表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
376/2045

Act4‐24 またなの!?(byカレン

 五日目開始です。

 更新祭りもついに五日目ですね。

 早いものだ←しみじみ

 まずは一話目です。

 サブタイがあれですが、まぁ、読んでいただければわかるかと←笑

「──そこまで」


 所長さんの言葉で俺は動きを止めた。


 カルディアの首筋寸前で黒狼望の刃が止まっている。対してカルディアの双剣はカルディアの後方数メートル先の地面に刺さっていた。


「……負けかぁ」


 カルディアが背中から地面に倒れた。どう考えてもここからの逆転はなかった。だからこそカルディアは倒れ込んだ。


 それでも相手がきちんと「負けた」と言うまでは気を抜くなと弘明兄ちゃんには教えられていた。


「最後の最後まで、気を抜いてはいけない。勝って兜の緒を締めよと言うだろう? あれは勝っても最後までは気を抜くなということだ。一番危険なのは、勝負の最中じゃない。勝ったと思った瞬間が一番危険なんだ。相手が倒れる瞬間まで、気を抜くな。ゆえの残心だよ、香恋」


 弘明兄ちゃんは稽古が終わっても気を抜くことはなかった。


 むしろ俺が気を抜いた瞬間に打ちかかってくる。


 すでにへとへとになっているというのにも関わらず、なんの躊躇もなく打ち付けてくるんだから、弘明兄ちゃんの鬼っぷりがよくわかる。


 とはいえ、そのおかげでいまも俺は気を抜くことはしない。


 カルディアは地面に倒れた。負けたとも言っている。


 しかし相手はプロの傭兵だ。生きるか死ぬかの戦場を生き抜いてきたんだ。


 倒れたと思わせておいて、不意を衝いてくることは十分にありえた。


「……はぁ、嫌になるなぁ。気を抜いたら刀を奪い取ってあげようと思っていたのに。その隙さえもないなんてなぁ」


 やれやれと大の字になってため息を吐くカルディア。


 どうやら気を抜かなかったのは正解だったみたいだね。


 まさか気を抜いたら刀を奪い取ろうとしていたとはね。


 なんとなくありえそうかなぁとは思ったけどね。


 しかし本当に狙っていたとは。油断も隙もないね。


 というか、マジで危なかったな。弘明兄ちゃんさまさまだね。


「カレンって強いんだね」


「まぁ、それなりには、え?」


 あれ、おかしいな? いまカルディアってば俺のことをカレンって呼ばなかったかな? 気のせいかな?


「えっと?」


「どうかしたの? カレン?」


 聞き間違いではなかったみたいだね。たしかにカレンと呼んでくれている。しかしなんで急に?


「すみませんね。カレン殿。カルディアは認めない限りは他人行儀なままなんですよ。ですが、一度でも認めれば、垣根を飛び越えてくれるんですが、その認めるか認めないのかハードルがまちまちでしてね」


 やれやれとため息を吐く所長さん。


 カルディアの習性みたいなものなのかな? 習性というと、とたんに獣っぽくなるけれど、俺には獣のそれとしか思えないからなぁ。さすがは狼さんだ。


「所長? カレンはなんで不思議がっているの?」


 体を起こしながらカルディアは不思議そうに首を傾げている。


 首を傾げながら、尻尾がぶんぶんと振られていた。見た目はクール系で無表情のように見えるけれど、尻尾の振り方からして喜んでいるみたいだ。


 もしくは楽しんでいるのかな? なにを以て楽しんでいるのかはさっぱりわからないけれど、どうやら俺はカルディアに気に入られてしまったみたいなのかな?


「ふふふ、いきなりあなたの態度が変わったから驚いているのですよ」


「くぅん? どうして?」


 カルディアが犬のような鳴き声をあげる。


 そういうところはシリウスとよく似ている。「


 シリウスは「わぅ」だけど、カルディアは「くぅん」がデフォルトなのかな? 



 うむ、大きい娘ができたような気分だね。シリウスにとってもいいお姉ちゃんになって──。


「そう? でも「旦那さま」に対してなんだから当然じゃないの?」


「……はい?」


 えっと? いまなんて言われたのかな? カレンちゃん、マジにわからないんですけど? 


 えっと聞き間違いかな? うん、聞き間違いだよね?


 いまなぜか「旦那さま」って聞こえたような? 


 あははは、気のせいか。うん、気のせいに決まっているよね、あははは。


「どうしたの? カレン? ううん、「旦那さま」の方がいい?」


 こてんと首を傾げるカルディア。


 ……聞き間違いであってほしいと思ったんですけど、どうやら聞き間違いではなかったみたいだね。あははは、参ったぜ。


「……えっと、カルディア、さん?」


「カティでいいよ? 「旦那さま」」


 そう言ってなぜか縋り寄ってくるカルディアさん。


 あ、あれ? おかしいな。なんで縋り寄られているんですか、俺ってば? 


 そもそも「旦那さま」とはどういうことなのかな? カレンちゃん、マジにわからない。


「……あー、そうでしたね。狼系の獣人はそうでした」


 所長さんが苦笑いしながら、頭を掻いている。


 お行儀が悪いですよと言いたいけれど、いまはそんなことを言っている場合じゃないよね。


 なぜこうなったのかを説明願いたい!


