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Act4-56 あなたどこ出身ですか!?(By香恋

 本日五話目です。

 

「う~ん、これでいいかな? ララ婆」


「ええ、よろしいと思われますよ、お嬢さま」


 くるくるとその場で何度もターンするカルディアとそんなカルディアを微笑ましく見つめているララおばあさん。そのやり取りはとても微笑ましいものなのだけど、ひとついいかな?


「すいません。俺はなんで両手両足を縛られたまま、ベッドで寝転がされていますかね?」


 そう、俺はなぜかカルディアのベッドと思われる天蓋付きの高そうなベッドに寝転がされていた。


 普通ベッドで寝かされたとしても、両手両足は解きませんかね? なんで解かずに転がすのよ? 意味がわからないよ。


「そんなのお嬢さまに手を出されたら困るからですよ?」


 あんたバカ? とでも言うかのようにララおばあさんが呆れた顔をしている。どこのアスカさんですか、あなた?


 ってそういうことはいいんだよ。なんで両手両足を縛っていないと俺がカルディアに手を出すとか考えられてしまっているのかが問題なんですよ!


「いや、俺はカルディアに手を出すつもりは」


「……うちのお嬢さまに手を出さないとか、あなたどういう思考をしているんですか?」


 ララおばあさんのこめかみに青筋が。えっと、手を出したら困ると言われたから、手を出す気はないと言ったんだけど、それでなんで怒られなきゃいかんのだよ? 意味がわからないよ。


「うちのお嬢さまは思わず手を出したくなるほどの優良物件でしょうが! しかもいまの恰好を見てごらんなさい!? すけすけなんですよ、すけすけ!」


 ララおばあさんの目が血走っていた。


 すいません、マジ怖いのでやめてください。


 しかしそんなことを言ってもララおばあさんは止まってくれない。


 止まってくれないが、すけすけを連呼するのはやめましょう?


 たしかにカルディアってば、すけすけの寝巻を装備されていますよ?


 どこの痴女だよと思うくらいにすけすけですよ? 


 一応上下ともに青い下着を身に着けているけれど、健康的な感じがする下着ではあるけれど、すけすけの寝巻越しに見るとかえってエロティックです。


 そのうえカルディアは希望とそん色ないレベルのブツをお持ちですから、まぁ、目のやり場に困りますね。上下ともに目を逸らさにゃならんから、どこを見ていいのかがわかりませんです。


 だからと言って、希望以外に手を出すわけには──。


「レアさまやプーレは抱いたんでしょう?」


 ……黙秘。黙秘権を行使する! 間違ってはいない。間違ってはいないが、いまそれを口にするのはさすがに憚れます。だってさ、ララおばあさんのこめかみに青筋が数本ほど追加されているもん!


「お嬢さまがいながら、ほかの女を抱いたですか。いい度胸ですねぇ~?」


 ララおばあさんの目がヤバい。血走っているうえに、とんでもなくまなざしが鋭いです。明らかに人を殺せる目だよ、これは!


「え、だ、だって、俺は」


「嫁が六人もいるんですよねぇ? で?」


「で、とは?」


「何人抱いているんですか?」


「も、黙秘権を」


「あると思いますか?」


「……三人です」


 ララおばあさんのあると思いますかというひと言に俺は折れました。


 いや折れないとたぶん物理的に体を折れさせられてしまいそうで怖いんだもん!


 というかこの人確実に俺の体なんてたやすく折れますよね? 


 だっていまもボキボキと拳を鳴らしているもんよ! 


 明らかに怖いよ、怖すぎるよ、この人! 獣人って歳をとっても武闘派なんですか!?


「つまり半数は抱いた、と。ならばそこにお嬢さまが追加されても問題はないですよね?」


「えっと、さすがにこれ以上は」


「あ?」


「……すみませんでした」


 ダメだ。この人ダメだ! 言動が明らかにおかしい、っていうか治療師ってこんなにも武闘派な雰囲気をか持ち出しますかね!? 


