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Act3-14 マバの正体?

 本日二話目です。

 二十時に間に合わなかったΣ

「エンヴィー」の漁港には、多くの漁船が停泊していた。


 漁船って言うと、白い船体に「○○丸」という刺繍入りの旗がはためくイメージがあるけれど、それはあくまでも日本でのイメージだった。


 ここ異世界では、木造の船だった。


 ただ木造だけど、かなり大きな船だ。


 ガレオン船っていうのかな? でもそんなに大きな船体だと漁船にはかえって不向きな気がするけれど、その理由はマバにあるんだ。


「これがマバですよ」


 ククルさんの案内で「エンヴィー」で一番大きな漁港に来た俺たちの目の前には、水揚げされた大量のマバがいた。


 人の力ではとても持ち上げることができそうにない巨大で重量感のある体はマグロを思わせる。


 そうデカくて重そうなのは、たしかにマグロっぽいんだ。そうデカくて重そうなところであれば、だ。


「……ねぇ、希望」


「うん、言わなくてもわかるよ」


 俺と希望の意見は見事に一致している。


 ククルさんの執務室で食べた煮つけを見たときから思ってはいたんだけど、どうやら大当たりだった。


「「完全にサバじゃん、これ」」


 そう、俺と希望の前で大量に水揚げされていくマバは、どう見てもサバだった。


 顔と体の形とか、皮の色とかはどう見てもサバだ。お世辞でもマグロには見えない。


 だけど食べた味はサバではなく、マグロだったよ。


 サバというか、青魚特有の癖はあまり感じられなかった。


 まぁ煮つけだったからごまかせたというのもあるかもしれないけれど、ご飯が欲しくなる味だったし、たしかにいい感じの脂だった。


 肉によく似ていて俺的には満足だったが、希望はちょっと脂がくどいと言っていたけれど、まずいとは言っていなかった。


 でも見た目が完全にサバの煮つけだったから、最初に口にしたときは舌が混乱したよ。


 見た目サバなのに味はマグロなんだもん。混乱せずにはいられませんって。


 まぁマグロはああ見えてサバ科の魚だから、サバっぽい見た目なのにマグロの味っていうのもあながちおかしいとは言えないかもしれない。


 ……嘘です。サバはサバ、マグロはマグロの味わいがあってこそだと俺は思います。


 こんなハイブリッド魚はどうかと思うよ。


 いや、美味しかったよ? 


 たしかに美味しかったけれど、それでも見た目サバで味はマグロっていうのは、どうかと思うんだ。


 そんなハイブリッドはどうかと思うのよ、俺。


 希望も同意見だった。


 でも実際、本当にサバと似ているとは限らないと希望が言ってくれたから、こうして漁港にまでマバを見に来たんだけど、みごとにサバでした。


 お世辞抜きでもサバにしか見えません。でも味はマグロ。うん、これいかにだね。


「さすがは異世界だね。サバなのにマグロとか。意味わからないよ」


 希望が苦笑いしていた。苦笑いしつつも、目はちょっと鋭い。


 料理上手でかつ調理大好きな希望にとってみれば、マバは腕の振るい甲斐のある魚だった。


 まぁ実際は魚じゃないんだけど、こいつら。


「まぁ、この世界には魔物がいっぱいいるから。こういうのがいてもおかしくはないんじゃないかな?


