラスト」を含めて、「ラスト」近郊の街や村には吸血鬼以外の種族も暮らしている。


 妾の魔力でそれぞれの街や村に疑似的な太陽を生じさせている場所を設けている。むろん、国境付近の街や村にはそんなものはない。あるのは「ラスト」近郊だけだ。


 眷属どもも日の下を歩ける者たちであれば、こんな面倒をしなくてもいいのだが、なかなかに難しいことだ。


「……吸血鬼とは、本当に面倒な種族よな」


 日の下もまともに歩けぬくせに、どいつもこいつも選民思想の塊だった。吸血鬼がそんなに偉いのかと言いたくなることはよくある。


 その大口を日の下の元でも言ってみよ、と試しに連れて行ってやると、誰もがみっともなく慌てふためき、最後は灰になる。


 大昔に何度かしたら、すっかりと妾に逆らうことはなくなった。ただ逆恨みをするアホウはいまも残っておるようじゃが。


 いったい誰のおかげで過ごしやすい環境を与えられていると思っているのやら。


 事実を口にしたところで、そやつらの頭の中はお花畑でできているのだろうから、言ったところで意味はないのであろうな。


「ふへへへ~、デウス様ぁ~」


「はぁ」


 ぼんやりとしていると、胸の辺りからアホウの声が聞こえてきた。視線を下げると駄メイドが無駄に多い尻尾を振りながら、妾の胸に顔を埋めて眠っておる。


「まったく毎晩毎晩妾の胸を枕にしよって」


 駄メイドは至福の表情を、だらしない顔を浮かべて眠っていた。


 こやつを引き取った晩にその血を啜ってやってから、喘ぎながら気絶してからというもの、こやつは毎晩妾の胸を枕にしておる。


「……あれは失敗じゃったな」


 まさか気絶するとは思っていなかった。


 いつもであればある程度まで啜ったら、部屋から追い出す。


 しかしこの駄メイドは気絶しておったから、追い出すわけにもいかなかった。


 かと言って起きるまで面倒を見てやる気もなかったが、ベッドから蹴落とすのもかわいそうだと思ってしまった。


 いま思えば「かわいそうだ」と思ったことが失敗であった。「かわいそうだ」などと思わなければ、この駄メイドが調子づくこともなかったであろうに。


 すべては妾の浅慮さが招いたことである。その責任を取るために、毎晩駄メイドの枕として妾の胸を貸してやっているにすぎぬ。決して駄メイドに心を許したわけではないのじゃ。


「デウス様のお胸は最高なのですぅ~」


「……あたり前のことを、なぜ嬉しそうに言うかの」


 駄メイドは幸せそうに言っている。まったくこの駄メイドはなにをあたり前のことを言っておるのやら。


 うん? なんじゃろうな。なぜか体が熱い。いや、というか顔が熱いような。いやいやいや、気のせい。気のせいじゃな。うん、妾がこの駄メイドの寝言になぞ喜ぶわけがなかろうに。


「デウス様ぁ~、大好きですぅ」


「っ!?」


 待て。落ち着け、妾! なぜ、なぜ胸を高鳴らせているのじゃ!? こ、こんなちんちくりんな駄メイドの言葉に動揺するでないわ!


 こ、こんな駄メイドなどただ妾の暇つぶしの道具にしかすぎぬのだぞ!? そうじゃ、妾の心はすでに「あの男」に奪われておる。


 レヴィアのように移ろいやすい痴女とは違うのじゃ。妾はこれと決めた者を一生愛すると──。


「デウス様を、ボクのお嫁さんにするのですよぉ~」


「な、な、なぁっ!?」


 ななななな、なにをぬかすかぁぁぁぁ、この駄メイドはぁぁぁぁーっ!? 


 駄メイドのくせに妾の夫になるとでも言うつもりかえ!? 


