Act3-31 デート(子連れ)
本日二話目です。
でもってデート(子連れ)です。
「ふふふ、カレンちゃんとデート。ふふふ~」
レアさんが鼻歌混じりに隣を歩いている。
着ているのは町娘風の、いわゆる安っぽい服だ。
ただ安っぽいのは見た目だけ。というかぱっと見では安物風に見えるだけだった。
なにせ着ているのはシルク系の服だった。
それを少し加工して安物っぽく見えるようにしている。
ぱっと見絹っぽく見えるけれど、実際はそういう風に仕立てている服という風に見せかけたシルク風の服という、複雑な服を身に着けている。
「デートと言えば、お食事をして買い物をして散歩をして。最後にはめくるめく、オ・ト・ナの時間ですね」
ひとりで言って、ひとりで盛り上がり、ひとりでぽっと顔を赤くしているレアさん。
傍から見たら明らかに怪しい人だけど、絶世の美女なレアさんがしていると不思議と怪しさは消えてなくなって、かえって人の目を奪っていた。
なかには本当のデート中のカップルさんたちもいて、彼氏さんが彼女さんに怒られていた。なんかうちの連れがすみません。
「オトナの時間って、なに?」
俺とレアさんの間にいるシリウスが不思議そうに首を傾げていた。シリウスがいるのは、希望ではなくアルトリアの要望を聞いたからだ。
なんでもさすがのレアさんもシリウスがいては、邪なことをしようとはしないだろうってことだった。
あといつまでもお手伝いばかりをさせるのも悪いから、遊びに連れて行ってあげてほしいってことだったね。
うん、シリウスがお手伝いをしたいからということで手伝いをしてもらっているけれど、普通に考えたら子供にここまでお手伝いをさせるのはどうかなと思うよね。
だからこそシリウスも一緒に連れてきていた。
その時点ですでにデートもなにもないんだけど、レアさん曰く立派なデートらしいですね。
その辺のことは俺にはよくわからないけれど。
とにかく俺はレアさんとシリウスの三人でこうして出かけているわけです。
客引きはすでにしなくても十分なほどにうちの屋台の噂は広まっているから、客引き要員だった俺たち三人が抜けても問題がない。
それに代わりとしてゴンさんが手伝ってくれている。
ゴンさんも見た目は美女だから立派な客引き要員として頑張ってくれているみたいだ。
おかげで今日以降は手伝わなくてもいいと希望には言われてしまっている。
事実であることはわかっているけれど、それでもちょっぴり寂しかった。
ただ希望がそう言ったのは、レアさんのことも含めてだから、言うのは当然と言えば当然なんだけどね。
まぁ、それは置いておくとして。
出ましたね。子供特有の大人には答えづらい質問が。
子供も狙ってしているわけではなく、単純に疑問をそのまま口にしてしまうってだけのことなんだろうけれど、この手の質問はどうにも答えづらいんだよね。
というかどう答えろって言うのかな?
そもそもレアさんが言い出したことなんだし、レアさんが答えるのが筋ってものじゃないかな?
なぜに俺が聞かれているんだろか。意味がわからないね。
でもそれを言ってもシリウスは納得してくれそうにはない。
むしろ余計に聞きたがるに決まっていた。
かと言って愛娘からの質問を無視するとか、ぱぱ上としてそんなことはしたくありません。
だけどどうすればいいのか、さっぱりだよ。
「レアままがぱぱ上の子供を、シリウスちゃんの妹ちゃんを授かることなんだよ?」
「そうなの?」
「そうなの。シリウスちゃんは妹ちゃんがよかったんだよね?」
「わぅ! わたし、妹が欲しい! お姉ちゃんって呼んでほしいの!」
「そっかぁ。でもなんで妹ちゃんがいいのかな?」
「わぅ? わたしがメスだから、妹がいいの!」
「そっか。じゃあ、レアまま、頑張って妹ちゃん産んじゃうね」
「わぅ!」
シリウスが妹を欲しがっている。
うん、それ自体はいいんだ。
意味の分からない理由だけど、シリウスらしいかわいさに溢れているからいいんだ。
たださ、いつのまにか、シリウスにとってレアさんも「まま」になってしまっているのが問題ですね。
気づいたときには、シリウスはレアさんを「レアまま」と呼んでしまっていた。
もうすでにシリウスのなかでは、レアさんもままになってしまっているようだ。
アルトリアが聞いたら、また発狂寸前までいくかもしれないね。実際希望が「まま」になったときも、かなりいろいろとあったからね。
希望のときに「まま」というのは、優しい匂いがする人のことというシリウスらしい定義を聞いたけれど、その定義はレアさんにも当てはまるみたいだ。
まぁ匂いもあるとは思うけれど、一番の理由は胸かな?
