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Act6-62 嫁入りの理由

 本日五話目です。

 サラさんがどうして嫁入りを決意したのかがわかります。

 ……わかるといいな←汗

 こんにちは、鈴木香恋てす。


 早速なんですが、ダレカタスケテ。


「それで?」


 現在俺の前にはニコニコと笑うレアがいます。


 レアはニコニコと笑いながら、その長く美しいおみ足を組んでいらっしゃいます。


 いやぁさすがはレア様です。どこもかしこもお美しく──。


「お世辞は聞きたくありません。ちゃんと答えてくださいね?」


 ……いやいやいや、お世辞ではなく──。


「オシオキが必要ですか?」


 にこりと笑うレア様の眉間に青筋が。ごまかしたら本気でヤバい。


「……それでとは?」


 とりあえずは聞き返すことから始めようか。うん、ごまかしはよくないよね? ごまかすと言うことは、なにかしら後ろめたいことがあるという証拠だと思うんです。


 そう、俺にはそんな後ろめたいことなんて皆無です。だからごまかしなんて──。


「ふぅん? 白を切るんですねぇ~?」


 ニコニコと笑うレアさん。


 うん、下手なことを言うと怒られる以前の問題ですね。


 だからと言って俺になにを言えと──。


「サラさんでしたね?」


「……さ、サラさんがなにか?」


「ごまかしちゃダメと言いましたよね?」


 レアの髪がゆっくりと宙に舞い始める。よく見ると瞳孔が縦に裂けつつあるような──。


「ごめんなさい。本当にごめんなさい! 今回は、いえ今回もわざとというわけではないんです!」


「……私はまだなにも言っていないんですけど、謝るということは謝らなきゃいけないことを「旦那さま」はしたということですか?」


 しまった! 選択ミスだ!

 

 せ、セーブ、セーブポイントはどこですか!?


 やり直し、そう、やり直しをさせてください!


「やり直しなんてできるとでも?」


 青筋を浮かべたまま笑うレアさん。お目目が完全に縦に裂けておりますね。


「……違う。違うんです。これは違うんですよ!?」


「なにが違うんですか? サラさんを侍らせておいて」


 レアの目から温かみが完全に消えました。


 でも無理もないよね。なぜか俺はいまサラさんを侍らせる形になっております。


「ふふふぅ~、「旦那さま」」


 サラさんは幸せそうに俺を呼んでいます。


 その呼び名はもう気にしないことにしました。


 というかね。城に戻るまで散々説得はしたんですよ?


 でも、サラさんは聞く耳持たずです。


 それどころか「プロポーズしたのに、捨てるんですかぁ~?」なんて涙目で言ってくれましたからね。しかも道端で。


 お陰で人の目が鋭かったですよ。罪悪感が半端じゃありませんでしたね。


「「旦那さま」は最低なのです」


 なによりもプーレからの好感度がご臨終していたのも原因かな。


 もうなにか言う気力さえなくなり、こうして俺はサラさんを侍らせる形で城に戻り、レアとのお話を受けているわけです。


 ただね? ひとつ言わせてほしいな。


 俺だって。俺だってこんなことになるとは思っていなかったんだい!


 なんだよ、武器を女鍛冶師の前で進化させる=プロポーズって!


 そんなの初耳だっつーの!


 というか新手の詐欺だよ! 明らかに裁判案件だよ! 法廷で争ったら完全に勝てる自信あるよ! だから。だからさ──。


「誰か弁護士を呼んでください!」


 裁判で無敗の弁護士とかじゃなくていいんで! 


 もうこの際的外れなことを抜かす弁護士でもいいんで、とにかく弁護士をお願いします! 


 どんな弁護士でも今回の件であれば勝訴は間違いないと思うの。だから弁護士をお願いします!


「ごちゃごちゃうるさいですよ?」


 レアの手がゆっくりと俺の頬を撫でていく。いつもの口調なのに、すでに髪が無数の蛇さんに。まずい、まずいですよ、これは!?


 というか、シリウスが。そう、シリウスが見ているんだから、こんなところで本当の姿にならなくてもいいんじゃないでしょうか、レアさんや!?


「大丈夫ですよ? だってもう本性は知られてしまいましたからね。隠し通したかったのですけど、まぁ、いつかはバレることです。それと同じように私の本当の姿もいつかは気づかれてしまうでしょうから。それが少し早まったと思えば、問題はないです」


 レアは笑っていた。笑っているけれど、どこか悲しそうなものだ。


 普段であればあの手この手でレアを慰めるところだけど、そんなことをしていられる余裕はいまの俺には皆無です! むしろそんな余裕があるわけねえだろうに!


「さぁ、「旦那さま」、一緒に堕ちるところまで堕ちましょうか?」


 いかん、レアが。いやレアまでもがヤンデレになっている!? ヤンデレはアルトリアだけで十分ですよ!? 言ったところで誰も話を聞いてくれないでしょうけどね!?


