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Act3-33 浮気じゃないから!(Byカレン

 サブタイが「ちょ!?」って感じですが、まぁ、読んでくださればわかるかと。

 ひとつだけ言えるのはメインヒロインの交代はないです←きっぱり

 レアさんとデートという名目で街中をぶらついていた。


 時折、レアさんは遠くを眺めるように、目を細めながらじっと虚空を見つめていた。


 いや睨み付けていたと言った方がいいのかもしれない。


 そう言いたくなるほどに、レアさんの目はとても鋭かった。


 鋭かったけれど、同時にとても弱弱しくもあった。


 それこそ見ていられないほどに弱々しい目を、レアさんがしていた。


 思わず声をかけてしまったけれど、声をかけてすぐになにを言えばいいのかなって思ってしまったよ。


 声をかけたのは、いまのレアさんを見ていたくなかったから。


 だけどそのレアさんを見ていたのは俺だけだった。


 なにせシリウスと来たら、レアさんの圧倒的すぎるブツに包まれながら眠っているんだもの。


 子供は寝て育つとは言うけれど、いくらなんでもその寝方は羨ましすぎる。


 いや、そうじゃない。羨ましいことは羨ましいけれど、俺の言いたいことはそういうことじゃなくて。


 っていまはそういうことを言っている場合じゃない。


 レアさんが不思議そうに首を傾げていた。それも繕った笑顔でだ。


 俺はそんな笑顔を見たいわけじゃない。


 そんなレアさんらしくない笑顔なんて見たくないよ。


 俺はレアさんの、レアさんらしい笑顔を。包み込むような優しく、朗らかな笑顔を見ていたい。無理やり作ったような笑顔なんて見たくないもの。だからかな、気付いたときには言っていたよ。


「ちゃんと笑ってよ」


「え?」


「そんな繕った笑顔は嫌だよ、俺。レアさんのレアさんらしい笑顔を見ていたいもん」


 そんなとても偉そうなことを本人のまえで抜かしておりました。


 いやいや待とうか、俺。なにその彼氏的セリフは? 年下のツバメのつもりかい! 


 そもそも俺はレアさんにそういう感情を持っていないつーの! 


 いやまぁ、レアさんはとても素敵な人だし、美人だし、優しいし、スタイルいいし、お金持ちだし。非の打ち所があまりにもない人だけどさ。


 それでも俺にとっての本命は希望であるのだから。


 これ以上嫁候補的な人を増やすわけにはいかない。そう、いかないのだけど──。


「ふふふ、これは参りましたね」


 おかしそうに、でもどこか嬉しそうに笑うレアさん。


 その笑顔に俺はやられてしまっていた。見惚れてしまっていたよ。


 心に決めた人がいるというのに、その笑顔にときめいてしまっていた。


 ただそれを表情には出さなかった。


 だって出してしまったら、それこそ希望への裏切りになってしまっていたもの。


 だから耐えた。耐えてできるだけ平静を装って答えていた。


 答えた内容はいまいち憶えていない。


 ただなにかしらの言葉を口にしたということだけはわかっていた。


 そんな俺にレアさんは笑ってくれた。笑いながら──。


「──今夜どうやって「旦那さま」をご誘惑すればいいかなとか。下着姿と産まれたままの姿、もしくはバスロープだけを纏ったままがいいのかと考えていましたから」


 そんなとんでもないことを公道で言ってくださいましたよ。


 いやわかるよ? レアさんなりのごまかし方だってことはさ。


 でもさ、そんなことをいきなり言われた俺の身になってくださいよ!


 というか言い方! もっと違う言い方をしてよ!


 明らかにそういうことを俺とレアさんがしているって風に見られちゃうじゃんか!


 ほら何人か勘違いしている人がいるよ!? 


 あんなちんちくりんが、あんな美女をとか、もしかして抱かれている子は実子なのかとかそんなことを宣う人がなんだか多いんですけど!?


 そもそも誰がちんちくりんじゃ! 


 自分が言うのはともかく他人に言われるのはめちゃくちゃ腹立たしいよ!


 そんな腹立たしさもこめて、こういう場では言わないでとお願いした。


 そう、お願いしたのだけど、俺はレアさんをあまりにも甘く見すぎていたみたいだ。


「──では、閨でだけお話するとしましょうか。まぁ閨では「旦那さま」は私の上でケダモノのように腰を」


 ぽっと頬を赤らめながら、体をくねくねと捻るレアさん。


 それだけでもエロティックなのはどういうことなんでしょうかね? 意味がわからないよ。


 そもそも言うなと言ったそばから言われてしまったよ。


 この人俺の話を聞くつもりがありますか!? たぶんないよね。あったら逆に驚くぜ!


