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Act4-7 再会

 本日二話目です。

「獅子の王国」には一時間ほどでたどり着いた。


「獅子の王国」は「竜の王国」から見て東側にある国だった。ジョン爺さんが言うには、温泉が名物ということだから、山岳国家とかなのかなと思っていた。


「はい、着きましたよぉ~」


 ゴンさんが降り立ったそこは、俺が予想していたのとはまるで別物の光景だった。


「……あの、ゴンさん?」


「はい?」


「ここ、どこ?」


「「獅子の王国」との国境ですよぉ?」


 首を傾げてゴンさんは言う。うん、それはわかっている。ゴンさんがよほどの方向音痴でもない限りは、間違えて違う国へと降り立つことはないだろうからね。


 たださ、この光景はさすがに予想外ですわ。


「なんでマグマがそこらかしこにあるんですか!?」


 そう、「獅子の王国」との国境には一本の大きな橋が架かっていた。


 それ自体は問題ではない。問題なのは、橋の下に流れているもの。


 どろどろに溶けた岩の川。つまりはマグマの川が流れている。


 そしてその川はまっすぐに「獅子の王国」の内部にへと向かって行っていた。


「なんでもなにも、「獅子の王国」はもともとそういう国ですからねぇ~。その分、温泉も豊富なんですよぉ~?」


 なんでもないように語ってくれるゴンさん。


 うん、わかるよ? 温泉ってマグマ等の地熱によって温められた地下水だってことはさ。


 つまりは温泉があるってことは、その下にはマグマがあるっていうこともね。


 たださ、まさかマグマが川のように流れているとか、さすがに予想外すぎる光景なんですけど!? 


 ここは焦熱地獄か! 下手したら「魔大陸」一の不毛な土地じゃないか、ここってば!


「いいえ~、「獅子の王国」よりも不毛なのは、「狼の王国」ですねぇ。なにせあそこはぁ~」


「獅子の王国」よりも不毛という「狼の王国」についてを語ろうとしたゴンさん。でも不意に頭上に影が差したことで口を閉ざした。


「ふふふのふぅ~、迎えが来たみたいですねぇ~」


 ゴンさんが顔をあげると空を飛ぶ猫科の生物がいた。それもとても見たことがある光景ですね。


「ゴンさん、ちぃーす」


「やぁやぁ、キーやん。久しぶりじゃないですかぁ~」


 ゴンさんが短い腕でひらひらと手を振った。


 その相手は獅子王プライドのペットであるキメラロードのキーやんだった。


 相変らずの軽いのノリのようである。というか、チャラい系だよね、キーやんって。


 しかしキーやんが迎えに来たということは、だ。


「久しぶりだなぁ、嬢ちゃん」


 がははは、とキーやんの背中の上であぐらをかきながら笑う赤い髪の大男。


 相変らず服の上からでもはっきりとわかる筋肉質な体をしている。


 ただボディービルダー的なものではなく、戦うためだけに鍛えられた物であるのがはっきりとわかるね。


「お久しぶりです、プライドさん」


 俺を迎えに来たのは、この「獅子の王国」の王であり、「魔大陸」の支配者の一角である獅子王プライドその人だった。


 でもやっぱり気さくなお兄さんというイメージしかわかないね。


 もっともこの人がとんでもなく強いってことだけは、佇まいからわかるんだけどね。


 なにせ座っているだけだというのに、威圧感が半端じゃないもの。肌を突き刺してくるような鋭さがあった。


 これでもプライドさんにとっては、通常だっていうのが驚くね。


「おまえさんも元気そうでなによりだ! しっかし」


 豪快に笑いつつ、プライドさんは俺の周囲を見回し、そして笑った。


「ラースの奴の言う通りだな。まさかお前までいるとは思っていなかったぞ、レア!」


「お久しゅうございます、獅子王陛下。ご機嫌がよさそうでなによりですわ」


「よせよせ、俺さまにそんな他人行儀で話すなよ。素のおまえさんの口調で言えばいいだろうに。がははは」


 プライドさんが豪快に笑っている。笑っているのだけど、その言葉の節々がレアを挑発しているようなものなので、勘弁してもらえませんかね?


