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Act5-7 ペガサスって本当にいるんですね(Byカレン

 あかんくらいに遅くなりました←汗

 おかしい。なぜこんな時間に←超汗


「ふむ。そういう経緯だったか」


 ゴンさんの背中に乗りながら、俺たちは鬼王さん改め、マモンさんの案内のもと「鬼の王国」の首都である「グリード」を目指していた。


 ゴンさんとは「鬼竜の谷」で別れる予定だったのだけど、マモンさんが──。


「「グリード」はだいぶ遠いから、ゴンに連れて行ってもらったほうがいい」


 と言ったので、急遽「グリード」まで連れて行ってもらうことになったんだ。


「レア姉がカレンさんの嫁になったのはそういうことだったか」


 その道中でマモンさんに聞かれたのが、レアを嫁にするまでの経緯だった。てっきりレアが野盗どもをフルぼっこにした理由だと思っていたから、少し驚いたよ。でも、マモンさんにとっては当然の質問だったみたいだ。


「あのレア姉がだぞ? 人を痛めつけることに快楽を抱く人が嫁入りするなんて言われたら、誰だって迎えた側の正気を疑って──」


「マモン?」


「……しかし、そのレア姉がいまやちゃんとカレンさんの嫁になっている。カレンさんも幸せ者だな。レア姉のような美人の嫁ができたのだから」


 レアがにこやかに笑った。その笑顔を一身に受けて、マモンさんはそっと顔をそらしながら祝福してくれた。……マモンさんの頬を一筋の冷や汗が伝っていたけれど、なにも言うまい。けど、とりあえず話題をそらしますかね。このままだと、プライドさんの二の舞になりそうです。


「マモンさんはレアのことをレア姉って呼ぶんですね?」


「俺よりも歳上だし、なによりも昔から頭が上がらない相手だからな。……昔のレア姉は竜族でさえ恐れおののくほどに狂暴かつ凶悪──」


「あ?」


「──ではなく、竜族でさえ堪らずに求婚してしまうほどにおしとやかな美人だったな、昔から」


 話題をそらしたはずなのに、自分から地雷原に突入してくれた。それがマモンさんなりのスタイルなんですかね? しかしレアってば昔から凄かったのか。バハムート様たちがお転婆と言っていたけれど、どう考えてもお転婆のレベルを越えていますよね? 言ったら怒られそうな気がするから、あえてなにも言いませんけど。


「……バハムート様たちもよくお転婆で済ませたものだな。昔のレア姉は完全な狂戦士──」


「マーモーン?」


「と思わせるほどに強いが、それ以上に優しかったな!」


 マモンさんはちょっと涙目になっている。口は災いの元と言うけれど、まさにそんな感じだ。余計なことは言わなきゃいいのに。


「とにかく、カレンさん。レア姉をよろしく頼む」


 そう言ってマモンさんは、話を打ち切った。これ以上は余計なことを言ってしまうということなんだと思う。


 ガルーダ様はマモンさんを寡黙な人だと言われていたけれど、それほど寡黙という感じじゃなかった。思っていた以上に饒舌だった。


「マモンさんは意外と饒舌なんですね?」


「誰かに無口だとか言われたのか?」


「ガルーダ様に」


「あぁ、なるほど。だがあの方にとってみればという意味だ。あの方と比べられれば寡黙になるんだろうが、わりと喋る方だと自分では思っている」


「なるほど」


 たしかにガルーダ様に比べたら、ほとんどの人は寡黙になるね。あの人本当によく喋るからなぁ。


「むしろ、俺よりもクラウディの方が寡黙だな。なぁ?」


「……私はあまり喋るのが好きではないだけだ、主」


 マモンさんが笑いながら、マモンさんのペットに呼び掛ける。マモンさんのペットことクラウディさんはゴンさんと並走飛行している。


 体の大きさはゴンさんの方が大きいけれど、ゴンさんに負けないほどの速さで飛んでいる。でもそれ以上にゴンさんよりもはるかにその動きはきれいだった。なにせクラウディさんは、ペガサスなのだから。いやぁ、まさかペガサスをこの目で見るときが来るとは。感無量です。


「カレン殿だったか? 私をえらく輝いた目で見ているが、なにかあるのだろうか?」


 クラウディさんは不思議そうに首を傾げる。ペガサスって首を傾げるんだな。うん、さすがは異世界。マジ、ファンタジーです。


「……聞いておられるか?」


 クラウディさんが困った顔をしている。竜よりも表情の変化がわかりやすいね。実際の馬がどうなのかまではわからないけれど、ペガサスだとこんなにもわかりやすいのか。うんうん、さすがは異世界ですね。


「……主、どうすればいい?」


「俺にもわからんな。レア姉。カレンさんはいつもこんな感じなのか?」


「いえ? いつもはもうちょっと聡明なのだけど、どうにもクラウディの姿に感銘を受けているみたいね。「旦那さま」の世界だとペガサスっていないみたいだから」


「異世界には同族はいないのですか。少し寂しいですね」


「ふふふのふ~、あまり気にしすぎないことですよぉ~、クラウディ。カレンちゃんさんの世界にいないのは、ペガサスだけではなく、竜もまた同じなのですよ~」


「そうなのか?」


「ええ~。竜がいない世界なんて、かえって危ない気がしますけどねぇ~」


「たしかにな。竜がいてこそ、世界の平和は守られているわけだからな。その竜がいない世界とは。いったいどういう世界なのだろうな」


 クラウディさんとゴンさんがなにかを言っているけれど、そのことはどうでもいい。いま大事なのはペガサスの雄姿をこの目で見守ることなのだから! うっひょー、馬体に翼がある! かっけぇー!


「……まぁ、少なくともカレン殿が生まれ育った世界だから、そう危なくはないんだろうな」


「ですかねぇ~」


 なんだろう? クラウディさんとゴンさんからかわいそうな子を見る目で見られている気がするけれど、まぁ、いいか。少しでも多くペガサスの飛行シーンをこの目で焼きつけなければ。竜の飛行シーンはもう腐るほど見たから別にいいし。


「……なんかいまひどいことを言われたようなぁ~」


「気にしないでおくことだな、ゴン」


 クラウディさんとゴンさんがまたなにかを言っているが、やっぱりどうでもいいね。うんうん、ペガサスの飛行シーンはダイナミックでカッコいい! 


 そうして俺はクラウディさんの姿をじっと見つめながら首都「グリード」までのフライトを思う存分に楽しんだんだ。

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