Act4‐15 爆弾投下されました(Byカレン
本日四話目です。
プーレが、ですね。
「円空の間」にある家族風呂。
本来であれば、わいわいと賑やかなはずなのだけど──。
「うぅ~」
「ご、ごめんね?」
なんとも言えない空気が漂っているよ。
いわゆるお約束というか、ラッキースケベが起こりました。
具体的に言えば、プーレの生まれたままの姿を見てしまったのですよ。
でも、俺は見たくて見たわけではなくて、本当にハプニングが起きてしまって見る形になりました。
アルトリアより少し小振りではあるけれと、きれいな形のブツでありました。
そして、うん。よく聞く話だけど、髪の毛と同じ色になるものなんだね。あえてなにがとは言わない。あえてなにがとは。とりあえず眼福でしたとだけ言っておきます。
「……「旦那さま」、目がいやらしくないですか?」
プーレがじとりと俺を見つめている。どうやら顔に出ていたみたいだ。
「いやいや、そんなことないよ?」
顔をそらしながら言うも、プーレのジト目は止まらない。むしろ睨んできていますね。相当に恥ずかしかったみたいだ。
でも俺ってば、プーレの旦那さんなのだから、あれくらい見てもさ。
「……女が裸を見せるのは、式を挙げた人だけですとお母さんは言っていました」
「あー、なるほど」
つまりは結婚した相手だけに裸を見せるものだとプーレのお母さんは言っていたわけね。
たしかにその考えであれば、俺はまだ条件を満たしていないわけだから、プーレが唸り声を上げるのは無理もないかもしれないね。俺がプーレの立場であれば、同じ反応をしただろうから気持ちはわかる。
「なのに、「旦那さま」はプーレの裸を。うぅ~、絶対に式を挙げてもらうのです!」
プーレが顔を真っ赤にしている。真っ赤にしているのだけど、プーレらしい言葉遣いに表情だった。微笑ましくてつい笑ってしまった。
「なにを笑っているのですか、「旦那さま」! プーレは怒っているのですよ!?」
頬を膨らませて怒りをアピールするプーレ。仕草のひとつひとつがかわいらしい。
普段はなんだか背伸びをしているようだったから、ちょっと心配していたんだよね。
素のプーレは一人称が「プーレ」で語尾に「なのです」とつけるはずなのに、俺のところに押しかけてきてからは一切そういうことは口にしていなかった。
まるで自分を偽っているというか、無理をしているようにしか見えなかった。
だからかな。怒って素を出してくれたプーレを見ていると、とても嬉しい。プーレには怒られるだけかもしれないけれど、素のプーレを見ているのは好きだよ。
むしろ背伸びをしているときよりも、素のプーレの方がかわいいと思うんだけどね。
「ごめんごめん。素のプーレの方がかわいいのになって思っただけだよ」
「ふぇ? あ!」
プーレの顏がまた赤く染まっていく。どうやら自分で気づいていなかったみたいだね。ますますかわいいね。
「プーレはかわいいんだから、別に背伸びをする必要は」
「だ、ダメなのです! プーレは新参者だし、ノゾミさんたちみたいにきれいでもスタイルがいいわけでもないのです! なのに子供っぽい口調をしていたら、シリウスちゃんに「まま」って言ってもらえないのです! だからプーレは」
「バカだなぁ」
「ふぇ?」
「希望たちは希望たちでプーレはプーレじゃないか。みんなひとりひとりで違うのはあたり前だよ。だからこそみんなそれぞれに魅力があるんだよ。それはプーレだって同じさ。プーレにはプーレの魅力がある。だから無理をして背伸びをすることなんてないよ」
目の前のいるプーレの頭を撫でてあげる。プーレは顔を赤くして俯いている。
……うん、めちゃくちゃかわいいね。こんなにもかわいいのに、どうして自信がなくなりますかねぇ。カレンちゃん、そのあたりがマジでわからん。
「そ、それでもプーレは子供っぽくて、このままじゃ「旦那さま」に捨てられちゃうかなって」
涙目になりつつ、プーレは言ってくれた。あー、どうにも俺の言いたいことを理解してもらえていないみたいだね。
