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Act0-32 魔法拳士カレンちゃん、誕生

「カレンちゃんは、変わっていますね。会ったばかりの相手に、好意を向けてくれる。正直、あなたのような人間と会ったのは、ずいぶんと久しぶりです。私が知っている大多数の人間というものは、基本的に強欲で、横暴で、なんのためらいもなく、同族をも手にかけられる。そんな人種ばかりでした。でも、あなたは違っている。人間なのに、人間らしくない。まるで最初から人間ではないように思えます」


「さすがにそれは言いすぎじゃ」


「ふふふ、そうですね。でも、それくらいあなたは変わっているということです。そしてそんなあなたを私は嫌いじゃないです。むしろ好きですね。あ、変な意味ではないですよ?」


 両手の人差し指を交差させ、バッテンを作りながら、釘を刺すエンヴィーさん。そんなことは言われずともわかっているのだけど、そもそも俺はそういう趣味はない。まぁ、ムサくるしい野郎と一緒にいるよりかは、かわいらしい女の子や、きれいなお姉さんと一緒にいた方が楽しいけれど、至って俺はノーマルだ。そっちのけはない。まぁ、エンヴィーさんが相手なら、とちょっと思ってしまわなくもないが、一応ノンケのはずだ。


 第一エンヴィーさんだって、そんなつもりはないのだろう。バッテンを作っているし。っていうか、バッテンを作る人って本当にいるんだな。いまどき、幼女でもやりそうにないことなのに、それを年上で、美人なお姉さんがやっているというのは、なんとも言えないものを感じさせてくれる。ある意味萌える。って、これじゃノンケじゃないと言っているようなものじゃないのか。


 いやいや、俺はノンケである。そっちのケはない、はずだ。少なくとも、いままで同性に恋したこととかないし。まぁそれ以前に初恋もまだですけどね。


 なにせ俺の周りにいる、身近な男性方は、とんでもない猛者ばかりであるし、そもそも男所帯であるから、男という生き物がどういうものなのかは、嫌と言うほどわかっていた。なので、異性というものに憧れを抱く気になれない。だからクラスメイトの子が、アイドルにキャーキャー言っている感覚が、俺には理解できなかった。だいたい、どんなに男前な面をしていても、腹の中まで男前なのかどうかはわからない。「聖大陸」が表向きは、「魔大陸」と持ちつ持たれつの関係でいるくせに、実際は「魔大陸」の長たちである「七王」さんたちを討伐しようとしているのと同じようにだ。アイドルの腹の中と、死活問題ゆえの行動を一緒にするのは、どうかと思うけれど、実際似たようなものであることはたしかだった。


「さて、脱線するのはここまでにして。カレンちゃんの人となりは理解できましたし、力量もだいたいは

わかりました。あとはどこまで偽装させるのかがいいのか、ですね。魔法が使えないのはいいとしても、あとはどういうスタイルで戦うのか、というところですね。武器は使えますか?」


「えっと、一応剣道、いや剣術の心得くらいは」


「自己流ですか?」


「いえ、下の兄貴が剣道をやっていて、全国、あー、俺の住んでいた国でも有数の腕前でしたし、親父がそっち関係はなんでもござれの人だったので」


 うちの親父は、一般的に武道と呼ばれるものは、たいてい修めていて、会社を経営する傍ら、道場経営もしているというとんでもない人だった。が、道場は基本的に週一回くらいしか開けてはいなかったし、親父の都合が悪いときは、じいちゃんが代わりをしていた。じいちゃんも若い頃はとんでもない人だったらしいけれど、その頃のじいちゃんを俺は知らない。俺が知っているじいちゃんは、道場にかけてある日本刀と西洋系の剣(どちらも模造刀)で素振りしようとしたら、ぎっくり腰をやらかすというイメージしかないので、じいちゃんが本当にとんでもない人だったというのは、いまいち信じられない。


 まぁ、とにかく、そんな背景があるから、俺は一通りの武道はかじっていた。中でも一番練習しているのが、空手と剣道だった。空手は一心さんで、剣道は下の兄貴である弘明兄ちゃんの影響が強い。なので、俺の師匠は、空手が一心さんで、剣道は弘明兄ちゃんだった。日本で生活していた頃は、熱心に練習しても、特に意味もないものだったけれど、こうして異世界に来ると、練習しておいてよかったと思う。ただ空手はともかく、剣道の方は問題があるけれども。


「なるほど。ただカレンちゃんの場合、剣は使えたとしても、振るえる剣がないですね。並の剣では、カレンちゃんが本気で振るったら、それだけで折れてしまいそうですし」


「あー、やっぱりそうですか?」


「ええ。まず間違いなく、折れますね」


 自分でも理解していた。この力で剣を振るったら、確実に折れる、と。加減すればいいだけの話ではあるのだけど、もし全力を出さないといけない戦いに巻き込まれて、そのときに武器が壊れましたなんてことになったら、目も当てられない。となると、俺の戦闘スタイルはおのずと決まってしまった。


「素手での戦いがメインになっちゃいますかね?」


「それが無難ですね。身体能力の向上については、付与魔法で身体能力を強化したうえで、属性も付与しているからこその威力という風にすれば、問題はないでしょう。実際推薦状はそういう風にしたためようと思います。付与魔法の使い手でありながら、格闘戦に秀でた少女である、と。本当のことは言っていませんが、嘘を言っているわけではないので、これで問題はないでしょうね」


「じゃあ、これで試しは終わりですか?」


「ええ。ただ、少し練習しましょうか。あと簡単な魔法も教えておきます。なにかの拍子に使えるようになるかもしれませんからね」


「いいんですか?」


「ええ、構いませんよ。今日はもうなにもやることありませんから。なのでたっぷりと付き合えますよ」


「じゃあ、お言葉に甘えます」


「はい、任されました」


 豊かな胸を叩きながら、エンヴィーさんは言った。本人的には特に意図はないのだろうけれど、その光景を見て、俺が内心で涙を流したのは言うまでもない。とにかく、そうして俺の戦闘スタイルは決まったんだ。

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