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Act5-61 プレゼントと書いてチートアイテムと読む

 恒例の土曜日更新です。

 まずは一話目です。

 目を醒ますとそこには健やかに眠るレアとシリウスがいた。


 シリウスはレアに抱きつきながら眠っていた。


「レアママ、大好き」


 レアが聞いたら幸せそうに笑っていそうだ。その当のレアはシリウスを抱きしめながら穏やかな顔で眠っていた。


「シリウスちゃん」


 寝言で、お互いを呼び合うか。仲がいいなと思うよ。


 でもなぁ、個人的にはレアだけでも俺を呼んでほしかったな。一応、旦那さまなわけですから、レアがシリウスをかわいがっていることは知っているけど、それでもねぇ?


「ふふふ、娘相手にヤキモチですか?」


「あ、起きていたんだ?」


 不意に声を掛けられたと思ったら、レアが俺を見つめていた。


 いつもとは違って、少し眠そうな顔をしているけど、目はちゃんと開かれている。青い瞳はいつも通りきれいだった。


「今日もレアの目はきれいだね」


「朝から「旦那さま」に口説かれるなんて、今日はいい日になりそうですね」


 ふふふ、とレアは口元を抑えて笑っていた。口元を抑えて笑うのは、レアにとってはいつも通りではあるのだけど、でもよく見ると頬がだいぶ紅かった。


 あー、撃墜しちゃった感じですかね、これは。


 でもそれを悟られるのが悔しいから口元をいつものように抑えて笑っているのかもしれないな。


 どちらにしろ、レアらしいことだよ。レアってば、意外と意地っ張りだしな。


 普段は大人のお姉さんなのに、こういうときには子供っぽいところを見せてくれるのだから、レアは本当にずるいなと思うよ。


「……私から言わせてもらえば、「旦那さま」の方がずるいんですけどね? 寝起きにいきなり口説き文句なんて反則ですよ?」


 レアは口元を隠したまま、お返しにと文句を言ってきた。俺とは違って純粋な文句でしかないけど、実にレアらしいと思うよ。


「いや、本当にきれいだし」


「……酔ってもいないのに、なんでそんなことがさらりと言えますかね?」


 レアはいくらか呆れていた。でも呆れられたところで、事実は事実なのだから否定できないんだけどな。……口にしたら今度は怒られそうだからあえて言わないけども。


 でも無意識に似たようなことを言ってしまっていたみたいで、レアには「そういうところですよ」とため息を吐かれてしまった。……悪いことなんてなにもしていないんだけどなぁ。


「ところで「旦那さま」、お手のリボンは?」


 言われて始めて、母さんがくれたリボンを、シリウスへのプレゼントと言っていたチートアイテムを握っていることに気づけた。


 これがあるということは、「すけひと」のつなぎもチートアイテム化したってことなのかな?


 レアに頼んで確認しておこうか。でもそれよりもまずは──。


「シリウス~」


「わぅ~?」


「プレゼントがあるから、起きろ~」


 母さんがくれたプレゼントを渡すためにもシリウスには起きてもらわなきゃいけない。体を揺するとシリウスは眠たそうな声を出すけど、まぶたを開こうとはしない。眠った状態でもリボンを結うことはできるのだけど、やっぱりこういうのは起きている状態で渡してこそだもんな。申し訳ないけれど、起きてもらわないとね。眠たそうなシリウスの体を揺さぶっていく。最初は意地でも起きないという体だったけれど、それでも揺さぶり続けているうちに観念したのか、シリウスのまぶたがうっすらと開いた。


「私まだ眠いのに」


 シリウスは不満が大いにあるようで、口調がいくらか刺々しい。俺も気持ちよく寝ているときに、無理やり起こされたらそうなるから、気持ちはよくわかる。でも、こればかりは起きてもらわないといけないから、心を鬼にして起きてもらった。


「プレゼントがあるんだ」


「プレゼント? 剣だけじゃないの?」


 不思議そうにシリウスは首を傾げている。どうやらガルムとマーナのことは夢ではなく、ちゃんとした現実として憶えてくれているみたいだ。これが夢だと思われていたらマーナになんて言われるのかわかったものじゃないから、安心だね。


