Act4-38 すべてを持って行かれました(Byカレン
年末年始の更新祭りの影響ですかね、ストックがががが←汗
まぁ、どうにかぼちぼちやりますかね。
さて、今日は恒例の二話更新の日です。
まずは一話目です。
サブタイがすべてを物語る、です。
俺を灰にする。
ガルーダ様の言葉にレアとプライドさんが驚いた。ふたりとも俺に矛先が向いたことに驚いているみたいだ。
レアの躾として俺を灰にする。たしかに俺とレアの関係を知っているのであれば効果的ではある。効果的ではあるけれど、どうして俺とレアのことがわかったんだろうか。
「ふん、わからぬと思うてか? そこな香恋と小娘。そなたら恋仲であろう? いや、恋仲なのはそなたとだけではないな。なんとも業深きものよな。ほぼ全員と恋仲であるか。しかも、ふむ、そのうち二名の純潔を奪っておる。女子であるくせに、なんとも業深いのう。体だけを求めるのであればひとりにしておけばよいものを。そう、たとえばそこな蛇王だけにしておけばよいものを。知っておるか? そこな蛇王は幼き日に野獣どもの獣欲に穢されきった使い古しであることをな。邪な獣に純潔を奪われ、来る日も来る日も獣液に塗れた汚れ者よ。体だけを求めるそなたにはふさわしい女体ではないかな?」
レアの過去をガルーダ様は口にする。
レアの過去を知っているのは俺くらいだと思っていたけれど、プライドさんは驚いてはいない。
ただ悲痛そうな顔をしている。反応からして知っていたんだろうね。レアが話したのか、それともレアから聞きだしたのかはわからないけれど、その表情はとても辛そうなものだ。
でも一番辛いのはレアだ。思い出したくない過去を。誰にも知られたくない過去をいきなり語られているんだ。
レアが悪いわけじゃないのに。レアはただ俺を庇おうとしただけなのに。なんでこんな目に遭わされなきゃいけないんだろうか?
「私は、穢れていたわけでは」
レアは体を震わせていた。怖いんじゃない。ただ思い出したくない過去を言われて、体が拒絶反応を示しているんだ。
それでもレアはまっすぐにガルーダ様を見つめている。
そのまなざしはとても強い。レアらしい強い瞳だ。
けれどかすかに、そう、かすかにレアは体を震わせている。当時の恐怖が体を震わせているんだ。
「ほう、なにが違うと? そなたの幼少期は獣液に塗れていたことはたしかであろうよ。獣液に塗れ、獣どもに一日中犯され続ける。だがいつからかそなたはその獣液に塗れることに慣れていった。いや獣液に塗れることに快楽を憶えていったそなたが穢れていない? ふははは、たわけたことを抜かすなよ、小娘」
「ち、違う! 私はそんなことは」
レアが頭を振る。何度も何度も頭を振り続ける。普段のレアらしからぬ姿だった。まるでガルーダ様の言葉を真実だと言っているかのように。
「違わぬさ。貴様は獣どもに犯されることに快楽を憶えていた。そうさ、獣どもだけが卑しく腰を振っていたのではない。そなたもまた卑しく獣どもに犯されるために、みずから腰を振っていたのだよ」
「そんなことない! 私はそんなことは!」
レアが髪を振り乱しながら叫んでいる。体をはっきりと震わせていく。震わせながら膝をついた。泣き叫びながら、レアは耳を塞いでいる。それでもガルーダ様はレアを追い詰めていく。
「はっきりと言うてやろう。貴様はそこらの獣に抱かれ、淫らに喘ぐのがお似合いの淫売だ。そこらの獣が好きそうな体つきであるしのぅ。どうせいまでも隠れて男に獣に抱かれておるのだろう?」
「違います! 私は「旦那さま」に操を」
「黙れ、淫売が! 我に口答えするでない!」
ガルーダ様が一喝した。レアは体を押さえながら震えている。恐怖もあるんだと思う。
でもそれ以上にレアは泣いていた。嗚咽を漏らして泣いている。
拳がいつのまにかできていた。拳をいつのまにか握っていた。痛いくらいに拳を握りしめる。
自分でなにをしようとしているのかは理解している。するべきじゃないってこともまたわかっていた。それでも。それでも──。
「どうだ、香恋? この淫売はそなたにふさわしいのではないか? 業深き者と淫売。似合いの」
「黙れよ」
ガルーダ様の言葉を遮る。いや遮らなきゃいけない。これ以上この人に、いやこいつにレアを傷付けさせるものか。
「黙れ? 貴様、誰に物を」
「あんただよ。あんたに言っているんだよ。誰が淫売だ? あ? 誰の女を淫売って言っているんだ!?」
目の前の褐色ロリを睨み付けた。褐色ロリは目を細めながら俺を見つめている。肌を打つ気迫はあまりにも強い。強すぎるくらいに強い。
それでも俺は膝を突くわけにはいかない。