レアさんのそれは希望をも超えるレベルだ。どういうわけか、シリウスは女の子なのに女性の胸が好きみたいだからね。
ウルフ時代からその傾向はあったのだけど、当時はシリウスをオスだと勘違いしていたから仕方がないと思っていたけれど、女の子だとわかった以上は、女性の胸が好きというシリウスの困った性癖はどうにかしないといけない。そういけないのだけど──。
「レアままのお胸、わたし大好き」
「ふふふ、シリウスちゃんってば、まるでぱぱ上みたいなことを言うんだね。ぱぱ上もレアままのお胸が大好きみたいだから」
「わぅ、知っているよ。ぱぱ上はお胸が大好きだもん。ノゾミままのお胸が大好きなことをわたし知っているよ。あとはまま上のお胸も好きだし、ゴンさんのお胸も好きみたいなの」
「ふふふ、ぱぱ上はお胸であれば見境がないからねぇ」
「ミサカイ?」
「ん~、なんでも好きってことだよ。この場合はお胸であればなんでも好きってことだね」
「そっか、ぱぱ上はお胸にはミサカイがないんだね」
「レアままとしては、ぱぱ上のそういうところの影響を、シリウスちゃんには受けてほしくないけれど。シリウスちゃんはいまさらお胸が好きって言えなくなるのは嫌なんだよね?」
「わぅ。わたしはノゾミままとまま上とレアままのお胸が好きだもん。なのに好きって言ったらダメって言われるのは嫌だもん。意味がわからないもん」
「そっか。じゃあ仕方がないね」
「わぅわぅ、仕方がないの」
にこやかに笑いながら、仕方がないでは済まされないことを話し合うレアさんとシリウス。
というかですね。どうして俺への風評被害を増やしてくれますかね?
女性の胸に対して見境がないってなんのことだよ!?
俺はそんな女性の胸であればなんでもいいって言った憶えはないよ!?
たしかに希望は当然として、アルトリアのもレアさんのも好きですよ?
ゴンさんのはよくわからない。触れたことがないもの。
だからと言ってさ、見境がないとか、さすがに失礼すぎじゃないですかね?
というか、なぜに俺がシリウスの胸好きの原因になるのよ? 意味がわかりません。
そもそもシリウスは元から胸好きだから!
俺のせいじゃなくて、元から胸好きな子だったからね!
俺の責任は一ミリも存在しませんから!
「レアまま、レアまま」
「なぁに?」
「抱っこ」
「はいはい」
くすくすと笑いながらレアさんは、シリウスを抱きかかえた。
シリウスはレアさんの圧倒的すぎるブツの感触にご満悦だった。
う、羨ましいとか思っていないよ? 本当ダヨ?
「ふふふ、シリウスちゃんは本当にかわいいですね。この際、本当に娘になりますか? そうしたら」
ちらりとレアさんが俺を見つめる。
その目はとても熱のこもった視線だった。希望が言っていた言葉が脳裏に蘇る。
「──香恋に対してのことは、香恋への気持ちを語っているときのあの人の目は、私とアルトリアと同じ目をしているもの」
レアさんに対して希望は自分とアルトリアと同じだって言っていた。
たしかにこうして見ていると、レアさんのまなざしは希望とアルトリアと同じだ。
ふたりと同じで、本当に俺を愛しているかのように見えてならない。
ありえないことだと思う。
なんで「魔大陸」の支配者である「七王」の一角であるレアさんが俺みたいなちんちくりんに惚れているのか。まるで理解できない。
でも嫁である希望の言葉を疑う気にはなれないし。そもそもレアさんのまなざしはたしかにはそういう風に見えてしまうんだ。
本当に理由はまったくわからないけれど。毛嫌いされているよりかははるかにマシだとは思う。
「ふふふ、カレンちゃん。今日からは「家族三人」で過ごしましょうね」
ニコニコと笑いながらそんなことを言うレアさん。ムガルさんのこともあるんだけど、もうレアさんにとってはどうでもいいことのようだ。
まぁ、なにかあればこの人のことだから、真っ先に飛んでいくだろうけれど、それまでは俺とシリウスもレアさんに付き合うのも悪くはないよね。
「はいはい、できるだけお付き合いしますよ」
「もう、ノリが悪いですね。そう思いませんか、シリウスちゃん」
「わぅ、ぱぱ上、ノリが悪い」
シリウスが頬を膨らましている。そう言われてもこればかりは性分だからどうしようもないのですよ。
「まぁ、とにかくです。楽しみましょうね、「旦那さま」」
シリウスを抱っこしながら、空いていた距離を縮められた。
それだけ胸がどきっとしてしまったよ。
レアさんは嬉しそうに笑っている。嬉しそうに笑うレアさんを見て、ごめんね希望といまはいない嫁に向かって俺は謝りながら、「エンヴィー」内を散策していった。
おかしいな。
レアさんがカレンガール入りするのが待ったなしになりつつある←汗
と、とにかく。
明日は十六時更新です。




