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Act4-61 本当の想い

 更新祭りのラストです。

 閲覧ちゅーいですね。

 ひどく気だるかった。


 頭の中は不思議とぼんやりとしている。それでもいままで感じることもなかった快感があった。


 その快感に突き動かされるように、私は彼女を抱いた。


 最初はどうすればいいのかもわからなかった。


誰かを抱くなんて初めてだった。


 私は女だから、いずれは誰かに抱かれることになるんだろうなとは考えても、自分が誰かを抱くなんて考えてもいなかった。


 それも相手が同性の子だなんて、予想もしていなかった。


 それでも抱かなきゃいけなかった。だってそうしないと、私はシリウスを泣かせてしまうから。だから抱くしかなかった。


 どうすればいいのかはさっぱりだったけれど、それでもどうにかうまくはできたと思う。彼女も、カレンも言っていたもの。


「抱かれるのって思っていた以上に痛いんだな」


 涙目に彼女はなっていた。てっきりノゾミとレアさまのどっちかにって思っていただけに、カレンが言った言葉に驚かされてしまった。


「初めて、だったの?」


「悪いのかよ?」


「いや、だってノゾミやレア様のどっちかにって思っていたから」


「……抱きはしたけれど、抱かれてはいないよ。カルディアが一番わかっているだろう?」


 その言葉には頷くしかなかった。


 私の指先にはぬるりとしたものが触れている。その感触は知っているものだった。


 爺様の訓練の際に傷を負うと必ず流れたもの。誰かを殺したときには必ず浴びるもの。そして私自身に、いや生きている者の体に確実に流れている血。その血が私の指先に付着していた。


 それがどういう意味であるのかは考えるまでもない。カレン自身が認めたことだった。つまり私は奪ってしまったということだった。


 ほんの一瞬だけ、頭の中が真っ白になった。


「それ」がどういう意味であるのかはわかっていた。わかっているけれど、私が実際に「それ」を為したと思うと、なぜか胸が騒いだ。してはいけないことをしてしまった気分だった。


 穢してはいけないものを穢してしまった気分になった。


 その一方で例えようもない優越感があった。誰に対してのものなのかは考えるまでもない。私が抱いた優越感はノゾミに対してのもの。


 正妻たる彼女がこれから先決して得ることの叶わないもの。それを私が為した。……普通に考えれば、正妻である彼女が為されるのはわかるけれど、彼女が為すことはありえないことだけども。