「うん、それ以外にもプレゼントがあるんだ。というか送られてきたというか」


 ちらりと手にあるリボンを見やる。これをどう説明すればいいのやら。シリウスは母さんのことを知らないが、母さんはシリウスのことを知っているようだった。まぁ、常に俺の様子は観察しているみたいだから、いまプレゼントを渡さないと、「清風殿」ではネチネチと小言を言われそうだからなぁ。それを避けるためにもいま渡しておかないとね。下手に時間を空けると、マーナのように渡しそびれてしまい、結果忘れてしまうということになるかもしれない。憶えているうちに用事は済ませておくに限るよね。


「誰から?」


「う~ん。シリウスの知らないばぁばからかなぁ~?」


 かなりアバウトだけど、そうとしか言いようがなかった。これで納得してくれればいいんだけど──。

「……あー、もしかして、パパにとってのママのばぁばから?」


「へ? 知っているのか?」


「うん。「双竜殿」で会って、お話したから」


 眠たそうにあくびをしながら、シリウスは言い当ててくれました。まさかシリウスと母さんがすでに合っていたとは。てっきり母さんが一方的に知っているだけかと思っていたけれど、そうじゃなかったみたいだ。というか「双竜殿」のどこで母さんと会ったんだろう? あるとすれば「心の回廊」でくらいだけど、あのとき母さんはシリウスにも言霊を飛ばしたのかな?


「それでばぁばからのプレゼントって、そのリボン?」


 シリウスが視線を下げて、俺が握っているリボンを見やる。リボンはシリウスの尻尾の色に合わせているのか、装飾のない黒いリボンだった。


「あ、うん。特製のリボンだってさ。母さんが言うには、回数制限なしで状態異常を完全無効化するってさ」


「回数制限なしの完全無効化って」


 話を聞いていたレアが絶句した。母さんはこの世界であればとありえるとか言っていたけれど、レアの反応からして、どうやら回数制限なしの状態異常完全無効化も、この世界ではありえないレベルだったみたいだ。母さんって変なところでずれているよなぁ。


「あ、やっぱりこの世界でもありえないレベル?」


「というか、そんなの神器レベルじゃないとありえない効果ですよ? 回数制限でありであれば、ごく限られた鍛冶師であれば作り出せるでしょうけど、回数制限なしとなると、人の手では作り出せませんね。オークションに出せば、それこそ星金貨数百枚は下らないレベルですよ。それを進化のプレゼントにって」


 レアは信じられないものを見ている目でリボンを見つめている。しかし神器ね。初めて聞くけど、いわゆる伝説の武器とかそういう類のものかな? 仮にそうだとすれば、うん、母さんってば、なにをやらかしているんだってばよ。チートクラスだと思っていたけど、完全にチートアイテムみたいです。孫煩悩すぎませんかね?


「これで星金貨数百枚か」


 なんの変哲もないリボンひとつで、「天の階」の使用料の数十パーセント分はあるとか、信じられない。信じられないけど、その信じられないことをするのがうちのまいまざーです。本当に孫煩悩は恐ろしいね。


「……言わなきゃばれないよね?」


「目ためはただのリボンですから。黙ってさえいれば、誰も神器クラスのアイテムだとは思わないでしょうから」


 言わなきゃばれないね。うん、なら黙っておこうか。ついでに「すけひと」のつなぎも同じ効果があるというのも黙っておこうか。効果を試すなら自主的にやろう、自主的に。つなぎまでもが神器になったと知られたら、レアのお腹が痛み始めるかもしれないし。


「パパ、結って」


 でもどんなに高価なものでも、子供にとってはプレゼントにしかすぎない。シリウスの感性をわかったうえでのチョイスだからなのか、シリウスは嬉しそうに尻尾を向けてくれる。星金貨数百枚相当のリボンを結う。思わず、緊張してしまいそうだよ。ごくりと生唾を呑みながら、世界一高価なリボンを、慎重にシリウスの尻尾にと結った。


「わぅ、ありがとう、パパ」


 リボンを結われて、シリウスは嬉しそうに笑ってくれた。この笑顔は星金貨数百枚なんて目じゃないレベルだね。傍から見たら母さんに負けず劣らずの親バカだろうなぁと思いつつ、かわいい愛娘の笑顔に今日も朝から癒される俺なのだった。レアが深いため息を吐いたのは、まぁ、言うまでもありません。

 続きは二十時になります。

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