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Act5-34 鉱脈

 本日五話目です。

「具体的にどういうことが起きているんですか?」


「ふむ。カレンさんは「鬼の王国」がなにで有名かを知っているかい?」


 スパイダスさんの背中から降りつつ尋ねると、スパイダスさんは目のひとつを向けながら言った。「鬼の王国」で有名なことかぁ。


「えっと、軍が精強ってことですか?」


「ああ、まぁ、それも有名だな。なにせ鬼王軍は、一騎当千の猛者が集まっている。その精強さは「獅子王軍」とも引けを取らないって話だしな」


 スパイダスさんが奥さんの手料理を口に運ぶ。むしゃむしゃと美味しそうに咀嚼する姿を見ていると、本当に仲がいいんだなというのがよくわかる。


「ほかには?」


「えっと、ウープやバンマーですかね?」


「ああ、たしかにそれも有名だな。まぁ、俺たちの体だと肉は食べられないけれど、かなり美味いって話だな。「グリード」のガキどもがよく昼飯として干し肉を持ってきて食べているし」


 スパイダスさんは翅を顎に当てて考えている。どうやらウープとバンマーもまた違うみたいだ。となると、あと有名なものと言えば──。


「もしかしてアダマンタイトですか?」


「その通り。アダマンタイトだ。では、問題だ。草原だらけのこの国でアダマンタイトはどこで採集できると思う?」


「どこでって、山とかですか?」


 アダマンタイトが具体的にどういうものなのかは知らないけれど、武具の材料になるってことは鉱石の一種だろう。となると山での採掘がメインになるはずだ。だけどスパイダスさんは首を振った。


「違う。アダマンタイトはこの森にあるんだ」


「この森に?」


「ああ。もっともこのことを知っているのは「グリード」の民だけだ。基本的に森はその近くの集落の者が利用することになっている。そしていま「グリード」が移動している先にも森があるが、そこでもアダマンタイトは採集できる。つまり「グリード」での移動先だけにアダマンタイトの鉱脈があるってことさ。その鉱脈にいまちょっと異変があるみたいでな」


「異変ですか?」


「俺もよくはわからんのだが、ホワイトウルフの群れが言うには見知らぬ人間を鉱脈の周辺で見かけているそうだ。フェレンという動物がいるんだが、その毛皮が高く売れるという話を聞くから、その動物を密猟でもするのかと思っていたんだが、フェレンが近くにいても捕まえることもせずに、なにかを探っているそうだ。そいつらの目的はたぶん」


「アダマンタイトですか?」


「ああ。おそらくはアダマンタイトの鉱脈を探っているんだと思う。とはいえ、探ったところでアダマンタイトを加工できる鍛冶師なんてそうそういないんだがな」


 スパイダスさんは考え込んでいた。しかしスパイダスさんは森の中にいるのに、いろいろと知っているんだな。まぁ、「グリード」の子供たちに聞いたのかもしれないな。


「とにかく、鬼王が言っていた異変というのは、俺が知る限りはその連中のことだと思う」


 スパイダスさんは奥さんの手料理を口の中に放り込みながら言い切った。マモンさんが具体的なことを言わなかったのは、アダマンタイトの鉱脈のことを知られたくなかったからなのか。たしかにある意味「鬼の王国」にとっての生命線とも言えるのだから、秘密にするのも当然かもしれない。


 しかし見知らぬ人間ねぇ。考えられるとすれば、アイリスの仲間かもしれない。奴らは「獅子の王国」でも暗躍していたんだ。可能性は高いだろうね。


 でもアイリスの仲間であったとしても、アダマンタイトを手に入れてどうするつもりなんだろう? よくないことに使うんだろうけれど、その内容がいまいち思いつかなかった。


「スパイダスさん」


「うん?」


「可能性でもいいので、スパイダスさんの見解を」


「見解と言われてもなぁ。俺はしがないスパイダスだ。人間の考えなんざよくわからんよ。ただ、アダマンタイトを必要にしているってことは、なにかしらの武器でも作るつもりなんじゃないか? さすがに横流しするためだけにアダマンタイトを探すっていうのはちょっと考えづらいしな」


「……たしかにそうですね」


 アダマンタイトをただ横流しするというのは、迂遠にもほどがある。


 たしかに良質なアダマンタイトを大量に確保できれば資金源になるかもしれないけれど、同時に値崩れが起こる危険性がある。


 そもそもアダマンタイト自体を加工できる優秀な鍛冶師はそこまで多くない。となると大量にアダマンタイトを抱え込んでも、横流しで手に入る金はたかが知れている。


 考えられるのは横流しではなく、武具を作ろうとしているってことだ。


 だけど武具を作ったところで、なにをしようと言うんだろう? 


 アルトリアが言うには、アイリスの目的は、「七王」さんたちの殺害らしいし。


「七王」さんたちを倒すためにアダマンタイト製の武具がいるのかな? 


 でもアダマンタイトがあるからと言って、「七王」さんたちを倒せるとは、とてもではないけれど俺には思えない。


 本当に武具を作るためだけにアダマンタイトが必要なのかな? 


 もしかしたら別の意図があるんじゃないか? それがなんなのかはさっぱりわからないけどね。


「……アダマンタイトを大量に、か。いや、まさかな」


 ライコウ様がなにかを思いつかれたみたいだけど、首を振られていた。いったいなにを思いつかれたんだろうか? 聞きたいところだけど、ライコウ様は答えてくれそうにはなかった。ただ静かに思い悩んでいるみたいだった。


「ライコウ様、いったいなにを?」


 恐る恐るとライコウ様に尋ねようとした、そのとき。


「スパイダスのおっちゃん、遊びに来たよ!」


 スパイダスさんの家の中に数人の子供たちが、ゴブリンとオーガの子供たちが駆け込んできたんだ。

 続きは十五時になります。

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