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Act3-34 デートじゃないもん!(Byカレン

 サブタイがすべてを物語ります。

 さて、砂糖の貯蔵は十分か?←ヲイ

 レアさんとのデートは日が暮れるまで続けることにした。


 というか、レアさんがそうしたいと言い出したんだ。


「「旦那さま」にお見せしたいものがあるので、それまでお付き合いくださいね」


 その豊満な体ですり寄りながら、レアさんはそんなことを言い出してくれた。


 ……別に圧倒的すぎるブツにやられたわけじゃないよ?


 ただレアさんからのお願いってあんまりなかったし、日暮れまでは続けたいなんていうお願い自体叶えることがたやすいものだった。


 時間だってたっぷりとあった。


 希望の屋台を手伝わなくてもいいと言われている以上、この国に滞在している俺には多くの時間があった。それはシリウスも同じだ。


 レアさんの場合は王さまとしての仕事があるけれど、メイド長さんの話を聞く限り、いつも屋台の仕事が終わり、城へと帰るとすぐに王としての仕事を終わらせてしまうらしい。


 やりたくないと言って放り出すという意味ではなく、文字通り即座にすべてを片付けてしまうらしい。


 そんなレアさんにコアルスさんがため息を吐いて、いつもそうしてくださいと言っているそうだった。


 たぶん今日もデートが終わったら、すぐに仕事を終わらせるんだろうね。とはいえそれでなにかをするわけじゃない。


 仕事が終わるとレアさんはそのまま眠ってしまうそうだからね。なにかをしているわけではないみたいだ。


 そんな生活を最近はずっと送っているみたいだ。


 メイド長さん曰く、仕事をしてくれるのはありたがいけれど、あまりにも根を詰めすぎているから、少し心配だそうだ。


 実際その話を聞いてからは俺も心配をしていた。


 正直に言うと、デートなんてせずに休んでほしいとさえ思っている。


 レアさんが倒れる姿なんて俺は見たくないもの。


 だから倒れないように。元気でいられるように休んでいてほしいと思っている。


 でもその想いはたぶん届かないんだろうね。


 レアさんはなんでもできる人だ。家事はできないみたいだけど、それはしたことがないからできないってだけで、実際のところは筋がいいと希望が言っていた。


 それこそ壊滅的すぎるアルトリアよりもはるかにマシなレベルらしい。


 だからこそなんだと思う。


 なんでもできてしまう人だからこそ、無茶を重ねてしまう。だから俺は休んでいてほしい。


 こうして俺とデートなんてせずにゆっくりと休んでいてほしいと思う。


 でもきっとレアさんは頷いてはくれない。レアさんはそういう人だから。だから俺にできることは──。


「レアさん、レアさん」


「なんですか、「旦那さま」」


「あれ、食べさせっこしない?」


 大通りに出ている屋台。そのうちのひとつを俺は指差した。


 その屋台で売っているのは、チョコバナナ的なものを何層もクレープで巻いたスイーツだった。


 チョコバナナをクレープで何層も包むとか聞いたことないよ。


 まぁ、でもありだとは思うよ? 


 実際チョコもバナナもクレープの中身としてポピュラーだし、相性だっていいんだ。きっと美味しいと思う。


「ああ、プクレですか。いいですよ」


 レアさんが頷いてくれた。となれば、実食です。


「すみません。プクレをひとつ」


「あいよ。どのプクレがいいかね?」


 プクレを売っていたのは、恰幅のいいおじさんだった。


 どのと言われてもと思っていたら、レアさんが代りに注文をしてくれた。


「では、バルナとモンシーのものをお願いしますね、ご亭主」


「バルナとモンシーだね。ひとつ銅貨五枚だ」


「では、こちらで」


「ほい、ちょうどお預かり。では、こちらをどうぞ」


 おじさんはレアさんにではなく、俺にプクレを渡してきた。


 慌てて受け取ると顔を近づけられた。え、なに?


