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Act4-14 大人の階段のぼーる、なのです(Byプーレ なぜにその歌を知っている!?(Byカレン

 本日三話目です。

 プーレ視点となります。

 いろいろと耳年増なプーレです。

 ぱしゃりと音を立てて「旦那さま」が湯を浴びている。


「旦那さま」とは言うものの、私の「旦那さま」は女性の方です。それも私よりも少し年上だけど、外見は私とそう変わらない。


 でも雰囲気が私と同い年とは思えないくらいに落ち着いていた。


 だから初対面で年上の方だろうなと思っていたら、まさか巷で有名となっていた「才媛」カレン・ズッキーさんだとは。世間は狭いんだなとあのときほどしみじみと感じたことはありません。


 ですが、噂話だとカレン・ズッキーは、ナイトメアウルフ二頭が率いる大規模な群れをひとりで殲滅した戦闘力の持ち主であり、その見た目は熊みたいな大女って話だった。でもその一方で見た目はとてもかわいらしい女の子だという話もありました。


 どちらかが本当なのかはわからなかったけれど、実際にお会いして前者の熊みたいな大女っていうのは、「旦那さま」が大規模な群れをせん滅したことで勝手に広まったイメージでしかないということがわかりました。


 実際「旦那さま」のお姿はとてもきれいで、まるでお人形さんのようです。


 ただ少々口が悪いと言いますか、男勝りなお方です。


 黙っていればかわいらしい女性なのに、ちょっともったいないです。


 そのことを言うと「旦那さま」はすごく嫌がられるので、かわいらしいは禁句のようですね。


 あと「旦那さま」はご自分の胸がないことをお気にされているようなので、そちらも禁句みたいです。


 その割にはノゾミさんやレアさまの胸がお好きみたいですが。あと私とそこまで違いはないけれど、アルトリアさんの胸も好きみたいですね。


 女性にとってみれば、胸なんてものはそこまで気にするものじゃないんですよね。気にするのは小さすぎる方か大きすぎる方のどちらかであり、その中間にあたる人はさほど気にしないのです。


 だというのに「旦那さま」はそのあまり気にしない胸をとても気にされています。


「旦那さま」が「すぎる方」だからでしょうけどね。ただし上ではなく、下の意味でと私が思っていることは、当然のように秘密なのです。


 そう言えばノゾミさんが「旦那さま」はとびっきりの胸好きだと仰っていましたけど、「旦那さま」ご本人は全力で否定されていました。


 ですが、今日アルトリアさんを背負われていたときのお顔やノゾミさんやレアさまの胸に触れているときのお顔を見るかぎりは否定することはできないと私は思うのです。


「旦那さま」ご本人に言うと、泣いちゃうからとノゾミさんが言われたので口にするつもりはありませんけど。


 そんな「旦那さま」と私はいま裸のお付き合いをさせていただいています。「旦那さま」はお湯を体にかけておられていますが、私は「旦那さま」のお姿を見ているだけで精一杯になっています。


 だって「旦那さま」がそれだけおきれいなんです。無理もないとプーレは思うのです。ってしまった。言ってしまったのです!


「旦那さま」に求婚されてから、私は私自身を「私」と言うようになりました。加えて「~なのです」と言うのもやめることにしたのです。


 だってあまりにも子供っぽい、とお母さんに口がすっぱくなるほどに言われてしまったのですから。


「いい、プーレ。カレンさんの前では、あなたは「私」と自分を呼び、「~なのです」という語尾もやめなさいね?」


 それは「旦那さま」に求婚された後に、「旦那さま」を家にお連れした後のことなのです。


「旦那さま」はとても丁寧にお母さんに挨拶をされると、あまり長居をするのも悪いからと言われて、帰ってしまわれました。その後にお母さんに言われたことなのです。


「なんでですか? お母さん。「旦那さま」はそのあたりのことを気にしないとプーレは思うのです」


「こら、言っているそばから言うんじゃありません! いい? カレンさんのお話ではあの人には数人のお嫁さんがいるうえに、血は繋がっていないけれどかわいらしい娘さんがいるそうじゃない。あれだけの方のお嫁さんたちよ、きっと全員とんでもない美人さんばかりに決まっているわ。なにせあの蛇王さまもそのうちのひとりという話じゃないの。子供っぽい真似は控えるべきなのよ。加えて、娘さんは少し前まであなた同様に名前で自分のことを呼んでいたけど、最近は「わたし」と言うようになったって、ちょっと寂しそうに言っていたわね?」


「はい、そうですね。まだ小さい子だというのに、ちょっと大人びているなぁとプーレは」


「プーレ?」


「あ、はい。ごめんなさいなのです」


「なのです?」


「……ごめんなさい。大人びた子だなと私は思いました」


「プーレ」と「なのです」と言うたびにお母さんがとてもにこやかに笑ってくれたのです。


 でもこめかみに青筋が浮いていたのは言うまでもないのです。


 お父さんがお母さんは笑いながらこめかみに青筋を浮かばせて怒るから、って言っていましたけれど、プーレの前ではいままでそんなことは一度もなかったのです。


 でもお母さんはなぜか嫁入りが決まってからは、とても厳しくなりました。


 いままでのお母さんとは別人のようにプーレには思えたのです。でもその理由も少しずつわかってきてはいますけどね。


「よろしい。いいですか、プーレ」


「なぜ敬語なの、じゃなく、敬語なんですか?」


「細かいことはよろしい。とにかくお聞きなさい、プーレ」


「はい」


「カレンさんは小柄な方ではあるけれど、とてもきれいな女性ね。そして芯もしっかりとしていて、礼儀正しく、穏やか。それでいて気遣いを忘れないと、十五歳とは思えないくらいに大人びた人だわ。そんな彼女に求婚された以上、あなたは子供のままではいられないの」


