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Act4-39 再びの母

 本日二話目です。

 エレーンがやらかしたおかげで、いろんなものがうやむやになってしまったよ。


 うやむやにはなったけれど、レアが疲れ切ってしまっている。


 いまや肩を貸してあげないといけないくらいに疲労してしまっていた。このまま休ませたいところだけど、そんな場合ではなくなってしまっていた。


 うやむやになったのはエレーンのおかげ。そしてレアが疲労したのはガルーダ様のせいだ。……たぶん「両方」ともあえてなのだろうけども。


 まぁ、そのことはいい。特に問題でもないことだし。


 問題なのはさ──。


「ははは、ずいぶんとかわいらしい娘ちゃんじゃないか、香恋ちゃん」


 褐色ロリことガルーダ様はずいぶんと機嫌がよさそうだ。


 場所は変わって、ガルーダ様がよくすごされれるという謁見の間、その玉座に腰掛けながらガルーダ様はシリウスを膝の上にちょこんと座らせていた。


 さっきまでの我様系な態度は完全に鳴りを潜めている。というか、豹変と言った方がいいのかな? あまりにもさっきまでと態度が違いすぎて、なんて言えばいいのかわからなかった。


 でも、問題なのは、そういうことじゃない。神獣様が豹変するなんて、バハムート様達で馴れたよ。だからそのことは問題じゃないんだ。問題なのはシリウスが不機嫌ってことなんだよ。


 どうにもレアを苛められたと思っているみたいで、ガルーダ様に後ろから抱っこされながら唸りっぱなしなんだよね。


「うぅ~」


 頬をかわいらしく膨らませながら唸り続けるシリウス。うん、拗ねている姿でさえもかわらしいのだから、本当にうちの娘は、対俺用の最終兵器ですね。


 しかしシリウスってば、いくらレアに対して容赦のことを言ってくれたとはいえ、相手は神獣さまだっていうのに、なんて強気な態度を。そう言うところがまたなんとも愛らしいね。


「おやおや? レアままを苛めたから、怒っているのかい? ははは、ずいぶんとまま想いのいい子じゃないか。香恋ちゃんが夢中になるのもわかるね。名前はなんだい、娘ちゃん?」


「や」


 上からのぞき込むように名前を聞かれたガルーダ様に、シリウスってばぷいっと顔を背けてしまう。


 うん、かわいいね。かわいいのだけど、それはまずいよ、シリウスちゃん!? そんなことをしたら無礼者とかガルーダ様が言いだしそうな──。


「「や」って名前なのかい? またずいぶんと変わった名前だね?」


 ……どうやら怒ってはいないみたいだ。というかシリウスの名前を「や」と勘違いされているみたい。


 いや、たしかにね? たしかにシリウスってば、「や」って答えたけれど、それは名前じゃなくて、「嫌だ」って意味ですよ。さすがに実際には言えないけれど、この際だ。このまま「や」って名前だと押し通して──。


「違うもん。わたしはしんじゅーさまには教えたくないだけだもん!」


 シリウスちゃぁぁぁーんっ!? 気持ちはわかるけれど、それは言っちゃダメでしょう!? そんなことを言ったら、今度こそ無礼者って──。


「ははは、面白い子だ。この私相手に堂々とそんなことが言えるとはね」


 あれ? かえってガルーダ様のツボに入ったみたいだ。怪我の功名ってところなのかな? ただ個人的にはもうひやひやものなので、少し自重してほしいところだけども。


「レアままを苛める人には当然だもん!」


「くっくっく、たしかに、たしかに。血のつながりはないと言えど、母親を侮辱されれば、怒るのも当然か。これは私の方が無礼であったね。……よい娘を持ったな、エンヴィー。此度の件、我とそなたが互いに無礼を働いたということで、手打ちにいたそう。よいかの?」


「……よろしいので?」


 俺に肩を貸されながら、レアはガルーダ様を見やる。正確にはガルーダ様の膝の上に座らせられているシリウスを見つめていた。


 うちの嫁たちは、誰もシリウスとは血のつながりはないけれど、みんなシリウスのことを実の娘のように大切にしてくれている。


 だからなんだろうね、いまレアは必死に娘のために立ち上がろうとしている。その姿はとても尊く美しかった。


 そんなレアの姿をシリウスは誇らしそうに見つめている。自分のために大好きな「まま」が頑張ってくれているんだ。誇らしくないわけがなかった。


「ふふふ、すっかり我が悪者よな。どう思う、エレーン」


 ガルーダ様は俺の隣で正座中のエレーンに声をかけていた。エレーンは正座をしながら、ガルーダ様の問いかけに答えた。


「あたり前だと思いますよ? 蛇王さまはご息女にとって「大好きなまま」のようですし。そんな「まま」をあれだけ侮辱されてしまえば、いかな「六神獣」のおひとりとはいえ、怒りの矛先が向いてしまうのは当然のことかと」


