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Act3-24 今日も大盛況でした。

 本日そして十一月の更新祭りのラストです。

 レアさんによって汚れちまった悲しみに、今日もシリウスの元気な声が降りかかる。


「ぱぱ上、大丈夫?」


 シリウスは気遣うように声を掛けてくれている。


 いい子だね、本当に。


 本当にいい子すぎて、ぱぱ上理性飛びそうですよ、本当に。


「シリウスちゃん、いまのぱぱ上に近づくと食べられちゃうからね」


 そう言って希望がシリウスを抱っこして遠ざける。今日の営業はつつがなく終了した。


 昨日以上の大盛況で終わってくれましたよ。


 なにせマバのステーキもビッククラブのしゃぶしゃぶも両方とも百五十食は用意したのに、お昼時ですべて完売したもの。


 やはりギルドが開く早朝頃から始めたのが功を奏したみたいです。


 でもそのまま終わらせるのはいくらかもったいなかった。


 でも昼頃に閉店するお店っていうのもあるから、問題はないかなと俺は思っていたんだけど──。


「よし午後もやろうか」


 売り上げが好調なこともあり、希望がそんなことを言い出してくれたよ。


 ステーキはともかく、しゃぶしゃぶのスープの用意が間に合わないんじゃないかなと思ったけれど、そこはさすがのプロのメイドさん軍団でした。


 希望の指示に従って、スープの生産を始めてくれましたよ。


「あとそろそろメニューを増やそうか。とりあえず、マバのハンバーグステーキを追加しようかな?」


 希望はそう言ってしゃぶしゃぶのスープを作る片手間で試作用のハンバーグステーキを作ってくれました。


 日本にいた頃よりも、調理の腕が上がっていた。


 というかチートレベルになっていませんかね? 


 もしかしてこの世界に転移して得たのって調理チートですか? 


 そう思ってしまうほどに希望は人数分のハンバーグステーキを片手間で作ってくれました。


 その手際にメイド長さん(仮)も感嘆とされていたほどですよ。


「ふむ。この味でしたら問題なく、お出しできるでしょうね」


 採点はレアさんがしてくれた。


 俺も採点しようとしたのだけど、希望とレアさんに止められてしまったよ。


「「旦那さま」は採点者向きではないですね。特にノゾミちゃんの作った料理であれば」


「香恋は美味しいと美味いしか言わないんだもん。作る側にとってみれば嬉しいけれど、こういうときには向かないかな?」


 レアさんと希望にそう言われてしまった以上、俺は採点者と振る舞うことはできなかった。


 心外だったね。いくら俺が希望ラブだとはいえ、そんなえこひいきはしませんよ。


 せいぜい食べたら、そのまま希望も食べたいですか、と十点満点中百点とか言うくらいだもの。


 ぜんぜんえこひいきじゃないよね?


「……とりあえず香恋は食べていていいから」


「お口チャックしましょうね、カレンちゃん」


 大真面目で言ったはずなのに、希望とレアさんからため息を吐かれてしまったよ。


 俺そんなに変なことを言いましたかね? 


 言った記憶がないんですけど? 


 でもそんなことを言っても希望もレアさんも相手をしてくれることもなく、ふたりは新メニューについての話し合いを始めてしまいました。


 残されたのは希望が作ってくれたハンバーグステーキ(大)くらいです。


 シリウスはと言うと──。


「わぅわぅ、ノゾミままのご飯、やっぱり美味しい! でもわたしはもうちょっと味がうすいほうがいいな」


「そっか、シリウスちゃんは薄味好きなのかな?」


「わぅ! 昔は獲ったご飯はそのまま食べていたの!」


「なるほど。自然そのものの味ってことか」


「シリウスちゃんほどではないですが、たしかに薄味嗜好な人もいますからね。実際マバのステーキよりもしゃぶしゃぶの方が先に完売したのは、そういう嗜好の人もいるってことですからね。それにCランククラスの冒険者となると、わりと年齢は高めですから、その分薄味嗜好になりやすいでしょうね」


「ああ、そっか。ある程度の年齢に達しちゃうと、濃いものはあまり受け付けませんからね。うちのお父さんも香恋が食べるような濃い味のものはあまり食べたがらなかったし」


「そういう人たちのためにビッククラブでもう一品作った方がいいかもしれないですね」


「ビッククラブでかぁ。シリウスちゃん、なにか食べたいものあるかな?」


「わぅ~、焼いたの食べたい!」


 シリウスはふたりと一緒に新メニュー開発に勤しんでいましたけど、なにか? 