 そう、マバは見た目サバで味はマグロ。


 でも実際は魔物という、どこまでハイブリッドすれば気がすむんだという存在だった。


 そして魔物だからこそ、この世界の漁船はとことんデカいわけだ。


 マバ自体は大して強い魔物じゃない。人間を襲って食べるわけじゃない。


 ただ困った習性があるんだよ、こいつら。


 聞く話によると光を見るとそこに集中して飛んでくるんだ。


 あくまでも夜に光を見るとね? 昼間は大人しいんだけど、夜に光を見るとそこに向かって一心不乱に突撃をかますのよ、こいつら。


 この巨体で船だろうとなんだろうと突撃をかましてくれるんですよ。


 しかも一匹であればまだいいけれど、こいつらも群れを作るわけでして。


 つまりマグロを思わせる巨体のサバが群れ単位で延々と突撃をし続けるという、どこぞの弾幕ゲーを思わせる状況になるらしい。


 光を見たら突撃をかますとか、ダツかよってツッコミましたよ。


 見た目サバで味はマグロ。


 でも実際は魔物だけど、習性はダツ。


 もはやなにも言うまい。


 まぁそんなわけでマバの襲撃を耐えるためには、日本の漁船みたく小型な船体ではダメだった。


 大きくて頑丈な船体でなければ、この海を漁師として生き抜くことはできないってことで、この世界の漁船はガレオン船じみた巨大な船になるのが一般的らしい。


 俺としては巨大な船の方がよりマバの襲撃を受けそうな気がするけれど、実際のところはそうではないみたい。


 マバはその巨体のくせして、かなり臆病でガレオン船レベルの巨大船にはあまり近づかないらしいんだ。あくまでも昼間であれば。


 それにこの世界の海には、マバ以外にも多くの魔物が海に住んでいる。


 海の生物は巨大化しやすいっていうのは、この世界でも同じで、魔物も当然そういう傾向のようだ。


 具体的にはダークネスウルフレベルの大きさの魔物なんて海にはゴロゴロいる。


 むしろダークネスウルフレベルの大きさなんて、産まれたばかりの大きさだとか意味のわからないことを言われたよ。


 そんな海の魔物の中でマバは最下位に位置する弱い魔物だった。


 ぶっちゃけて言えば、小さな海老や貝どころか植物プランクトンレベル並の位置にいるみたいで、よく骨だけになったマバが海面を漂っているのを見かけるらしい。


 その分マバは数が多い。特に「蛇の王国」近海には大量のマバが生息している。


 トン単位で毎日水揚げされるっていうのはそういうことだ。


 ただ漁師さんたちにとっては、マバは利益率の低い魚で、ぶっちゃけ外道らしい。


 なのにトン単位で水揚げするほどに獲れてしまう。


 ちなみにトン単位で水揚げしても、ほぼ儲けはなし。


 かと言って海に捨てるとそこへマバよりも強い魔物が来てしまう。


 下手したらそこに棲みついてしまうので、捨てるに捨てられない。


 加えてほかの魚や魔物を獲るための仕掛けになぜか引っかかるうえに、その仕掛けをよく壊してしまうことから漁師泣かせの魔物と恐れられている。


 でも利益率が低くても、それだけ獲れれば食べるのには困らないじゃないかと言うと、実はそうでもない。


 なにせマバは味がマグロだ。


 しかも脂の量もマグロレベル。


 昔バラエティー番組で見たけれど、マグロの脂。特に大トロの脂はサラダ油で換算すると、100グラムあたりでサラダ油が十二杯くらいだったかな? 


 ちょっとうろ覚えだけど、とんでもなく脂の量が多い魚だった。


 だからこそ江戸時代では、マグロは下魚として敬遠され、捨てられていたという話だし。


 そしてそれはこの世界でも同じだ。あまりにも脂の量が多すぎて、毎日は食べられない。


 でも毎日トン単位で獲れてしまうから食べなきゃいけない。


 でも食べられてもせいぜい数キロレベル。


 トン単位なんて食べられるわけもなく、結果どんどんとマバは溜まっていく。


 水の魔法で冷凍し、アイテムボックスで保管するという方法でどうにか対処しているみたいだけど、根本的な解決にはなっていない。


 おかげで「蛇の王国」では深刻なマバ問題に頭を抱えざるを得ないことになっていた。


 エンヴィーさんがコアルスさんとその一族の皆さんで消費するようにというかなり強引な一計を案じたおかげで、少しはましになったみたいだけど、それでも深刻な問題になっていることには変わらない。


「味は美味しいと思います。ですが、量が量なので食べきれるものではないのですよ」


 ククルさんが次々に水揚げされていくマバを見上げながらため息を吐いていた。


 すでに漁港の中はマバで満杯になっていて、次から次へと水の魔法で冷凍されてはアイテムボックスで保管されていた。


 それでも追い付かないほどにマバは水揚げされていく。


「……これはゴンさんたちも動員されるわな。


「コアルスさんだけじゃ無理だよ」


 水揚げされていくマバを俺と希望は呆然と眺めることしかできなかった。


 結局その日水揚げされたマバは百トンの大台を超えるという、いらない快挙を達成してしまったらしい。

 仮に一匹百キロとした場合、百トンになると、だいたい千匹くらいの水揚げですね。うん、普通に絶望だわ←しみじみ

 続きは今夜零時です。

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