表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
358/2045

Act4-6 いざ行かん、「獅子の王国」

 二日目になりました~。

 さっそく一話目です。

 武器を受け取ってから、俺はまっすぐにギルドへと戻った。


 ギルドの前にはすでに希望たちが準備を終えて待っていた。


 今日がサラさんとの約束の日だったからね。武器を受け取ったら、すぐに出発する予定だった。


 なにせラースさんには一週間程度は待つと言われてしまっていた。


 逆に言えば、一週間しか待たないぞと言われているようなものだったんだ。


 だからこそ、武器を受け取ってすぐに出発できるように、あらかじめ希望たちには伝えておいた。


 ラースさんには昨日のうちに、武器を受け取ったらすぐに出発すると伝えてあった。


 ラースさんは「獅子の王国」との国境付近に迎えの者をよこしてもらえるようにとプライドさんに連絡しておくと言ってくれた。


 でもどうやって「獅子の王国」にいるプライドさん宛てに、連絡をしたのかはわからない。魔法陣でも使って使者でも送ったのかな?


 とにかく、ラースさんのおかげで「獅子の王国」に行く準備は整っていた。あとは実際に「獅子の王国」へと向かうだけだ


「わぅわぅ、ぱぱ上、遅いの!」


 ただ少し待たせてしまったからか、シリウスはちょっとおかんむりだね。


 希望の腕の中でぷくっと頬を膨らましているもの。


 当の希望は苦笑いしている。希望は当然として、シリウスも温泉を楽しみにしている。


 ただ今回は遊びに行くわけではなく、仕事のために向かうわけなのだけど、そこはたぶんわかっていないんだろうね。まったくシリウスってば、かわいすぎるぜ。


「ごめん、ごめん。早速行こうか」


「わぅ! おんせんが待っているの!」


 目をきらきらと輝かせながらシリウスは笑っていた。希望のおかげですっかりと温泉の魅力に囚われてしまっている。まだ入ったこともないのにね!


 まぁ、親子っていうのは趣味趣向が似るものだから、無理もないのかな。それに俺だってシリウスや希望たちと一緒に温泉に浸かるのは楽しみだもの。


「そんなわけで、今回もお願いします、ゴンさん」


「はいはい、わかっていますよぉ~」


 すでに本来の姿になっていたゴンさんが、背中に乗りやすいようにと寝そべってくれた。


 俺が希望を抱きかかえると、アルトリアとプーレがなにか言いたげな顔をしていた。


 だけどそんなふたりを黙らせるかのように、レアがふたりを片腕ずつで抱きかかえると、さっさとゴンさんの背中に乗ってしまった。


 その後に続いてゴンさんの背中に乗ると、ゴンさんはゆっくりと起き上がるのではなく、そのままの体勢で翼をはためかせていく。


 すぐにゴンさんの巨体が宙に舞い、少しずつ「ラース」の街並みから遠ざかっていく。


「うわぁ、高いのですねぇ」


 プーレが眼下の光景に体をぶるりと震わせていた。


「エンヴィー」から戻ってくるときも同じ光景を見ていたはずなのだけど、なんでいまさらそんなことを言うのかな?