「……なにを仰るのです? 私は産まれてこの方、この口調で」


 こめかみに青筋を浮かべさせながら、レアは笑っていた。笑っているけれど明らかに、ヤバいデス。


 でもプライドさんはそのことにまるで気づいていないみたいですね。この人も鈍感か!


「なにを言っているんだ、おまえは? いつものおまえは男勝りな口調で、それこそ嬢ちゃん以上に荒っぽい喋り方を──」


「シリウスちゃん、ちょっとごめんねぇ~?」


「わぅ?」


 レアがニコニコと笑いながらシリウスの耳を押さえた。そして──。


「グダグダうるせえんだよ、この猫野郎! それ以上、シリウスちゃんの教育に悪いこと抜かすと、耳から手を突っ込んで奥歯をガタガタ言わせんぞ!?」


 見事に爆発しました。その爆発にプライドさんがびくりと体を震わせました。


 さしものプライドさんもいまのレアの迫力には敵わないようです。うん、母は強しですね。


「ぷ、プライドさま。さすがにいまのプライドさまの方に問題があるかと。ほら、あの茶色い髪の女の子が抱きかかえているのが、例の」


「あ、ああ、そうだったのか。なら悪いことをしたな。す、すまん、レア。俺様の勘違いだったよ」


 あははは、とさっきとは違い、レアの怒りを買わないように、できるだけ腰を低くして謝っていた。


 そんなプライドさんの姿に一応溜飲したのか、レアはため息混じりにしつつ、シリウスの耳から手を離した。


「ごめんねぇ、シリウスちゃん。シリウスちゃんには聞かせられないお話しだったの」


「そうなの?」


「そうなの」


 にっこりと笑うレア。


 うん、さっきの鬼のように怒っていた姿といまシリウスへと向ける笑顔。


 そのどちらも同一人物の表情だというのだから驚きますよねぇ。そしてそんな嫁の旦那が俺です。


 ……やめて? そんなかわいそうなものを見る目で俺を見ないでください。これでもそれなりに幸せだもん! 本当ダモン!


「……嬢ちゃん、よくレアを嫁にしようと思ったな。俺様はそんなおまえさんを心の底から称賛するよ」


「やめてください。そんなかわいそうなものを見る目で俺を見ないで」


「あ、すまん」


 素直に謝っていただけました。でも謝られたところで、むしろ謝られたからこそ、俺をかわいそうなものを見る目で見ているということが確定しました。


 これでも一応幸せなのに。


「とにかくです。まさかプライドさん自らが迎えに来てくださるとは」


「俺はこれでも止めたんですよ? カレンちゃんさん。だというのに、プライドさまったら、俺様が行くって聞かないんですもん。それこそ止めに入った獅子王軍をみんな蹴散らしかねない勢いでしたよ。おかげでこうして俺が引率することに」


 やれやれと肩をすくめるキーやん。どうやら各国のペットさんたちはみんな胃痛に悩まされる宿命なのかもしれないね。


 実際うちの嫁のひとりもコアルスさんの胃痛のタネでしたからね。当の本人はにこにこと笑うだけですけどね?


「とにかく、ようこそ、「獅子の王国」へ。この俺様、獅子王プライドの名においてお前さん方を歓迎しよう」


 プライドさんは豪快に笑いながら言った。


 本当に相変わらずの人だ。そんなこの人だからこそ信用できることもある。


 特に「蒼炎の獅子」についての情報が知りたいな。正確には「蒼獅」っていう爺さんの情報だけどね。


「しばらくよろしくお願いします。プライドさん」


「おうよ!」


 プライドさんは再び豪快に笑った。


 こうして俺たちの「獅子の王国」での日々は始まったんだ。

 久しぶりの獅子王さん、登場でした。

 続きは八時になります。

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