「……陛下をよろしくな。なにがあったのかは知らんが、今日はあまりお元気がないみたいだしな」


 それだけ言って、おじさんは慌てて台に手をついた。


 まるでよろけてしまったからこそ、顔を近づけたという風に。


「いやはや、参ったな。少し働き過ぎかな? こんなおっさんに顔を近づけられて怖かったろう? 悪いな、お嬢ちゃん」


 おじさんは頬を掻きつつ、レアさんを見やる。


 レアさんはなにも言わない。ちょっと面白くなさそうな顔をしているくらいだ。


「いや俺は大丈夫です。おじさんこそ、お身体大丈夫ですか?」


「おうよ。商人は体が資本ってな」


 どんと自分の胸を叩くが、どうにも力を込めすぎたのか、おじさんは咽てくれた。


 ちょっとカッコ悪い。けど洞察眼は優れているみたいだ。


 なにせレアさんを蛇王エンヴィーとわかったうえで、普通に接客をしているのだからね。


 素直にすごいと思う。でも、力を込めすぎて咽るのはさすがにカッコ悪すぎるけれど。


「ご亭主。あまり無理をなさらないように。「あなたたち」のプクレが私は一番好きですから」


「……ありがとうございます、陛下」


「あら? 陛下とはなんのことでしょうか?」


「おっと、これは失礼。いやぁ、蛇王さまによく似ておられるので、つい間違えてしまったぜ。というわけでこれはお詫びだ」


 おじさんは違うプクレを渡してくれた。ベリロクリームのプクレだと渡してくれる際に言っていた。


「お詫びって」


「気にしなくていいぜ。なにせ勘違いをしてしまったんだ。そのお詫びはするべきだし、そのお姉さんは俺のプクレを一番好きだと言ってくれた。ならお礼もかねて、今後ともごひいきにしてもらうために自腹を切るのは当然さ」


 おじさんは笑っていた。笑いながら代金はいらないと顔に書いてあった。


 たぶん意地でも代金を貰ってはくれないと思う。それだけの意思をおじさんからは感じ取れていた。


「……遠慮なくいただきますね」


「おう。そっちのお姉さんともどもごひいきにしてくれよ」


 おじさんは親指を立てて笑った。俺とレアさんは会釈をしてから、おじさんの屋台から離れた。


「……あの人、レアさんのことを知っているんですね」


「昔から通っている屋台ですからね。昔はあの方のお父さまも一緒に仕事をなさっていましたが、お父さまがお亡くなりになってからは、ひとりで」


「そうだったんですか」


「昔はすらりとした美少年で、いまとは違いやんちゃなことばかりしていて、そのたびにお父様に殴られ涙目になっていましたね」


「へぇ。いまからは想像できないな」


 あのおじさんが美少年だったとは。時の流れの残酷さが身にしみるね。


 おじさんに悪いことを思いながら、おじさんにもらったプクレをかじる。


 クリームの甘さに酸味が後味を引く。この味、ベリロって苺なのかな?


「美味しい」


 甘いものはそこまで好きってわけじゃないけど、この甘酸っぱさは好きだね。


「ベリロクリームは、あの店のオリジナルですね。あのご亭主のお父様はベリロの果汁だけを加えることを主張し、ご亭主は刻んだベリロの果肉も加えることを主張し合っていましたね。最終的にはお父様の主張が勝ったみたいです。ご亭主は果肉の食感をアクセントにしたかったみたいですが、プクレの主役はバルナですから。ベリロの果肉まで入れてしまうとバルナを損なってしまうらしく──」


  レアさんは得意気にプクレについて語っていく。とても楽しそうだった。楽しそうなのだけど──。


「……はい、レアさん」


「え?」


「食べさせっこだよ?」


 そもそもプクレを買ったのは食べさせっこをするためだった。


 なのにいつまでもレアさんに語ってもらうわけにはいかない。


 俺がかじったものだけど、食べさせっこというのはそういうものだからね。遠慮なく、プクレを差し出す。


「え、あ、その」


 レアさんは、顔を真っ赤にしていた。


 いつもの仕返しができて個人的には楽しいし、レアさんがかわいく見えて仕方がない。


 高嶺の花とも言える人のかわいい姿とかごちそうです。


「……では一口」


 レアさんは髪を押さえながら、顔を赤くしてプクレをかじる。


 ……なぜだろう? どうしてかエロティックです。


 道行く人たちも顔を赤くしているし。うん、そこはこの人の特性だし、仕方がないかな?


「……えっと、美味しい?」


「ちょっとよくわからないです。こういうのは初めてですから」


 あははは、とレアさんが顔を真っ赤にして笑っている。初めて。レアさんの初めてを俺が、ってなに考えているんだ、俺は!?


 少し落ち着こうか。まだ慌てる時間じゃない。


「え、えっと、ちょっと移動します?」


「そ、そうですね」


 レアさんの顏は赤い。たぶん俺も赤い。お互いに顔を赤くしたまま、顔を背けていた。


 背けながらも会話をするんだから、我ながら器用なものだと思う。まぁレアさんにも同じことが癒えるけどね。


「つ、次はどこに行こうか?」


「そ、そうですね。お昼でも食べに行きますか」


「そ、そうだね」


 お互いにぎこちなくなりつつも、どうにか会話を弾ませながら俺とレアさんはその場をそそくさと離れた。

 

 ちなみにレアさんの分のプクレも食べさせてもらったけれど、レアさんが言った通り、味はまったくわかりませんでしたね。

 いえ、デートですとあえて言ってみます。

 甘酸っぱすぎて、砂糖吐きそうです←苦笑

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