「か、カレンちゃん。ダメです。下がって」
「以前に言わなかった?」
「え?」
「ちゃん付けは禁止だよ? 「旦那さま」でしょう?」
レアを見ながら笑った。レアは涙目になっている。どうにか体を動かし、レアの目元を拭う。それでもまだレアの目は濡れていた。涙で濡れ光るレアの瞳はとてもきれいだった。
「いまはそんなことを言っている場合では」
「言っている場合だよ。だってあいつはあることないことでレアを傷付けた。レアはきれいなのに、誰もが見惚れてしまうくらいに、君はきれいなのに、あいつはそんな君を穢れたと言った。淫売だって言った。なによりも、なによりも腹が立つのはレアを泣かせたことだ。レアから笑顔を奪った。俺の好きな顔を奪い取った。それがなによりも許せない」
「……「旦那さま」」
「たとえあいつがどんな存在であろうとも、この世界の本当の最強の一角であろうとも、俺はあいつを許せない」
「許せない? 貴様が我を許さんだと? 面白いことを言うではないか。そんな貴様にもうひとつ教えてやろう。貴様の言うレアはな、いまは人間の姿をしているが、その本当の姿は」
「知っているよ」
「なに?」
「レアの本当の姿のことは知っているよ」
「……それがただの化け物だと知ってなお、きれいだと、好きだとよく言えるものよな。それともそういう趣味かな? 化け物でなければ抱く気になれないという性癖でも──」
「違う」
「なにが違う?趣味のことか?それとも」
「レアは化け物じゃない! 化け物は涙を流さない。涙を流すレアは人間だよ」
「……涙を流さない、か」
褐色ロリは、目を細めながら言った。怒りによるものではない。なぜか怒気が薄れていく。なんで急に?
「……それは魔族ぞ? 人間ではない。魔性の者だ。そなたからしてみれば、いまの姿であっても化け物であろう? なにせ数千年もそやつは、いや、当代の「七王」どもは生きておる。その時点で」
「もう一度言う。化け物は涙を流さない」
「……涙を流す化け物もおるかもしれぬぞ?」
「たとえいたとしても、レアのような涙を流さないと思う」
「小娘のような?」
「レアの涙はきれいだ。誰かを騙したり、陥れたりするためのものじゃない。誰かを想い、誰かのために流すためのものだ。決して卑しいものじゃない」
「……ただ一晩ともにしただけのそやつにそこまで言えるのか。それほどの価値がそやつにあると?」
「価値なんて知らないよ。俺が知っているのは、俺が尊いと思っているのは、国を、民を背負いながらも笑っていられるレアだ。とても重たいもののはずなのに、その重さを感じさせないように、なんでもないように笑って背負っていられるレアだ! そんなレアが俺は大好きだ!」
告白のようなことを言ってしまった。
だけど、構うもんか。このわからず屋な褐色ロリを説き伏せるためであらば、なんだって言ってやる!
恥ずかしいけど、我慢する! 俺はやればできる子だからできるはずだもん!
「……くくく、我に大層な口を利いたかと思えば、次はやればできる子か、面白い娘子よな」
あら、いやだ。思っていることがバレていますよ!? あ、だから気付かれて──。
「そういうことだ。くくく、そなたの内面は面白いのぅ。ただの色狂いのアホかと思えば、思慮深いところもなくはない。やや詰めが甘いがのう」
「そこは思慮深いって言い切ってくれません!?」
あと詰めが甘いのは余計です! 本当のことだけどさ!
「くははは! 本当に面白い奴よな! ……母親によく似ておるわ」
「もしかして母さんは、ここに?」
「ここにはおらぬよ。ただ言伝では預かっておる。そうよな? エレーン」
褐色ロリが俺の足元を見やる。ってエレーン? なんでエレーンが。
「……お遊びがすぎますよ、ガルーダ様」
「え? ちょっとエレーン!?」
エレーンが足元から、というか影の中から出てきた。どこから出てきてんだよ!?
「どうかなさいましたか、主さま?」
「いろいろとツッコミたいところだけど、いつからそこに?」
「かれこれ二ヶ月ほどですかね?」
「するてーと?」
「主さまが蛇王さまにお風呂場で襲われた日からですね。あの日からひそかに影から見守っておりました」
「……えっと、ということは?」
「主さまは、お手が早いとしみじみと感じておりました。まさか短期間で三人も抱かれるとは」
しみじみとエレーンが頷いてくださいました。どうやらばっちりと見られてしまっていたようです。
「エレーン!」
思わず叫んでしまったよ。でも、当のエレーンは不思議そうに首を傾げるだけだった。
久しぶりに登場なエレーンさん。すべてを持って行きました←笑
続きは二十時になります。