 エレーンがずいぶんとまともなことを言ってくれた。


 俺の中のエレーンのイメージは、ナチュラルな変態さんなんだが、いまのエレーンからは不思議と変態っていうイメージはない。相変らず仮面で顔を隠しているから、よくはわからないんだけどね。


「これくらいちょっとしたお茶目じゃないか。別に構わないと私は思うのだけどな?」


「ご息女さまはそう思われなかった。それだけのことでございます」


「やれやれ、君もなかなかに言うね。私はこれでも神獣の一柱なんだが?」


「よくご存じでございます。ガルーダ様がどういうお方であるのかは、嫌になるくらいには」


「まったく君も私に対する敬いが足りなさすぎないかな? これでも私はいろいろと苦労しているんだよ? 母神さまがこんな辺鄙なところに私の社殿を作られてしまったから、遊び相手が一切いなくてつまらない日々を強制的に過ごすことになってしまっているんだよ? これくらいのお茶目の相手くらいはしてもらって当然じゃないかな? なにせ私は神獣様なんだよ?」


「……だからこんな辺鄙なところに社殿を用意されてしまうのですよ、ガルーダ様」


 エレーンが深いため息を吐いた。


「炎翼殿」がこんなにも地獄じみたところにあるのは、どうやら母神さまによる救済処置のようだね。


 ガルーダ様に対してではなく、信者さん方にとっての救済措置のようだ。


 というか、そうでもしないとガルーダ様にいびり殺されると思ったのかもしれない。


 うん、レアがこれだけ疲労しているんだから、一般人の信者さんであれば、下手したら死ぬわな。


 それもガルーダ様なら冗談半分でやりそうで怖いもの。


 母神さまもそんなガルーダ様の性格を理解したうえで、そういう処置をほどこしたんだろうね。


 適材適所ってところかな? でもそれを言うのであれば、バハムートさまとファフニール様はどうなんだろうな。……うん、あまり深くは考えない方がよさそうだね。


「そんなことよりも主さまは無事試練を越えられたのですから、褒章を差し上げてくださいませ」


「あのね、エレーン。ここまでくる程度で試練なんて」


「母神さまがそうお決めになられたと思われますが? それにあれだけの仕打ちをしておいて、手打ちにする程度で済まそうとされるのは、いささか怠慢が過ぎるかと。母神さまからお叱りを受けるかもしれませんよ?」


「あー、それはやだなぁ。あの人冗談通じないんだもん」


「でしたらきちんとお役目を果たしてくださいまし」


「はいはい。もう仕方がないなぁ」


 ガルーダ様は投げやり気味に言うと、俺に向かって手招きをしてきた。俺ですかと指を指すと頷かれてしまった。どうやら俺に用事があるみたいだね。だいたい予想はできるけれど。


「香恋ちゃん、よく試練を達成できました。はい、花マル、花マル~」


「ガルーダ様?」


「……わかったよぉ~。冗談が通じないのは君も同じだね、エレーン」


 やれやれとため息を吐きつつ、ガルーダ様は俺に手を向けた。


「じゃあ、ちゃちゃっと終わらしちゃうよ」


 そう言ってガルーダ様は俺に掌を向けて詠唱を始めた。それはバハムートさまの時と同じ詠唱だった。


「我が名はガルーダ。火の神獣なり。この者スズキカレンは我が試練を乗り越えし者。その健闘を我は称える。大いなる母よ。母に与えられし我が力。その一端をこの者にいま与えよう。我は火の神獣。その祝福の証をいまここに」


 ガルーダ様が詠唱を終えると、バハムートさまのときのように強い光が謁見の間を包み込んでいった。そしてそこで俺は──。


「久しぶりね、香恋」


 あのときと同じく、母さんと再会を果たしたんだ。

 ひさしぶりのアミティーユお母さんの登場です。

 でも穏やかな親子の会話にはならないでしょうねぇ←汗

 次回はできれば、十六時更新です。

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