というかさ、誰が誰を捨てるって? いつ俺がそんなことを言ったかな? 勝手に俺の言葉としてねつ造してほしくないなぁ。そっちの方が俺は嫌いだよ。
とはいえ、プーレはプーレなりに考えての言動だったわけで、俺も結果的に求婚してしまったというのに、プーレに対してなにも言っていなかったのはまずかったのかもしれない。
正直嫁はもういいと思っているけれど、プーレも嫁の一員でいいんじゃないって気がしてくる。
実際俺はプーレのことを嫌ってはいないからね。
そもそも嫌っている相手を嫁にするどころか、雇うことだって俺はしたくないよ。
嫌うどころか好ましい相手だからこそ雇いたいって思ったんだ。
一生懸命に生きようとするプーレの姿に俺は感銘を受けた。
だからこそプーレを雇おうって決めたんだ。……それがまさか嫁になれと宣言していることになるとは考えてもいなかったけどね。
いや、いま思えばね。たしかに屋台の女性を雇うってことはさ、その屋台ではもう仕事はできないってことだもの。
つまりは籍を変えるってことになる。そして籍を変えるっていうことは、この世界では結婚ってことになる。だからこそ屋台の女を雇う=求婚ってことになったんだろうと思う。
そのつもりはなかったとはいえ、やっちまったことには変わりない。だから責任もってプーレを嫁にするしかなかった。
プーレ自身もお母さんの病気を治してくれたという恩義もあって、俺の嫁になろうと決めてくれたんだろう。そこにプーレ自身の気持ちは含まれていない。
実際少し前までは、プーレ自身の気持ちはどういうものなのかが俺にはわかりかねていた。
いまもそれは同じだ。ただ、うん。徐々になのだけど、雰囲気が変わっているような気がする。
なんというか、惚れられたっぽいです。
というか惚れられていないのであれば、捨てられるとか言わないもんよ。
だってさ、逆に言えば捨てられないように、俺にふさわしいように大人っぽく振る舞おうとしているって言っているようなものだもの。
どこでどう惚れられてしまったのかはさっぱりだけど、プーレみたいにかわいい子に好かれるのは悪い気分じゃなかった。
だからこそ、そろそろ俺も気持ちを打ち明けるべきなのかな? いつまでも中途半端な立ち位置にプーレを立たせているわけにはいかないもの。
「あのね、プーレ」
「はい」
「俺はプーレのことを捨てようなんて考えてはいないよ」
「で、でも、プーレは」
「さっきも言ったでしょう? プーレにはプーレなりの魅力があるのだからもっと」
「具体的にはなんですか?」
「スイーツ作りが得意なところ、アルトリアを諌められるところ、元気いっぱいでひまわりみたいなところ、あとはかわいいところかな?」
笑いながら言うと、プーレは顔を俯かせてしまう。耳まで真っ赤になっているのは、湯あたりではなく、単純に俺の言葉が嬉しいからなのだと思う。
ちょっと適当なところもあったと思うのだけど、それでもここまで反応してくれるとか。
本気で口説いたらどうなるのかなってちょっと気になってしまったよ。って違う! そうじゃない、落ち着け、俺!
「とにかく、プーレにはプーレなりの魅力があって。そんなプーレを俺は好きだよ」
「じゃあ、抱いていただけますか?」
「……うん?」
「好きであれば、プーレを抱いていただけますか?」
プーレが顔を真っ赤にして俺に抱き着いてきた。涙目&上目遣いのコンボがさく裂している。ちょっと理性的にヤバいっす。
ただ、うん、おかしいな。なんか話が変な方向にぶっ飛んでいるんですけど?
えっとこれはいったいどういうことなのかな?
カレンちゃん、まじで意味がわからん。えっと、これどうしたらいいの? っていうか、なぜにこうなった!? 誰か教えて!
「プーレを大人にしてください、「旦那さま」」
頬を火照らせるプーレに俺はなにも言い返すことができなくなってしまったんだ。ヘタレって言うな!
爆弾発言が来ました。さてさて、香恋の反応は?
続きは十六時になります。




