Act6-57 うちの嫁に手を出すな!(Byカレン
本日六話目です。
シリウスたちは相変わらず頑張って砂を掘っていた。
ただセレンさんのお弟子さんだけ引きつった顔をしているけれど、なにかあったのかな?
まぁ、いいや。俺は俺でちゃんと「穴」を掘りましょうかね。
「そーれ、ザクザクッとな」
とりあえず数メートルほど掘ろうか。シャベルじゃ掘れる面積が少なすぎるけれど、まぁ、いいかな。時間はたっぷりある。
「あ、あのカレンさん? その穴はなんでしょうか?」
おかしいなぁ? ここには俺たち以外はいないはずなのに声が聞こえるぞ?
幻聴かね? 疲れているのかなぁ。そんなに疲れることはしていなかったんだけど。
まぁ、ちょっと「ひと汗」掻きはしたけど、うん、すごくストレス解消になったから問題はない。
その結果俺の背後にはひとつの簀巻きが出来上がったのは言うまでもない。その簀巻きを埋めるための穴を絶賛掘り進めています。
「ザクザクっとな」
「す、すみません。無視しないでください! その穴なんっすかっ!?」
なんだか悲鳴じみた声が聞こえる。けどまぁいいかな。どうせすぐに聞こえなくなるだろうし。
「え、えっと、その、もしかしたらその穴に俺を?」
「黙れよ、豚野郎」
にこりと後ろにいる「豚野郎」に笑い掛けてやる。「豚野郎」は豚らしい鳴き声をあげてくれる。
うん、お似合いだね。でもね? そんな悲鳴程度で俺の怒りが納まるとは思うなよ?
「あの、「旦那さま」、そんなに怒らなくても」
あははは、とプーレが胸元を抑えながら笑っている。プーレは本当に優しいね。
こんな「豚野郎」にも情けをちゃんとかけてあげているんだから。本当にできた嫁だよ。
その嫁の胸を。俺以外だとシリウスだけが触っていい胸を、この「豚野郎」は揉みやがった。
生きて帰すわけがねえ。だからこうして「豚野郎」の墓穴をほってあげているんだ。感謝してほしいね。
「そうだ、そうだ! プーレちゃんだって言っているじゃないか! 「旦那さま」よりも気持ちよく揉まれ──」
「そんなことは言ってないのです!」
「豚野郎」はずいぶんと調子に乗ったことを言っていたけれど、余計なことを言ったおかげでプーレに踏みつけられてしまった。まぁ、無理もないね。いまのは俺だって踏みつけるところだもの。
「ふ、ふふふ、水色のストライプか。健康的にエロいですな」
「っ!?」
ただね。今日のプーレはロングとはいえ、スカートを穿いているわけなので、「豚野郎」を踏みつけたら中身が見えてしまう、ってああ遅かった。
「豚野郎」は顔を綻ばせている。対してプーレは顔を真っ赤にしてスカートを押さえつけていた。
しかしストライプ柄か。本当にああいう柄を身に着ける子っているんだなって怒りを通り越してしみじみと思ってしまったよ。
「そ、そういう割にはカレンさん、容赦なくストンピング、がはっ!」
「豚野郎」がなにか言っているけれど無視だ、無視。どうやらまだ制裁が足りていないみたいだし。うん、仕方がないよね? とりあえず背中を中心に踏みつけ続けましょうか。
「顔を踏みつけられないだけ、ありがたく思えよ、豚が」
吐き捨てるように「豚野郎」を見やる。「豚野郎」は顔を真っ青にしながらぶんぶんと頷いていた。
「さて墓穴を掘る続きを」
「やっぱり墓穴かよ!? ひどくね!? 一晩中鎚を振っていた俺に対して、一晩預かると言ったっていうのに、なかなか受け取りに来ねえから、届けに来てあげた俺に対してのその狼藉はひどくね!?」
「その功績すべてとプーレにセクハラをかましたこと。どっちが重いかわかっての言葉か?」
「……すいませんでした。だってプーレちゃんがあまりにも無防備だったし、なんかこう汗で服が微妙に透けてエロティックだったので、ついついと我慢ができなかったです。でも後悔はしていない」
きっぱりとダメなことをダメな風に言い切る「豚野郎」こと鍛冶王。本当にどうしてこの変態が鍛冶王なんて称号を持っているのやら。不思議で仕方がないよ。
「まぁ、それも今日までか」
「なにが!?」
おまえの人生がだよと言いたいところだけど、あえて笑い掛けるだけにしておいた。そんなことを言う暇があれば、早いところ墓穴をですね。
「……すまぬが、そのくらいで勘弁してやってくれんかの?」
デウスさんの声が聞こえた。見ればデウスさんが目の前で困ったように笑っている。
「おはようございます、デウスさん」
「ああ、おはよう。そしてじゃな。そのアホウをどうか許してやってはくれんかの? そのアホウがアホウであることはもうわかっておるじゃろう?」
「ええ、それはもう。でも嫁にセクハラをしやがったことは許せることじゃないですよ?」
「ああ、それはもう重々承知しておる。承知したうえで頼んでおる。どうかここは妾の顏を免じてじゃの」
「き、きゃぁぁぁぁっ!?」
布を引き裂いたような悲鳴が聞こえた。慌てて振り返ると鍛冶王が簀巻きから抜け出し、プーレの脚に顔を摺り寄せていた。
「き、気持ち悪いのですぅぅぅ!」
「そ、そういうことを言うなよ、プーレちゃぁ~ん。はぁはぁ、いい脚だねぇ。お、おじさん、興奮しちゃう」
「ひ、ひぃぃぃなのですぅぅぅっ!」
プーレが涙目になって叫んでいる。その叫び声に鍛冶王は呼吸を荒くしていた。
「……デウスさん」
「みなまで言うな」
頭を押さえながらデウスさんがどうにか呟いていた。でも、俺はあえて言うよ。
「あれ、ヤっていいですか?」
「……せめて半分で頼む」
庇いきれないと思ったんだろうね。デウスさんは妥協してくれた。
でもいいや。とりあえずは半分ヤっていいとは言われたのだし。
「ヤる」がどの漢字を当てはめるのかは言うまでもないよね? というわけでさっそくヤりましょう。
「うちの嫁に手をだしているんじゃねぇぇぇーっ!」
プーレにセクハラをかます変態に俺は迷いなく突撃した。
一日目はこれにて終了です。
二日目は今夜十二時からとなります。