「おや、プーレさん? あなたもしや高いところがお嫌いですか?」


 にやりとアルトリアが笑っている。日頃の仕返しができると思っているんだろうね。


 実にアルトリアらしいことではあるのだけど、シリウスの教育に悪いからやめていただきたいね。


「そ、そんなことはない、デスヨ?」


 露骨に顔を逸らしながらプーレが言った。その言葉ににんまりとアルトリアが笑みを浮かべると、とんとプーレの肩を押した。


「き、きゃぁぁぁーっ!?」


 プーレが叫んだ。別にアルトリアが落とそうとしたわけではなく、そっと肩を押しただけだったのだけど、それだけでもプーレは叫んでくれた。よほど高いところが苦手なのね。


 アルトリアもその光景ににんまりとしている。


 いや、にんまりとしていた。


 なにせプーレは叫びながらなぜか俺に抱き着いてきたもんね。


 今日のプーレの服装はやや薄手のもので、その分プーレのブツの感触がダイレクトに。やっぱりなかなかのものをお持ちですな。


 そのうえプーレと来たら、上目遣い&涙目のコンボで俺を見上げて、旦那さま、怖いですと連呼している。


 あー、その、ちょっと理性的にヤバいからと言いたいのだけど、プーレは俺の反応なんてお構いなしに抱き着く、いやしがみついていた。


 そんなプーレの行動にアルトリアは当然のようにぶち切れた。


「この女ぁぁぁ! 「旦那さま」に色目を使うなぁぁぁ!」


 目を血走らせながら叫ぶアルトリア。


 いや、色目を使う以前に、あなたがプーレをこんな状態にしたわけですよ、と言うのは簡単だった。


 しかしいまのアルトリアになにを言っても無駄そうだったので、あえてなにも言わなかった。


 え? なんでなにも言わないのか、って?


 だってさ、アルトリアを止められるのは俺だけじゃなくなっているもの。なにせいまの俺には──。


「ア・ル・ト・リ・ア・ちゃん?」


 ニコニコと笑うレア。その声にびくりと体を震わせるアルトリア。


 アルトリアは体を震わせつつ、恐る恐ると振り返った。


 同時にがしり、と。そう、がしりと顔を掴まれていた。


 え? 誰に? 言わなくてもわかるでしょうに。元ヤンなうちの嫁にですよ。


「無駄に叫ぶな、うるせえ」


 にっこりと笑いながらのレアさんのひと言に、アルトリアはひゃいと頷くので精いっぱいになっていた。


 そう、いまやアルトリアにはレアという天敵がいた。


 それでいて序列は明らかにレアの方が上という、アルトリアにとっては、どうあがいても絶望状態だった。


「よろしい。快適な空の旅に無粋な叫び声など」


「で、ですが、お師匠様? 叫んでいるのはプーレさんだって、むぎゅ」


「おまえが叫ばせたんだろうが? 違うか? あ? どうなんだ?」


「……違いませんです、はい」


「よろしい。自分のしたことをちゃんとわかってこそのシリウスちゃんのまま上さんですからねぇ。わかりましたか? アルトリアちゃん」


「……ひゃい」


「返事ははい、だろう?」


「はい。ごめんなさい」


 とても見事な敬礼をしながら、アルトリアは頷いていた。


 レアは満足したかのようによろしいと言って、アルトリアの顏から手を離していた。


 同時に希望がシリウスの耳を押さえていた手を離した。


 シリウスは不思議そうに首を傾げている。


「ねぇねぇ、レアままはなんでまま上のお顔を掴んでいたの?」


 シリウスはレアとアルトリアのやり取りの内容を知らない。


 というか知らせられないというか。


 優しいレアままが、元ヤンだったとか、シリウスがショックを受けかねないし、俺以上に男勝りな素のレアの口調を聞いて、真似されるのは困るからだ。


 でもならアルトリアにアイアンクロ―をかますのはいいのかというと、まぁ、それくらいは大目に見てあげてくださいってところで。


「ん~? レアままはそんなことをしていないよ? そもそもレアままがそんなことをするように見えちゃっているのかな? そうしたらレアままは悲しいなぁ」


 実際は大目に見るどころか、思いっきりごまかそうとしているんですけどね、レアってば。


 実際いま見たのは幻覚だとシリウスに言っているし。


 むしろそういう風に見えているのかとシリウスの情に働きかけているし。


 どちらにしろ、とても姑息ですね。


「わぅわぅ! わたし、レアままがそんなことをするなんて思っていないもん! いま見たのはきっと間違いだもん!」


「ふふふ、そう言ってくれるとレアまま、嬉しいなぁ」


 ニコニコと笑うレアままさん。ただ本性は元ヤンであることは言うまでもない。


 本当にうちの嫁たちは個性的ですね。いっそ疲れるくらいには。


「今日も元気だね、みんな」


 あはははと希望が笑う。


 現状のカオス極まりない光景を以て、元気と言い切れる希望の器の大きさに、カレンちゃんびっくりだよ。でもそういうところも好きですけどね。


「とりあえず、ゴンさん。進路は「獅子の王国」との国境で」


「はいはい、お任せあれですよぉ~」


 ゴンさんがゆっくりと進路を「獅子の王国」へと向かって飛んでいく。


 個性的すぎる面々とともに向かう「獅子の王国」はいったいどんなところなのか。


 俺は快適な空の旅を楽しみながら、地平線の彼方をじっと見つめていた。

 続きは四時になります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