 まぁただの照れ隠しならぬ、ごまかしなんだろうけれど、それでもいまの俺ではレアさんの本心を聞きだすことはできないんだろうね。


 弘明兄ちゃんが持っているギャルゲーのヒロインであれば、いくらでも攻略できるんだけど、やっぱり現実の女性相手には難しいね。


 思えば俺のオタク趣味もすべては弘明兄ちゃんの責任であって、ってそうじゃない。


 弘明兄ちゃんが思いっきりオタクであることはどうでもいいさ。


 どうせいまごろも秋葉原でメイドさんと「萌え萌えキュンキュン」って言っているだろうし。


 弘明兄ちゃん、顔はいいのに性格が残念すぎるんだよね。あれじゃお嫁さんは貰えないよ。


 そういう俺だって本来は嫁さんなんて貰えるわけがないのだけど、なんの因果が希望とアルトリア、あとはエレーンというお嫁さん候補がいるんだよね。


 弘明兄ちゃんが知ったら、真剣で斬りかかれかねないことだなといまさらながらに思うよ。


 だというのに、俺はこうしてレアさんとデートしているわけだ。


 まぁデートという割には、シリウスも一緒だから正直デートという気分にはなれないけれど、レアさんが言うにはこれも立派なデートらしい。


 デートなんていままでしたこともないから、よくわからん。


 え? 希望とはしたことがないのかって? 


 いやしたことがないわけじゃないけれど、当時はまだ希望への気持ちには気づいていなかったから、正直デートって気分ではなかったんだよね。


 ただ幼なじみ兼親友と一緒に遊びに行くって感じだったんだ。


 でもいま思えばあれはデートでしたね。


 なにせ希望とクレープの食べさせっこをしたり、希望とラーメンを食べに行ったり、立ち食いステーキに行ったり、カラオケ行ったり、買い物行ったりしていたもの。


 うん、いま思えば完全にデートですね。


 でもってそのデートの最中、希望が顔を何度も赤くしていたなぁ。


 いまであれば鼻血ものの光景ではあるけれど、当時は「愛い奴め」としか思っていませんでしたよ。


 あれだね。恋心を自覚するまえって無敵なんだっていまでは思いますよ。


 そのうえ当時はデートではなく、遊びに行くって感覚だったから、デートなんてしたことがないと俺が思ってしまうのも当然だった。


 ただ、うん。レアさんのごまかしエロトークはどうにかしたいね。


 レアさんがそうであれば、こっちだって本心を言ってやるもんかって思いますよ。


 本末転倒だろうっていうツッコミはのーせんきゅーです。


「──だーかーら! そういうことを言わないでってば!」


 両手を突きあげながら叫んでみた。


 レアさんがこれでどういう反応をするかなと思っていたら、なぜか顔が近づいてきました。


「ふふふ、承知いたしました。「旦那さま」」


 レアさんは笑っていた。笑っていたけれど、顔を近づけるのをやめてはくれなかった。


 それどころか、どんどんと顔を近づけてきます。


 え、ちょ、ちょっとレアさん、あんたなにを。


 そんな風に慌てているとレアさんは俺の頬にそっと唇を押しあてた。


 触れるだけのそれは軽やかな音を奏でてくれた。


 奏でられた軽やか音を耳にしながら、胸がどくんどくんと高鳴っていくのがわかった。


 顔が熱い。それこそ水を当てたら一瞬で沸騰するんじゃないかってくらいに顔が熱くてたまらない。


 ごまかされたとは思う。思うけれど、それはまだ俺には話せないってことなんだと思う。


 俺がまだ頼りないから、レアさんにはぐらかされてしまった。


「蛇の王国」にいつまで滞在するかはわからない。


 わからないけれど、滞在中の間にはぐらかされないくらいに、レアさんから頼りにされてみせるという目標をみずから立ててしまった。


 それじゃあ、堂々と浮気をしますと言うようなものだとは自分でも思ったけれど、一度決めたことをなかったことにはしたくなかった。


「さぁ、次はどこに行きましょうか?」


 見た目は二十代半ばくらいに見えるレアさん。


 俺よりも少しばかり年上なお姉さんにしか見えない。


 でも実際は数千年もの長い月日を生きてきた人だ。


 だけど浮かべる笑顔は、本当に少しばかり年上な人と言う風にしか見えない。


 でもその双肩に伸し掛かるものはとても重たい。


 その重たいものを少しでも軽くする手伝いをしてあげたい。


 身の程知らずと言われてもいい。


 それでも俺はこの人の力になりたい。


 レアさんの笑顔を見て、俺はそう思わずにはいられなかった。

 三章だとレアさんが希望を食いつつありますね。

 まぁ、三章のメインキャラだから仕方がないんですけどね←汗

 

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