Act6-60 ご挨拶
本日三話目です。
いつもの更新祭りならもう終わりですねぇ~←しみじみ
「はぁ~。本当に三振りとも意思が宿っているんですねぇ~」
サラさん自身が鍛え上げた三振りをじっくりと眺めながら、サラさんは感嘆としていた。
そんなサラさんに三振りに宿るガルムとマーナは困ったように笑っていた。
「サラ殿には新しい体を提供してもらい感謝している」
「ええ。あなたのおかげで私たちはこうして再び愛娘と接することができるようになりました」
ガルムとマーナは具現化して、丁寧にお辞儀をしていた。ガルムはともかくマーナがそんな礼儀正しいことができるとは思っていなかったのでちょっと驚いた。
なんてことを言うとマーナは物理的にも噛みついてきそうなので、あえてなにも言いませんけども。
「カレン、いま余計なことを考えただろう、おまえ!」
マーナが俺を指差して唸ってくる。人を指差しちゃいけないって習わなかったのかな? あ、でも魔物であれば習うわけもないか。
でもさ、そこはシリウスの母上としてシリウスの教育に悪いことはするべきじゃないとカレンちゃんは思うんですけどね。
言ったところでマーナは聞く耳持たずでしょうけど。どうして俺の周りってみんな聞く耳持たずな人ばっかりなんでしょうか? 本当に理解できません。
「余計なことは考えていないよ? ただマーナもそういう礼儀を知っているんだなぁと不思議に思っただけで」
「それを余計なことと言っているんだよ!」
マーナが唸る。どうやら俺の言ったことは完全に余計なことだった模様です。でもね? そんなことを言われたって俺だって困りますよ。
礼儀とは無関係だと思っていたマーナがとっても礼儀正しいんだもの。そんな姿を見たら、誰だって驚くと思うんですよね。
まぁ、礼儀正しいけれど、人を指差すという時点でマーナのマナーはお察しというところなんだろうけどね。
「すぐに噛みつくのはよくないと思うよ? シリウスに悪影響になるかもしれないだろう?」
「そ、そんなことはない! 私のシリウスはやっていいこと悪いことの区別くらい簡単にできる子だ!」
胸を張って言い切るマーナ。うん、たしかにその通りなんだけど、それって墓穴を掘っていると思うんだけどね。
つまりマーナ自身でいましていることはやっていいことではないとわかっているってことだもの。わかっていなければそんなに動揺はしないもんね。するってことはそういうことでしょう?
「こ、このぉ、ああいえばこういう」
ぎりぎりと奥歯を噛みしめるマーナ。どうにも俺とマーナは水と油のような関係みたいだね。
一方的にマーナが敵対視してくるだけで、俺個人としてはマーナを嫌っているわけじゃないんだけど。それを言ったところでマーナはやっぱり聞いてくれないんだろうねぇ。
「ふわぁ~、シリウスちゃんのご両親って美男美女なのですねぇ~」
俺がしみじみとマーナの厄介なところを考えていると蚊帳の外になっていたプーレがマーナとガルムを見て、感嘆としていました。
あ~、そう言えばガルムとマーナとは会わせていなかったっけ?
いままではガルムもマーナも具現化できる時間は限られていたから、頻繁に顔を出すことはなかったのだけど、ガルムが宿った「黒狼望」と「黒天狼」が強化されたおかげで、ガルムとマーナの具現化できる時間は大幅に増えることになった。ヴァンさん曰く──。
「数日ぶっ続けで闘わない限りは、一日中具現化していても問題ないようにしておいたぜ」
とのことだった。でもそれだけだとガルムだけが具現化できるように思えるけれど、そこはガルムが二振りに宿っていることを利用しているとのことだった。
詳しくはよくわからなかったけれど、一時的にマーナを「黒天狼」に宿らせるようにパスを通したらしい。
どういう風にパスを通したのかは具体的に教えてもらったのだけど、さっぱり理解できませんでした。
とにかく現時点では、「黒天狼」を通してマーナも一日中具現化できるようになったらしい。
でもいつまでもそのままだと面倒なので、今夜「黒護狼」をヴァンさんに預けて強化してもらうことになっていた。
シリウスは相当に渋っていたけれど、マーナを一日中不自由なく具現化させるためだと言って納得してもらったよ。
「母上に変なことをしたら噛み殺すからね?」
「あはは、了解了解。……これで血の繋がりがないとか、冗談だろう」
でも「黒護狼」を取り出すときにきっちりとヴァンさんに釘を刺していたのは、さすがだなと思いましたよ。その際ヴァンさんが顔をひきつらせていたけれど、まぁいいや。
とにかく、そうしてガルムとマーナは無事に具現化できるようになったのだけど、ガルムとマーナと初の顔合わせであるプーレはやや緊張気味のようだ。
「たしかそなたはプーレだったかな?」
「むぅ~、シリウスのままのひとりか」
ガルムは好意的に、マーナはなにか言いたげな表情だった。ふたりともそれぞれにらしい表情だと言えるね。そんなふたりに向かってプーレは丁寧にお辞儀をした。
「は、初めましてなのです。シリウスちゃんのママをさせてもらっている、プーレ・アクスレイアと申します」
プーレは深々と頭を下げる。そんなプーレにガルムとマーナはそれぞれに名乗ると、やはり丁寧に頭を下げていた。
いつも娘がお世話になっていますをお互いに言い合うというなんともシュールな光景だけど、ひとついいかな? どうしてマーナはプーレには噛みつかないんでしょうかね?
「なにを言っている? 直に話してみるまではわからなかったが、プーレ殿はシリウスのママにふさわしい人格者ではないか。正直どうして貴様のようなタラシの嫁をなさっているのか理解できぬ」
あっさりとマーナは胸に突き刺さるようなことを口にしてくれました。そのひと言がどれだけ俺にダメージを与えるのかわかって言っているのかな? わかっていないんだろうなぁ。
「と、とにかくなのです。よろしくお願いしますなのです」
プーレは慌ててまたお辞儀をした。そんなプーレにガルムとマーナは笑って頷いていた。
プーレのファミリーネームが明らかになりました。
続きは十二時になります。