 あのアホ神が言うことが事実であれば、これを伴侶にしてもなんの問題もないとは思う。思うがの。妾は女同士でけ、け、結婚などするつもりはないのじゃ!


 だいいち妾の想い人は「あの男」であるからして、このような駄メイドなどは──。


「ふへへへ~、幸せにしますよぉ~」


「く、くぅっ!?」


 とても幸せそうな寝顔を浮かべる駄メイド。だ、駄メイドのくせに生意気なことを! そもそも食わせてもらっている分際のくせに、なぁにが「幸せにしますよぉ~」じゃ! 貴様のどこに妾を幸せにする甲斐性などあるのじゃよ!


「ん~、あ、デウス様だぁ~。へへへ~」


 妾が動揺を続けていると、駄メイドがまぶたを開けよった。ただ、なぜじゃろうな? 身の危険をひしひしと感じるのじゃが?


「お、起きたらさっさと──」


 どかぬか。そう言おうとしたが、実際に言うことはできなんだ。なぜならば駄メイドは妾の背中に腕を回すとそのまま抱き寄せおった。え、と困惑したときにはすでに遅く、妾の唇に駄メイドの唇が。


「──っ!?」


「ボク、タマモは~、狼王デウス=ラスト様を世界一幸せなお嫁さんにすると宣言しますですよぉ~」


 えへへへぇ~と寝ぼけた顔で寝ぼけたことを抜かしてから、駄メイドは妾を押し倒して──ってちょっと待って!?


「ま、待って。ちょっと待ってよ、お願いだから、ちょっとだけ待ってぇ!?」


 い、いかん。す、素の口調になっている!? 妾から威厳が消え去ってしまうではないか!? 


 いや、そんなことを言っている場合ではなく、貞操の危機だよ!?


「わ、わた、じゃなく、妾は初めてなんだから、や、優しく──」


 ってちがぁぁぁーう! そういうことじゃない! そういうことじゃないの!? なんでされる前提で話をしているのかな、私はっ!? 


 あぁ、もう完全に素の口調になっているし! こ、こんなところをレヴィアに見られたら確実にからかわれる! 絶対に死ねる! いや私が死ぬ前にあの女を殺す! 


 い、いや、その前にこの駄メイドをくびり殺さないと──。


「た、タマモ。落ち着きなさい! 話せばわか──」


「すやぁ~」


「……は?」


 駄メイドからなにやら寝息が。


 いや、まさか、まさかね? そんなことがあるわけが。


 恐る恐るとタマモを見やるとタマモは再び幸せそうに眠って──。


「ちょっと待ってごらぁぁぁーっ!」


 お、押し倒すだけ押し倒しておいて、なに眠っているんだよ!? 


 ふざけないでよ、私の純情を返せ! 


 いや、そうじゃない。そうじゃないよ、私!? 


 だ、ダメだ。この駄メイドのせいで「妾モード」になれない!?


「ふぇ~? デウス様ぁ、どうされましたかぁ~? あ、おはようございます~?」


 私の動揺を完全に無視するようにタマモが起きた。まるでいままでのことがなかったかのようなその振る舞いに私の、いや、妾の堪忍袋は盛大にブチ切れた。


「駄メイドぉぉぉーっ!」


「ぼ、ボクがなにをしたですかぁぁぁーっ!?」


「なにを? なにをしただとぉっ!? いい度胸よな!? 今日という今日は許さぬ! くびり殺してくれるわ!」


「ひ、ひぃぃぃーっ!?」


 妾の怒りに触れて駄メイドが一目散に逃げだす。逃げだせると思うなよ!?


 妾は着の身着のままで駄メイドの後を追いかけた。

 ちゃうねん。

 ちゃうねん。

 デウスさまの朝のシーンを書いていたはずなのに、気づいたらタマちゃんが暴走していたんよ。

 でもデウスさまのギャップを書けたから、後悔はしてない←きっぱり

 ……さーせん←汗

 とにかく次回もデウス様です。

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