Act3-49 空気破壊と書いて、シリアスブレイカーと読む
サブタイがひどい件。
でもって前回までのシリアス成分がぶっ飛びます。
眠る希望の姿はきれいだった。
まるでもう生きていないみたいだ。そう、まるでモーレが死んだ姿のように。
モーレは部位が欠損していたり、内臓が出てしまっていたりしていたけれど、顔だけはとてもきれいだった。
作りもののようにきれいだった。少し前まで生きて動いていたとは思えないほどに、最初から命が宿っていなかった人形のようだった。
いまの希望も同じだ。もう命など宿っていないように俺には思える。
もう生きていない。死んでしまっているみたいに思えてならない。
「のぞ、み?」
声が震える。いや声だけじゃない。
手も脚も体のすべてが震えていた。
震える体でもどうにか一歩ずつ進み、そっと頬に触れる。
温かかった。まだ温かいじゃなく、ちゃんと温かった。
希望自身のぬくもりがたしかにある。
それに近づいてわかったけれど、呼吸をしている。
それでも念のためにと胸に耳を当てる。でも希望の胸が大きすぎて、よく聞こえない。
「仕方がない、かな」
希望の服に手をかけ、肌蹴させる。それから直に胸に耳を当てた。
普段は服越しに触っているけれど、こうして直に触ると、希望のブツがいかに凶悪であることがよくわかるね。
とはいえ勘違いしないでほしいけれど、俺は触りたくて触っているわけではなく、ただ希望の心音をちゃんと聞くためなんだ。
それ以外の意図は一切ありません。
あくまでも希望が生きていることを確かめるためでありまして、直に触りたいから肌蹴させたわけではない。
……まったく下心がないとは言えないけれど、少なくとも下心のためだけにというわけでは──。
「……ねぇ、あんたさぁ、いつのまに強姦魔になったわけ?」
うん、下心はなかったよ。
なかったというのに、当の本人からはとんでもない誤解を受けています。
待って、待ってください。強姦なんてするつもりはないよ!
そもそも希望は俺の嫁なんだから、ちょっと無理やりであってもそれは和姦になるわけで、って違う! そういうことを言いたいわけじゃない!
「の、希望さん?」
恐る恐ると顔をあげると、にっこりと笑う希望がおりました。
あは、笑顔が素敵ですね。素敵と書いて殺気溢れると読むのは言うまでもない。
えっといったいいつのまに起きたんでしょうか。
カレンちゃん、本当にわからなかったよ。いやいやわかるわからないを言っている場合じゃないか。
希望がとんでもない誤解をしているもの。
これはあくまでも人命救助をしようとした結果であり、希望を襲おうとしたわけではないのですよ。
そう、これは人命救助のために必要なことであって、希望を襲って「大人」にしようとしているわけではないのです! いわば、誤解。そう誤解なのだよ!
「ち、違うよ? これは違うんだよ? 本当だもん。カレンちゃん、嘘言わないモン!」
「……あんたが自分を「カレンちゃん」って呼ぶときは、たいていなにかをごまかそうとするときか、よっぽど困ったことがあったときのどっちかなんだよねぇ」
まぶたを薄く開いて笑う希望。希望らしい笑顔なのだけど、めちゃくちゃコワイデス。
いやいや待とうよ。なんで俺いまから滅殺されそうな雰囲気なんですか!?
俺なにも悪いことしていないもん! 希望を助けようとしただけだもん!
なのになんで折檻を受けそうになっているんでしょうか。意味がわからないよ。
「待って、希望。本当に待って!? 俺なにもしてないよ!?」
「……直に人の胸を現在進行形で揉んでいるのに?」
「へ?」
視線を下げると、あら不思議。俺の手は現在進行形で希望の胸を揉んでおります。
う、うわぁーい。なんだかさっきから手が気持ちいいなぁと思っていたけれど、こういうことだったんだぁ。
あははは、カレンちゃん一本取られたなぁ、あははは。
「あははは、じゃないよ? カレンちゃん?」
希望のこめかみに青筋が浮かび上がった。
……はい、わかっております。笑っている場合じゃございやせんよね。
わかっております。それでもワテクシ、笑っていないと死にそうです。
希望さんの眼光で心臓がいまにも止まりそうでございます。
「ま、まぁ、待とうか。いや待ちましょうよ、のんちゃん。ここは幼なじみであり、旦那であるこのレンちゃんを信じていただければと」
全身を震わせながら、昔の呼び名をあえて使う俺。希望はおばあちゃんから「のんちゃん」と呼ばれていた。
本人曰く「のん気って言われているみたいだから」って嫌そうにしていたけれど。
でもって俺の場合はカレンだから「レンちゃん」と希望から呼ばれてはいた。
実際ネットゲームのアバターは「レン」にしていた。
「カレン」だと明らかに女性っぽいけれど、「レン」であれば女性でも男性でも問題ない名前だったから、日本にいた頃はよく使っていた名前だった。
でなぜいまその名前を出したのかといいますと、幼き日の無垢な頃の思い出を蘇らせてもらい、その縁を以てどうか許しを願いたいという狙いがあったのですよ。そうあったわけなのですが──。
「ねぇ、私が「のんちゃん」って呼ばれるのが嫌いなことを知っていて、言っているのかな? レンちゃん」
希望のこめかみの青筋が追加されました。
うん、やっちまったぜ。自分で「のんちゃん」呼びは嫌がっていたと言っていたくせに、どうしてそんな大事なことをスルーしていましたかね、俺は!?
