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Act6-19 プーレの想い~わがまま~

 本日十九話目です。

 盛大に殴り合いをする「旦那さま」とデウスさまのところの駄メイドさん。


 お話を聞く限り、どうにも「旦那さま」と同郷かつご友人だったみたいです。


 見た目は「旦那さま」と同じでやや幼い外見の方ですが、なんと「旦那さま」よりも五歳も歳上の方でした。


 そのうえ、ノゾミさんにぞっこんみたいです。


 ただ、それは「旦那さま」も同じです。なにせ「旦那さま」はノゾミさんが大好きなのですから。


 聞けばもともとはノゾミさんに会うために元の世界に戻ろうとされていたみたいです。


 元の世界に戻ろうとする理由になった人。それがノゾミさんなのです。


 それほどまでに「旦那さま」はノゾミさんがお好きなのです。


 ……わかっていたつもりでしたけど、そのわかっていたつもりだったことをこうして改めて突きつけられると辛いものがありますね。


「プーレちゃん、妬いている?」


 クスクスとレア様のお声が聞こえます。


 さすがはレア様です。私の考えていることなんて、お見通しみたいですね。


「……わかりきっていることなのに、私はおかしいですよね。私なんかが張り合っても仕方がないのに」


 そう、私なんかじゃノゾミさんには敵わないのです。わかっている。わかっているのに私は──。


「こぉら、ダメよ? プーレちゃん」


 レア様が少し怖い顔をして、私の顏を両手で挟まれました。


「れ、レア様?」


「ダメよ? そんな弱気なことばかり言ったら」


「で、でも」


「でもなにもありません」


 きっぱりとレア様は私の言うことを切り捨てられていく。この調子だとなにを言っても聞いてもらえそうにないのです。


 でもレアさまになにを言われたとしても、私が私自身の評価を変えることはできないのです。だって実際に私はどうしようもないくらいに──。


「なんじゃ、レヴィア。この娘は面白いくらいに自己評価が低いのじゃな?」


 デウス様が喉の奥を鳴らすようにして笑っている。そんなデウス様にレア様は「そうなのよねぇ」と困ったように笑われている。どうにもおふたりの間だけで通じることがあるみたいですけど、私にはそれがなんなのか、まるでわからないのです。


「だって私はノゾミさんにはどうあっても敵わないのです。レア様にも勝てません。そもそも私にはおふたりに勝てるようなところなんて、なにひとつも──」


「あるじゃないの」


「え?」


「そうじゃな。少なくとも妾は聞いておるぞ?」


「ええ、私もね。あれは悔しかったなぁ。私もまだ言われていないのに」


 レア様は唇を尖らせてちょっと悔しそうでした。そんなレア様を見てデウス様はおかしそうに笑っておられます。おふたりの中で通じ合うことがやっぱりあるみたいですけど、それがなんなのか、私にはまったくわからなかった。


「えっと、私なにか」


「少し前に言われたばかりじゃないの」


「え?」


「あやつが言うたではないか。「俺の女」とな」


 にやりとデウス様が口元を歪められました。そのひと言に「あ」と私は言っていました。そうです。そうだったのです。私はたしかに「旦那さま」に「俺の女」と言われたのです。たしかに嬉しかったのです。でもそんなことは──。


「レア様やノゾミさんだって言われて──」


「いいえ? 少なくとも言われたことはないかな。「俺の女にする」とは言われたけれど、それからは一度たりとも「レアは俺の女だ」と言ってもらったことはないよ」


 レア様はため息を吐かれつつ、羨ましそうに私を見つめていました。どうもレア様はまだちゃんと「旦那さま」に「俺の女」と言われたことはないようなのです。でもなんで──。


「パパはきっとプーレママを恋人みたいに想っているんじゃないかな?」


「こ、恋人!?」


 ふ、ふわわわわ!? し、シリウスちゃん、いきなりなにを言うのです!? 


「ああ、なるほど。だからですか」


「ふむ。となればわかるかのぅ」


 でも私とは違って、レア様もデウス様もシリウスちゃんの言葉に納得されています。いったいどういうことなのか、私にはさっぱりなのです。


「私やノゾミちゃんはたぶん嫁という括りにされているんですよ」


「え? でも私も」


「ええ、プーレちゃんもお嫁さんだとは思われているでしょうね。でも、その在り方はたぶん「旦那さま」にとっては嫁というよりも」


「恋人のそれということなのであろうな。それも付き合いたての恋人というところかの? 初々しいものじゃのう」


「初々しいって。あなたお付き合いなんてしたこともないじゃないの」


「黙れ、痴女めが! と、とにかくじゃ。あれにとってそなたは嫁というよりも、まだ恋人という感覚なのであろうよ。だからこそ「俺の女」と言うたのではないかな?」


「で、でもそれだってレア様やノゾミさんにも」


「いいえ、だって私もノゾミちゃんもすでに「旦那さまの女」になっているもの。自他ともに認めていることなのだから、わざわざ改まって言うこともない。すでにわかりきっていることなのだから、口にする意味はない。たぶん、「旦那さま」はそう思われているんじゃないかしら?」