「……あのぉ~、レア様?」


 本当に誰かタスケテ。そう思ったとき、それまで黙っていたサラさんが恐る恐ると手を挙げていた。


 レアはとても冷たい目で「なんですか?」とサラさんに尋ねる。サラさんは顔を引きつらせながらもどうにか返事をした。


「え、えっとですねぇ~。私は別に正妻の座を狙うつもりはないのですよぉ~。末席でもいいのでぇ~、お嫁のひとりとして数えていただければなぁ~と思っているだけなのでぇ~」


「そういうことを言う人ほど、あっさりと正妻の座を奪い取るものですよ?」


「いえいえいえ~、私はレア様たちのような美人でもありませんのでぇ~、正妻の座なんてとてもではないけれど、狙ってはいませんからぁ~。それに」


「それになんです?」


「嫁入りはあくまでもぉ~、仕事を円滑に進めるためのものと考えていますのでぇ~」


「どういうことです?」


 レアが怪訝そうに顔を歪める。たしかにレアの言う通り、俺もサラさんの言いたいことが理解できなかった。仕事を円滑に進めるための嫁入りってどういうことさ?


「要は婚姻をすることでぇ~、結びつきを強くするのがメインと言いますかぁ~」


「政略結婚のようなものだと?」


「はいぃ~。正直な話をしますとぉ~、私のところに仕事の依頼が多かった一番の理由は、私にプロポーズをしたいがゆえなんですよねぇ~。以前不用意にも「武器が進化し、意思持つ武器になったらその人と結婚しますぅ~」と言ってしまったことがあってぇ~、それから仕事の依頼がばんばん入ってくるようになってですねぇ~。私も最初は腕を鍛えるためにはちょうどいいかなぁと思っていたんですがぁ~、最近は面倒で面倒でぇ~」


 やれやれと肩をすくめるサラさん。サラさんが「ラース」でも指折りの人気の鍛冶師だったのはそういうことだったのか。


 たしかにサラさんは凄腕の鍛冶師ではあるけれど、それにしては依頼が多すぎる気もしていたけれど、そういう理由があったのか。


 そこに俺がガルムとマーナという意思が宿る剣を、サラさんが鍛え上げた剣三振りを見せた。これ幸いとサラさんが結婚を申し出たということか。でもちょっと待ってほしい。


「サラさん、仕事が好きなんじゃ?」


 そうサラさんは「ラース」から離れて、ここ「ラスト」でも仕事をするほどに鍛冶バカな人だ。その鍛冶バカな人が仕事を面倒と言い切るとか、サラさんらしくないなぁと思うんだけど。


「私が好きなのはぁ~、全身全霊をかけることができる仕事ですぅ~。私を手に入れるためだけの数撃てば当たるみたいな仕事ではありません。そんな仕事をしても私にはなんのメリットもありませんからぁ~」


「でも俺だって」


 そう俺が依頼する仕事だって、サラさんにはさほどメリットがあるような仕事ではなかったはず。鉄板なんてその最たるものだし──。


「いいえ~? 「旦那さま」からのご依頼はすべて楽しいものばかりでしたぁ~。鉄板なんて最初に依頼されたときは、「この人頭大丈夫かなぁ~。鉄板なんてその辺にあるんだから、勝手に持って行けよ」と思いましたけどぉ~。でもその依頼内容がハチャメチャでしたからねぇ~。あんな依頼は初めてでしたぁ~。それからですねぇ~。この人であればいいかなぁ~って思ったのは」


 ふふふ、とサラさんは楽しそうに笑っている。しっかし最初に依頼したときの思っていたことがすごく辛辣ですね。


 まぁ、普通に考えれば鍛冶師に鉄板を依頼するという暴挙に出たのは俺くらいだろうからね。そう思われても無理はないのか。って、ちょっと待った。


「もしかしてあのときから?」


「ええぇ~。実はお慕いしていましたよぉ~。でなければ「黒護狼」ほどの剣をサービスで打ちはしませんよぉ~。ポイントを稼ぐだめだけに打ち上げた剣ですからぁ~」


 あはとサラさんは実に黒いことを言ってくれる。サラさんって意外と腹黒系なんだな。


「でもそのおかげでこうして「旦那さま」のものになれたのですからぁ~。言うことありません」


 ニコニコとサラさんは幸せそうに笑っている。


 俺の嫁になれればいいというのは、どうやら本心のようだね。


 腹黒であることにはびっくりしたけどね。でもそれを含めてもサラさんらしいなと思ってしまったよ。


「……レア」


「はぁ、わかりました。プーレちゃんもそれでいい?」


「……ダメって言っても無駄なのはわかっていますから」


 レアもプーレもため息を吐いたけれど、最終的には頷いてくれた。


「というわけで今後ともよろしくお願いしますねぇ~」


 サラさんはレアとプーレに向かって深々とお辞儀をした。そうしてサラさんもレアとプーレに認められて、俺の嫁に正式になることになったんだ。

 続きは二十時になります。

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