「獣人、特に狼系の獣人にとって、結婚相手は自分よりも強い相手というのが一般的なのですよ。狼系の獣人、特に女性はたいてい見目が美しく、他種族からもよく求婚されるのですが、そのときに女性側から出される条件が」


「……模擬戦で自分に勝てたらとか?」


 恐る恐ると言うと所長さんは静かに頷いていた。


 マジか! そういう条件ってありなん!? 


 そもそもそんな条件があるとか聞いたことなかった、というか、知らなかったよ! 


 っていうかこの模擬戦ってそういう意味合いだったの!?


 聞いていないよ!? 無効試合、そう無効試合だと俺は主張しますよ!?


「……残念ですが、狼の獣人には無効と言っても聞いてはくれません。一度これと決めたらまっすぐに突き進むのが狼なので」


「それ狼じゃなくて、猪じゃないの!?」


 リアル猪突猛進じゃないですか! いやさカルディアは猪じゃなく狼ですけど。狼ですけどね!? それでもこれはさすがにないよ。ないと主張したいです、はい!


「「旦那さま」はカティじゃダメなの? くぅん」


 カルディアは目をうるうるとさせながら俺を見上げていた。


 やめて。その雨に濡れた子犬みたいな目はやめて!? 


 胸にぐさっと来るよ。罪悪感が半端ないから勘弁してください!


「だ、ダメってわけじゃなくてね? ほ、ほら、俺とカルディアって知り合ったばかりじゃん? だからまだそんな嫁にするとかは気が早いと言いますか」


「くぅん? あ、そうか。わかった」


「うん?」


 なにがわかったのかな? とっても嫌な予感がするよ、カレンちゃんは。


 なにせカルディアってばとても嬉しそうに笑っている。


 笑っているのだけど、唇をぺろりと舐めているもの。


 それにさっきまで潤んでいた目が、いまや完全に「狩る者の目」になっています。身の危険を感じるよ。


「「旦那さま」、「旦那さま」」


「なに?」


 とりあえず「旦那さま」呼びはやめさせないと。そう思っていたのだけど、なぜか視界が反転しました。


 どさりと地面に押し倒されてしまう。誰に? 決まっているでしょう? カルディアにだよ!


「な、なにを──」


「くぅん? 子作り」


 ……予想通りのロケットスタートでしたよ。


 予想通り過ぎてかえってビックリだよ! 


 まさかのド直球で来るとは誰が予想できるかっての!


「な、なぜに?」


「「旦那さま」はお互いのことをよく知らないと言っていた。だけど子作りをすればお互いのことをよく知ることができると爺さまが言っていたの。だから子作りしよう?」


 そう言ってカルディアは服を脱ぎはじめました。服を着ていたからわからなかったけど、意外とある。


 それこそ希望とそん色ないレベルには、ってそうじゃない! そうじゃないんだよ、俺!?


「ま、待とう、カルディア! ここは練兵場でしょう? ほ、ほら人がいっぱい」


「くぅん? いないよ?」


「え?」


「所長がみんなを連れて行っちゃったもん」


 ほらとカルディアが周りを見回す。


 たしかに誰もいない。俺とカルディアしかいない。


 誰の仕業と思ったけれど、まさかの所長さんかよ! あのメガネ! なにしてくれるんだよ!?


「だから問題ないよ?」


 艶っぽい笑顔を浮かべるカルディア。よく見ると紅い瞳にハートマークが。いかん、喰われる!?


「カルディア」


「くぅん? あれ、所長?」


 喰われると思ったとき、不意に所長さんの声が。


 捨てる神あれば神ありだね。どっちもこの人の仕業ですけどね? 


 それでもこうして助けに来てくれたのだから──。


「まだ知り合ったばかりなのですから、きちんと避妊するように。子供を作るのは早すぎます」


「はーい」


 しょっちょぉぉぉーっ! そうじゃないだろうぉぉぉーっ!? 


 いやさ、言いたいことはわかる。わかるけれど、そうじゃないでしょう!? 注意するのはそこじゃないよ!?


「カレン殿もカルディアを妊娠させないようにしてくださいね? まだその子十五歳ですから」


「同い年なの!?」


「ああ、そうだったのですか。ではあと三年後くらいまでは我慢してくださいね? その頃にはカルディアはもっときれいに。……子どもの頃から知っていますが、嫁入りが決まるとなんとも言えない気分になるものですね」


 所長さんは眼鏡を外して目元を押さえていた。


 うん、それはたしかに感動的かもしれませんね? 


 だけどさ? 俺の意思は? そこに俺の意思はまったく介入されていないですよね?


「くぅん、所長。カティ、幸せになるよ」


「ええ、幸せにおなり、カティ」


 所長さんとカルディアはある意味ふたりの世界です。


 うん、感動的なシーンだけど、俺の意思は?


 俺の意思はまるっと無視なんですけど、そこんところどうなんですか?


「では、あとは若い二人に任せます。数時間は入らせないようにしますので、ごゆっくり」


「ありがとう、所長」


「では、また」


「待ってぇぇぇーっ!?」


 ニコニコと笑いながら練兵場を後にする所長さんの背中に向かって俺が叫んだのは言うまでもない。


 その後どうにかカルディアの下から抜け出し、数時間きっちりと逃げ続けることになったのも、やっぱり言うまでもないよね?

 またしても嫁を増やしてしまった香恋さん。明日はどっちだ?

 ってわけで、次回は四時になります←唐突

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