「じ、じゃあ私は?」


「そなたとはまだ関係がはっきりとしておらんってところではないかな? そのノゾミとやらやレヴィアははっきりと自分がどういう存在であるのかを示している。だから言わずとも問題はない。しかしそなたは違うであろう? 話を聞く限りではそなたは自らの存在を主張はしておらぬのであろう?」


「それは」


 否定できないことでした。私は自分に自信がなかった。だって私以外の「旦那さま」のお嫁さんたちはみんなきれいな人ばかりなうえに、スタイルもすごくいい。そしてなによりも確固たる自分をお持ちなのです。私だけがなにもない。そんな現状でどうして自信なんて持てるでしょうか。持てるわけがないのです。


「プーレちゃんは自己評価が低すぎるのよね。もっと自信を持ちなさい。始めはどうであれ、あなたもまた私と同じく「旦那さま」に選ばれたのだから。選ばれてももう一緒にいられない子もいるのよ。その子が誇れるようにならないとダメじゃない」


「あ」


 そうです。そうなのです。「旦那さま」に選ばれても、「旦那さま」と一緒にいられなくなった人もいる。その人が、カルディアさんが同じ選ばれた者として誇れるようにならないといけないのです。少なくともいまの私では、カルディアさんは決して誇ってはくれないのです。


「でも、どうすれば?」


「そんなことは自分で考えなさい。なんでもかんでも答えてもらえるわけじゃないのよ? そもそも答えなんて勉強でもないんだから、あるわけがないじゃない」


「そうじゃな。答えなんてものは、それぞれが見つけるものよ。いますぐに答えを出さずともよいのじゃ。そなたはまだ若い。若すぎるほどだ。まだ見えていなくとも問題はない。ただそなたの答えはきっとあやつとともにおれば見つかるのではないかの?」


 そう言ってデウス様は「旦那さま」を見やりました。「旦那さま」は駄メイドさんと殴り合いを続けていました。一進一退の攻防とでも言えばいいのか、「旦那さま」も駄メイドさんもボロボロです。手加減をされているのか、それとも駄メイドさんも同じくらいに強いのか。私には判断がつきませんでした。


「トドメだ、駄メイドがぁぁぁ!」


「喰らいやがれです、ハーレム野郎っ!」


 お互いを罵り合いながら、「旦那さま」と駄メイドさんは腕を振り抜き、そしてお互いの拳がお互いの頬に突き刺さり、そのままぱたりと倒れてしまいました。


「ダブルノックダウンとはのぅ」


 デウス様がおかしそうに笑う中、私は慌てて「旦那さま」のそばへと駆け寄りました。ただ私が駆け寄るよりも早くレア様とシリウスちゃんが「旦那さま」を介抱されています。駄メイドさんはデウス様が介抱、うん、介抱してあるはず、です。なんだか踏みつけられているように見えますけど、きっと気のせいなのです。


「あらら、「旦那さま」ってばすっかり気絶してしまって。仕方がない人ね。プーレちゃん、治療魔法をお願いね?」


「え、でもレア様も」


「私もできるけれど、やっぱりここは専門家の力を借りるべきでしょう?」


「プーレママ、お願い」


 レア様とシリウスちゃんからのお願いをされてしまい、私はしどろもどろになりつつも、「旦那さま」に向けて治療魔法を使いました。「旦那さま」は痣やらすり傷だらけで、見た感じ大きな怪我はなかったのです。でもかえってこれくらいの傷の方が痛いとお師匠が言っていました。


 痛みが残らないように。かと言って魔法だけで治さないように気を付けながら治療魔法を使っていく。レア様たちにはいろいろと言われましたけれど、いまだにどうすればいいのかは、私にわからないのです。でもわからなくても「旦那さま」のおそばにいたい。それが嘘偽りのない私の気持ちでした。


「不束者ですけど、おそばにおいてください」


 気を失っている「旦那さま」に向かってそうお願いをする。「旦那さま」はなにも仰らない。仰らないけれど、その顔がわずかにほころんだように私には思えたのでした。

 プーレはプーレでメインヒロインになれそうな子なんですよね~。……ですよね?←汗

 続きは十九時になります。

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