「それはわかっていますけど」


「わかっていません」


「は、はい」


 わかっていると言ったら、お母さんに一喝されました。しかも笑いながらでした。めちゃくちゃ怖かったのです。でも怯える私をまるっとスルーしてお母さんは続けました。


「本人もあれだけ大人びた人なのだから、娘さんも相当に大人びているわ。そしてそんなあの人に求婚され、嫁のひとりになるということは、あなたもその娘さんのお母さんになるということなのよ。だというのに、娘さんが少し前にやめたという自分を名前呼び、語尾になのですを続けていたら、はたしてその子にお母さんと呼ばれるにふさわしいと思われるかしら?」


「そ、それは」


 ぐうの音も出ませんでした。ただでさえ、私は「旦那さま」のお嫁さんのなかでも立場は低いはずです。


「旦那さま」は序列を作るようなことはしない方でしたが、お母さんのお話を受けているときには、まだよくわかっていなかったのです。


 ……正直いまもよくわかってはいないし、なんでプーレなんかに求婚していただいたのかもわからないのですし、プーレ自身、「旦那さま」をお慕いしているかもわからないのですけど。それは置いておくとして──。


 お母さんが言ったことは反論のできないことでした。


 プーレがシリウスちゃんの立場であれば、子供っぽいお母さんはどうかなと思うのです。


 そういうお母さんがいてもいいとは思うのですが、プーレのように子供っぽいのはいかがなものかと思ったのです。


 ……実際シリウスちゃんは、年相応な子でしたけど、時おり大人びたところを見せてくれる子でした。


 シリウスちゃんに実際に会うまでは半信半疑でしたけど、会ってからはこれじゃダメだと思うようになったのです。


「プーレまま、いい匂いがするから好き!」


 そう、プーレを好きと言ってくれたシリウスちゃんのあの笑顔を見たときから、プーレは、いままでのプーレを捨てたのです。


 いまのプーレは「まま」なのです! 「まま」として娘に子供っぽいと思われることだけはするべきではないのです!


 そのうえ、「旦那さま」のお嫁さん方、シリウスちゃんの「まま」たちは、想像以上の美人さんばかりだったのです! 


 没個性に陥るかもしれないですが、いまのままでは立場が危ういのです! となれば子供っぽいと思われないように、「大人の女性」感を出すほかありませんでした。


 ぶっちゃけかなり背伸びをしていますが、これもすべては──。


「プーレ?」


「は、はい!」


「取って喰うわけじゃないんだから、緊張しなくてもいいよ?」


「旦那さま」が掛け湯をされながら、穏やかに笑われていました。


 さ、さすがはノゾミさんとレアさまとそういう関係なだけあって、すごく大人っぽいのです。しかし取って喰うですか。それってつまり──。


「ぷぷぷ、プーレは大人の階段を一気に駆け上がるのですか!?」


 ふ、ふわわわ!? ぷぷぷ、プーレ、シリウスちゃんの妹ちゃんを宿してもらうのです!? どどど、どうすればいいのですか!? ひっひっふー、ひっひっふーなのです!


「……だからそういうことはしないってば」


「旦那さま」が疲れた顔をされてしまいました。プーレ、やっちまったっぽいですよ、お母さん!?


「とりあえず積もる話もあるし、プーレも掛け湯したらおいで」


 掛け湯を終えた「旦那さま」は立ち上がられると、お風呂の方へと向かわれました。とてもすらりとした体つきで、とてもきれいなのです。


「は、はいなのです!」


 思わず敬礼をしてしまいました。「旦那さま」はポカーンとされてからおかしそうに笑われました。笑う「旦那さま」のお顔を見たら、なぜか胸がどくんとなりました。顔がすごく熱いのです。よくわからないけれど、病気ではなさそうです。


「旦那さま」は不思議そうに首をかしげられていますけど、その仕草でさえ、「旦那さま」がするのを見ているだけで胸がどくん、どくんと高鳴っていくのです。プーレ、本当にどうしちゃったんでしょう?


「プーレ?」


「な、なんでもないのです!」


 プーレは慌てて掛け湯をして、立ち上がりました。でも、慌てていたからか、タオルの結びが甘かったみたいで、立ち上がった勢いで、はらりとタオルが解けてしまいました。そうなれば当然──。


「あ」


「あ」


 見られてしまいました。


 その後プーレは体を隠しながら、慌てて「旦那さま」よりも先にお風呂に入って体を隠したのは言うまでもないのです。

 ラッキースケベ発動でした←笑

 続きは十二時になります。

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