 少なくとも希望は、ネットゲーでヒーラーを専門とした希望はこんなにも武闘派では──。


「呪文? 唱えるよりも殴った方が速いよ?」


 ……いかん。希望の名言を思い出してしまった。


 希望ってば、ヒーラーのくせになぜかSTRばっかり上げていたんだよなぁ。


 さすがに極振りではなかったけれど、STRとINTを基本的に上げて、DFEやSPDには目もくれなかったし。


 おかげでうちのパーティー最高の火力は、魔法使いの魔法ではなく希望が素で殴ることだったもんなぁ。


「レンさん、ヒナギクさんって、ヒーラーなのに物理で超火力とか意味がわからないんですけど、どうなっているんですか?」


 パーティーメンバーのひとりが希望の攻撃力にいつも顔を引きつらせていたよ。


 まぁ、そういうあいつもおかしかったけどね? 


 なんで武器がオタマなんだよとみんなに突っ込まれていたもんなぁ。


 タマモってHNだからってオタマにしなくてもいいだろうって思ったもの。


 希望も十分にネタキャラだったけど、タマモちゃんはそれ以上にネタキャラだったなぁ。


 うん、ひさしぶりにやりたくなってきたよ、エターナルカイザーオンラインを。


 でもまぁEKOをやるためには地球に帰らなきゃどうしようもない。とはいえ、それだけのために地球に帰るのもどうなんでしょうね?


「さぁ、どうなさいますか? 「旦那さま」さん」


 ……うん、現実逃避の時間はおしまいかな? 久しぶりにタマモちゃんたちとチャットしたいけれど、そのまえに現状をどうにかせんといかんね、これは。


「ララ婆。そもそもなんでカレン・ズッキーを「旦那さま」って呼んでいるの? 私は別にその女のことなんて」


「ダメですよ、お嬢さま。そんなテンプレなツンデレでは没個性になってしまいますよ?」


「つんでれ?」


 カルディアはララおばあさんの言葉に首を傾げている。


 うん、ツンデレなんて言葉はこの世界にはないだろうから無理もないよね。


 うん、そのないはずの言葉をどうして見事に使いこなしていますかね、ララおばあさんってば。


 本当にこのばあさん、この世界出身なんですかね? もしかしたら日本出身とかじゃないの? 


 しかもオタクだったとかいうオチじゃありませんかね? それくらいにこのおばあさんはおかしいことばかり言っていると思うんだけど?


「たとえば、「あなたなんか好きじゃないんだから」と言っておきながら、相手に嫌われたら「そんなに嫌わなくてもいいじゃない」とか言う人のことですよ」


「それがつんでれ?」


「ええ。お嬢さまの場合はツンデレというよりも、クーデレですかね?」


「くーでれって?」


「普段クールなのに、ふとしたときにデレデレになってしまう人のことですね。いわばお嬢さまのような人のことです」


「わ、私そんなんじゃないよ」


「なにをおっしゃいますか。このララはお嬢さまを小さい頃から見知っておりますから、どんなに言い繕られても無駄ですよ?」


 ニコニコとララおばあさんは笑っていた。笑っているのだけど、やっぱりこの人日本人じゃねえの?


  それも完全にオタクだよね? 異世界転生とかしたんじゃないのかな、この人? そう思うくらいに言っていることがおかしいよ。


「とにかく、お嬢さま。ここまで来たら尻込みしている場合ではございません。女は度胸ですよ?」


「それはそうかもしれないけど」


「大丈夫だ、問題ない、です」


 親指を立てて、とてもいい笑顔を浮かべてくれるララおばあさん。


 うん、どうしてだろうね。この人から同類の匂いしかしないのはさ。もう異世界転生したオタクとしか思えないよ。


「さて、あとはお若いふたりで」


 ララおばあさんはとてもいい笑顔を浮かべると、そそくさとカルディアの部屋を出て行ってしまう。


 残されたのはなんとも言えない空気にされてしまった俺とカルディアだけになってしまったんだ。


 もうここからどうしろと? そんな俺の疑問に答えてくれる人は誰もいない。なんとも言えない空気のなか、俺たちは黙ってお互いを見つめることしかできなかった。

 なんともいえない雰囲気になりました。

 続きは十五時になります。

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