 まぁ勤しむってほどにシリウスは活躍していなかった。


 せいぜいレアさんの膝の上に座って、自分の食べたいものを言っていた程度さ。


 まったくもうシリウスってば、そんなわがままを言ったらダメだろうに。仕方がない。ここはぱぱ上が──。


「ローストかぁ。焼き物ばかりが増えちゃうけど、シリウスちゃんがそう言うならいいかな?」


「わぅ! ありがとう、ノゾミまま」


「かわいい娘のお願いだもんね。気にしなくてもいいよ」


「わぅ、ノゾミまま大好き!」


 そう言ってレアさんの膝の上から希望に向かって飛びつくシリウス。


 希望は少し慌てていたけれど、最終的には優しく抱っこしていたよ。


 ま、まぁ、シリウスは希望の娘でもあるから別にそういうことをしてもいいかなとは思いますよ? 


 まだ抱っこだからね。明らかに希望の胸に向かってダイブしていたけれど、それでもまだ許せるレベルだ。なにせまだ希望の胸に向かってダイブしただけであって──。


「わぅ!」


「どうしたの、ん」


 シリウスは希望の腕の中で背伸びをして、そのまま希望の唇を奪ってくれました。


 希望は目を白黒とさせて驚いていたけれど、シリウスはご満悦でしたね。


「し、シリウスぅぅぅ! の、ノゾミままにちゅーしていいのはぱぱ上だけだよぉっ!?」


 娘の突然の行動に俺は慌ててしまったよ。


 でも当のシリウスは「わぅ?」と不思議そうに首を傾げるだけだった。


 い、いくらシリウスでもそればかりは許せない。悪い子にはおしりぺんぺんをしないと──。


「シリウスちゃん。悪戯はダメでしょう? め」


 だというのに希望ったら。希望ったら! ああ、もうかわいいなぁ!


「わぅ、ごめんなさい。でもわたしね、ノゾミままのこと大好きだよ、お嫁さんにしたくらいに大好き!」


 シリウスは笑顔で爆弾発言をしてくれました。


 まさかの言葉に俺も希望も言葉を失ってしまう。が、希望はすぐに笑ってしまう。


「ふふふ、ありがとう。でもね、ノゾミままはもうぱぱ上のお嫁さんだから、シリウスちゃんのお嫁さんにはなれないの」


「わぅ、知っているよ。でもそれくらいには好きってことを知っていてほしかったの。わたし、ノゾミままのこと大好きだもん。これからもシリウスのままでいてね」


 シリウスは嬉しそうに笑っていた。


 告白ではなく、ままとしてこれからもいてほしいというお願いだったみたいだね。


 まったくうちの娘のかわいさと来たら。


 しかしこれはこれでどうなんだろうね。


 というかアルトリアが知ったら地味に荒れそうで怖いです、はい。


 そもそもシリウスがコスプレをしていたのを知ったら、確実に荒れるよね、アルトリアは。


「どうして私がいないときに、シリウスちゃんにかわいい恰好をさせちゃうんですか!?」


 そう言って涙目になって睨み付けて来るアルトリアの姿がありありと思い浮かびます。


 まぁ俺も希望が俺の知らないところでかわいい恰好をしていると聞いたら、そうなるから気持ちはわかります。


「まぁ、シリウスちゃんの気持ちがわかったところで、メニュー開発の続きですね。午後の時間が始まるまでそう余裕はありませんから」


 レアさんの言う通り、午後の時間まではそう余裕はなかった。


 それはつまりメニュー開発の猶予もそうあるわけじゃないってことでもあった。


 そうして休憩兼仕込みの時間一杯を使ってメニュー開発は続き、どうにか一応の形になったところで午後の時間が始まった。


 その結果は午前以上の大盛況になったとだけ言えばいいかな? 


 とにかく今日も大盛況のまま営業はつつがなく終わりを告げてくれたんだ。

 これにて十一月の更新祭りは終了です。疲れましたわぁ~←しみじみ

 明日は十六時更新になります。


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