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Act6-16 情事突入数秒前に乱入はマナー違反だと思うのです(Byカレン

 本日十六話目です。

 サブタイがややぶっ飛んでいますが、まぁ、そういう内容です←ぶっちゃけ

 プーレを抱き締める。


 抱き締めることしかできない自分がどこか滑稽だった。でもどんなに滑稽であろうとも、プーレへと抱く気持ちは決して滑稽ではない。


 正直なことを言うと、最初はほぼなし崩し的にプーレを嫁にした。というか嫁にせざるをえない状況に追い込まれてしまっていた。


 だからもう半ばやけくそでプーレを嫁にしたんだ。あくまでも最初の頃は。


 でもいまは違っていた。


 もし希望がこの世界に来なかったら。レアともいまの関係になっていなかったら。俺はたぶんプーレを正妻として迎えたと思う。アルトリアではなく、プーレを正妻にしたと思うよ。


 なんというか、うん。プーレはかわいい。もっと言うとプーレと一緒にいると心が穏やかになる。プーレはいつも笑っている。


 ただ笑いつつも、ドジを踏んで慌てていることも多いけれど。


 でもそういうところも含めてプーレはかわいくて愛おしい子だ。シリウスに向ける愛おしさとはまるで違う。娘へのものではなく、愛する人へと向ける意味への愛おしさ。


 俺ってば気が多いなぁと自分でも思うけれど、実際プーレはそうなってしまうくらいに魅力のある子だった。


 ただその魅力に本人はまるで気づいていない。それどころか自分が地味だとか、お菓子作り以外に特技がないとか、俺に愛される資格がないとか。そんなおバカなことを考えてしまう。


 そういうところも俺には堪らなく愛おしく思えてしまうのだけど。


 もっとも俺もそのことに気付いたのは、「プライド」の宿でプーレを抱いてからだ。あのときは自分を追い込むためというなんともバカげた理由で抱くことにしたのだけど、いま思えばそれは違っていたんだろうな。もちろん希望からの許しがあったというのもあるけれど、それ以上に俺がプーレに惹かれていたということも大きかったんだと思う。だから抱いた。そしてプーレを好きになったんだ。


 一夫多妻制とか、どこの王侯貴族だよと言いたい気分ではあるけれど、好きになってしまったものは仕方がない。


 そう俺はプーレが好きだ。愛している。


 ただその一方でプーレ以上に愛している人がふたりいる。それが希望とレアだ。あとは比べようもないけれど、カルディアもそうだね。


 プーレは希望とレアがいなければ正妻だった。けれど希望とレアがいる現状、プーレを正妻にすることはない。……自分で言っておいてなんではあるけれど、ほとほと最低だな、俺ってば。自分で自分が嫌になるくらいに俺は自分が最低だと思う。


 それでもプーレを愛していることはたしかだ。好きで好きでたまらない。


 だからこそプーレの慰労をしてあげたかった。いつでも頑張り屋なプーレの疲れを取ってあげたかった。だからこそ俺はプーレを「狼の王国」へと連れてきたんだ。


 ただそこでまさかプーレが目の前で犯されそうになるとは思ってもいなかったよ。


 どうにか未遂で終わったけれど、それでもいい気分はしない。たとえそれが「七王」陛下方の一角であるデウスさんだったとしても。あの人がしたことを俺は許せない。


 でも俺の気持ちなんてどうでもいい。大切なのは被害を浮けたプーレ本人の気持ちなのだから。プーレはなにも言わない。


 なにも言わずに俺に抱きしめられているままだ。正確にはさっき言っていたけれど、その口調はとても大人っぽいものだった。普段のプーレらしくない言葉遣い。でもそういうプーレも魅力的だった。


「プーレ」


「なに、「旦那さま」」


 プーレの青い瞳が俺を見据える。濡れている瞳がとても艶やかだった。誘われるようにしてそっとプーレの唇を奪う。


 プーレの体が硬直し、肌が淡く紅潮していく。淡く紅潮する肌をもっと間近で見ていたくなった。


 プーレから少しだけ体を離し、露わになっていた胸元へと手を伸ばした。ほんの少しだけ汗ばんだ肌に指をはわせた。プーレが少し体を跳ねさせる。


「「旦那さま」、ダメですよ」


 プーレが耳まで真っ赤にしている。そういうところも含めて愛おしい。プーレをお姫様抱っこしてベッドまで連れていく。


「ダメですってば。こんなところで」


「本当にダメ?」


 ベッドに寝かせながら、プーレの顏の脇に左手を置く。空いた右手で紅潮した頬を擦る。プーレの長い髪がふわりとベッドのシーツに広がっている。青い瞳は期待に満ちたものだ。それがどういうことなのかはわかっていた。わかったうえで俺は──。


「抱いたらダメ?」


 そう尋ねていた。プーレは紅い顔をしながら、小さく「ダメじゃないです」とだけ言った。それ以上の言葉はいらない。


 再びプーレの唇を奪うべく、顔を近づけ──。


「わぅ~、パパすごく情熱的なの」


 ……顔を近づけたところで愛娘の声が聞こえてきました。プーレと一緒に慌てて振り返ると、そこにはレアに抱っこされて顔を真っ赤にしているシリウスと、そんなシリウスを抱っこしながら不満げに頬を膨らますレアに。そして──。


「……ここは一応妾の部屋なのじゃがな?」


 なんとも言えない顔で後頭部を掻いているデウスさんがおりました。部屋の主の登場ですね。俺とプーレは慌ててベッドから降りると、同時に頭を下げました。


「ご、ごめんなさい!」


「申し訳ないのです!」


 ほぼ同時に深々と頭を下げ合う俺たち。そんな俺とプーレの姿にデウスさんからの深いため息が返事代りに聞こえてくる。


「本当にのう、どうしてそなたはこんなケダモノに心を奪われたのじゃ?」


 わけがわからないとデウスさんは言っているようだった。そんなデウスさんの言葉にレアは「あははは」と苦笑いしている。いやもう苦笑いすることしかできなくなっているようだった。まぁ、気持ちはわかります。誰だって情事突入数秒前を見れば、ねぇ?


「スゴイ人がいるんデスネ、デウス様」


 不意に片言の、どこかで聞き覚えのあるような声が聞こえてきた。その声の主はデウスさんになぜか肩で担がれたメイドさんだった。声は聞き憶えがあるのだけど、顔は見覚えがない。いや、どこかで? う~ん? 気のせいかな?


「おまえと同郷じゃがな、おまえよりもはるかに能力がある娘じゃよ。ただ趣味はあまりいただけぬがな」


「ソウみたいデスねぇ」


 デウスさんと謎のメイドさんがしみじみと頷いている。うん、頷くのはいいのだけどあえて言わせて?


「そんな目で見ないでください」


 もう穴に入りたい。そう心の底から思いながら、俺はその場で蹲るのだった。

 続きは十六時になります。

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