それだけ現状が危機ということもあるんでしょうけど、それでもさ、もっとこう、ね?
もっとこうノスタルジックな感じになってくれるとレンちゃん、まじに嬉しいんですけど、ダメですかね?
「うん。ダメ」
「デスヨネェ」
希望が笑う。そしてまた追加される青筋。もうこうなれば破れかぶれだよ!
どうせ折檻を受けるのであれば、そうなる前に徹底的にいい想いをしてやる!
「ぐりぐりぃ!」
「ちょ、ちょっと香恋!?」
希望の胸に顔を埋める。
埋めながら左右に頭を振りながら、より深く顔を埋めていく。
ああ、柔らかくて気持ちいいです。顔全体が胸に埋まる。
なんとも言えない幸福感が俺を包み込んでいく。
ただ惜しむらくは下着が邪魔ってことですかね。
直にとはいったものの、それはあくまでも下着を含めたうえでのことだ。
どうせこのあとは折檻を受けるんだ。
ならば徹底的にやるまでよ。
具体的には目の前にあるホック部分を、歯と舌を使って上手い具合に、うん、よし!
「ちょ!?」
希望が慌てた。ふふふ、慌ててもすでに時遅しよ!
邪魔をしていた下着はすでにない。
上手い具合に剥ぎ取らせていただきました。あとはもう、ね。
「よし、これからが本番だぁい」
「なんの!? というか、落ち着いてってば! ちょ、こら、変なところに顔を埋め、やん」
希望がびくんと体を震わせた。
顔がよく見れば紅い。興奮しているのかな。
それとも快感ゆえなのかな。
どちらにせよ。こんなものを見せられたとあっちゃ止まれるわけがないっしょ。
ぐっふっふっふ、徹底的に楽しませてもらいましょうか。
とりあえずはこのまま顔を埋めて深呼吸をですね。
「い、いい加減にしろ!」
深呼吸をしようとした、そのとき。
頭上にゲンコツが落ちました。
誰のか? そんなのは希望しかいないでしょうに。
おかげで希望の胸から顔が離れてしまったよ。というか頭が痛い。地味に痛い。本当に痛いです。
「こ、この変態! 強姦魔!」
希望が胸を片腕で隠しながら叫ぶ。しかも涙目になっている。
ただ、うん。そんな反応でそんなことを言われても、ただのご褒美です。本当にありがとうございました。
「うぅ、香恋ってばなんでこんなに変態さんに」
希望がため息を吐いている。
ため息を吐くだけでも、いまの恰好だとめちゃくちゃセクシーです。
うん、これは誘われているよね? むしろ誘っているとしか思えない!
「あ、あのさ? 目が怖いんですけど?」
希望の顏が引きつっている。さっきから表情がころころと変わってとてもかわいいよ。
ただ表情を変えるのも疲れただろうから、そろそろね? うん、いいよね?
「ちょ、ちょっと香恋、さん?」
「ごめんね、希望。もう俺止まらないよ」
「なにが!?」
「溢れるパッションがだよ。というわけでいただきまーす!」
「ちょ、待って、こら、やぁ」
気づいたら希望に飛びつき、組み伏しました。
けれどすぐにまた反撃を喰らってしまったのは、まぁ、言うまでもないかな。
うちのカレンちゃんさんは、どうしてこうもシリアスブレイカーなんでしょうね。というかエロ親父?
まぁブレイクしているのは今回だけってことで。次回はシリアスだよとだけ言ってみます。