 まぁ、相手が相手だからこういうことになってしまうのは、仕方がないことだとは思う。


 そう、仕方がない。でも同時にノゾミへの優越感は半端なものではなかった。


 まるで私が選ばれた気分だった。きっとレア様あたりは虎視眈々と狙っていたことだろうけれど、レア様よりも速く私が為せた。


 そういう意味ではレア様にも優越感を抱ける。……レア様に知られたら殺されえかねない気がしてならないけど、言わなければわからないはず。うん、たぶん。


「……うん。やっぱり痛いな」


 でもそんなことを考える間もなく、カレンは言った。血を流しているのだから痛くないわけがなかった。痛くて当然だった。


 それでもカレンは涙目になっても痛みで叫ぶことはない。


 ラスティが連れてきた新メンバーの中には、そういうことをするのが好きなゲスもいる。


 そんなゲスのターゲットになった子はたいてい泣き叫んでいる。私自身同じ女として、泣き叫ぶ姿を見るのもその悲鳴を聞くのも嫌だった。


 だから見かけるとたいていは首を飛ばすことにしていた。


 実のところ、カレンと初めて会ったときに殺した傭兵は、うちの新メンバーのひとりだった。


 いやあいつだけじゃない。あの場にいたクランメンバー全員がそうだった。


 私を不快にさせた。だからこそ殺した。


 なにせあいつは、あいつらはひとりの女性を全員で輪姦した。たまたまその場面を私が見かけた。


 私がそういうものを見るのが嫌いであることを常々言っているというのにも関わらずだ。


 止めようとしたけれど、そのときにはその女性は事切れていた。


 女性の顏は倍に膨れ上がっていた。体も傷だらけになっていた。それでもあいつらは悪びれることもなかった。


 その場で全員を殺そうと思っていたけれど、ラスティに止められた。


 あいつらはへらへらと笑いながら立ち去った。


 私はラスティに手伝ってもらいながら、その女性を埋めてあげた。


 名前も知らない人だし、話もしたことない人ではあったけれど、その人のかたき討ちを私はすることにした。


 それがカレンと出会ったあの日にしたことだった。


 でも私がカレンに対してしたことは、あいつらと変わらないこと。


 ただ違うのはカレンがあの女性とは違って泣き叫ばないってことだけだった。


「俺優しくできたかなぁ」


 カレンは痛みに耐えながらも、なんというかずいぶんと見当違いなことを言っていた。


 普通は恨み言のひとつやふたつは言いそうなものだというのに、カレンはそういうことは言わず、のんきにノゾミとしたときのことを話してくれた。


 どう考えてもおかしなことだった。というかずれているのにもほどがあった。


 でもカレンは自分がずれていることを理解していないみたいで、カレンらしいと思った。


「……怒らないの?」


「別に? 誰かにあげるわけでもなかったしな。むしろ貰ってくれるのであればかえってありがたいくらいだよ」


「意味がわからないよ」


「あははは、俺もわからないかな」


 涙目になりながら笑うカレン。おかしな子だった。


 でもそんなおかしな子が私は堪らなく愛おしかった。気付いた時には自分でも思っていないことを言っていた。


「交代しよう?」


「え?」


「次は私の番。かわりばんこでいいよね?」


 なにを言っているんだろうと思ったけれど、口が止まらなかった。止まらないまま、私はとんでもないことを言ってしまっていた。


 カレンも驚いた顔をしている。それでも私は彼女の両手両足を縛っていたロープを解き、自由にすると彼女の隣にごろんと寝転がった。


「えっと」


「しよう?」


「と言われてもな」


「ダメ、かな?」


 小首を傾げながらカレンを見やる。カレンは一度考える仕草をすると、大きくため息を吐いた。そして言った。


「……一度だけな」


 そう言ってカレンは唇を奪ってきた。私がしたときとは違ってとても優しかった。それだけ手慣れているなと思った。そうして私も「それ」を為された。


 カレンはよく泣き叫ばなかったなって思うくらいに痛かった。


 でもそんな私をカレンは優しく抱きしめてくれた。


「ごめんな。俺なんかで」


 申し訳なさそうに謝るカレンがおかしかった。それ以上に愛おしかった。


 本当にララ婆の掌の上で踊っているみたいだけど、それでも思ってしまった。


 ううん、ようやくわかった。


 私は演技をしていたわけじゃなかったんだって。油断させようとしていただけじゃなかったんだって。私もノゾミたちと同じで、カレンが好きなんだってことがわかった。


「どうしたの?」


 カレンが不思議そうにしている。その仕草か表情が堪らなく愛おしくて、気づいたらまた私が上になった。それから先はちょっと記憶があやふやだった。


 お互いにかわりばんこをしていた気がする。いくらかカレンの方が多かった気もするけれど。


「……カレンは本当に上手だよね」


 隣で眠るカレンの頬を突っつく。カレンは寝息を立てながら眠っている。


 すごく疲れているみたいだった。それだけ無茶をさせてしまったのかと思うと反省しそうだった。


「……でもカレンも私に無茶をさせたわけだよね?」


 カレンの方が多かったのだから、その分私の方がより負担があったわけだ。


 うん、そう思うと反省はするべきじゃないね。むしろ起きたら文句を言ってやらなきゃいけない。


「……早く起きてね」


 寝息を立てるカレンを見やりながら、そう呟いた、そのときだった。けたたましい鐘の音が鳴り響いたんだ。

 鐘の音の理由とは?

 更新祭りはこれにて終了です。

 明日の更新は十六時になります。

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