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Act2-ex-5 シリウスの試練~家庭に居場所がないってこういうことなんですね(Byカレン~

 昨日は更新できず申し訳なかったです。

 今後はないようにしたいですが、体調だからなぁ←汗

 さて、今回で第二章はおしまいですが、締まらないサブタイです←笑

 シリウスの声が聞こえてきた。


 アルトリアと希望が声の聞こえてきた方を見やる。


 俺もふたりの後を追うようにして見つめた。


 暗闇の向こう側から小柄な人影が見えていた。


 よく見れば犬のような耳と尻尾がある。


 明らかにシリウスだった。


「シリウスちゃん!」


 ノゾミが叫ぶと、シリウスは元気よく「わぅ!」と頷いた。


 そして暗闇を切り裂ようにしてシリウスが駆け寄ってきた。


 シリウスは笑っていた。


 笑いながらノゾミままと言っていた。


 アルトリアは自分の名前を呼ばれなかったことで地味に傷ついているけれど、まぁ、仕方がないのかな?


「おいで、シリウスちゃん」


 希望が腕を開くと、シリウスは「わぅ」と鳴きながら希望の胸に飛び込もうとしたところで、突如希望の前に立ったアルトリアの胸の中に飛び込むことになった。


 いきなりのことに希望と俺は唖然となったね。


 シリウスは不思議そうに「小さい?」とか言っているし。


いやアルトリアの胸も結構なものですけどね? 


 まぁ希望に比べたらボリューム的には劣ってしまうのは否めないけれど。


 それでも小さいはないと思うな、カレンちゃん的には。


「ちょっとアルトリア。いきなり割り込むとか、どういうつもりかな?」


 希望が笑っている。


 ここからでは表情は見えないけれど、声色的には笑っている。


 だが背中には形容しがたないなにかを背負っている。


 うん、まじで怖い。


「さて? なんのことやら?」


 そう言ってシリウスを抱っこするアルトリア。


 シリウスも最初は不思議そうにしていたけれど、アルトリアに抱っこされるのは好きだからか、すぐに嬉しそうに笑ってくれた。


 ああ、娘っていうものはどうしてこうも癒されるんだろうね。


 不思議でなりません。


 もっともいまはそんなことを言っている場合じゃないけれど。


「なんのこともなにもないよね? あなたが私から奪ったシリウスちゃんのことなんだけど?」


「奪った? まるでシリウスちゃんは自分のものだと言っているかのような物言いですね? 「旦那さま」とは両想いだからと言って、調子に乗らないでくださいね? そもそも「旦那さま」と両想い自体がなにかの間違いでしょうし」


「は? あなたと一緒にしないでくれる? 私は「実力」で香恋と両想いになったんだよ。アルトリアみたいに魔眼の力を使ってではないもの」


 そう言って胸を張る希望。


 いや事実ではあるけれど、それは禁句じゃないかな?


 実際、ほらアルトリアの眉間にしわが寄っているし、こめかみが痙攣しているし。


 明らかに怒っているよね? 


 どうしてアルトリアを挑発するようなことをうちの嫁は口にしちゃうのかな?


「ふ、ふふふ、魔眼はたしかに使いましたよ? ただそれでも「旦那さま」と最初にキスしたのは私で──」


「残念。私十年前に香恋とキスしているんだよね」


「な!?」


 アルトリアが動揺した。


 まぁ、無理もないかな。


 なにせキスをしたのは自分が最初だと言い放とうとしたら、即座にカウンターを貰ったのだもの。


 絶妙なカウンターだった。


 あれは確実に効いたね。


 格闘技の試合であれば、膝が笑うとか、ダウンを取られかねないくらいに絶妙なもの。


 そういうところは一心さんにそっくりだよ。


 さすがは従妹だよね。


 実際に希望と組み手をすると五回に一回は負けるくらいには希望は強い。


 ただ体力がないから短期決戦じゃないと勝ち目がないという弱点がある。


 でもそれはあくまでも格闘技の話。


 舌戦の場合、希望はオールマイティにこなせるタイプだ。


 要は長期戦でも短期決戦でもどちらでも輝けるタイプ。


 そもそも舌戦では、希望に勝ったことはないんだよね、俺。


 舌戦ではいつも負けてしまう。


 そのくらいに希望は舌戦ではかなりの強者だった。


 単純に俺が舌戦に弱いというだけのことかもしれないけれど。


「さぁて? 胸でも負けて、香恋からの愛情でも負けて、そのうえキスした時期でも負けたアルトリアちゃん?」


「……なんですか? 性悪女」


「誰が性悪女か。とにかく、シリウスちゃんを返してくれる?」


「……ダメです。シリウスちゃんは譲れません」


 そう言ってシリウスを遠ざけるために、体を反らすアルトリア。


 そんなアルトリアの行動を読んでいたのか、希望はアルトリアが反らした方へと先回りし、そして──。


「はい、シリウスちゃん、ゲットです」


「あぁ、シリウスちゃんまでぇ!?」


 アルトリアが叫ぶ。けれど希望は気にすることなく、シリウスのおでこにキスをした。


 同時にアルトリアから盛大になにかがブチ切れる音が聞こえた。


「ノゾミぃぃぃ!」


 アルトリアがこれでもかという声量で叫んでいた。


 けれど希望は我関さずでシリウスのおでこにキスをしている。


 だから、アルトリアを挑発しないでとは言えない。


 言ったらなんだかとばっちりが──。


「「旦那さま」!」


 アルトリアが血走った眼で俺を見つめてきました。普通に怖いです。


「ノゾミをなんとかしてください!」


「いや、なんとかと言われましてもですね」


「アルトリアったら怖いなぁ。もっと気楽にしないとシリウスちゃんが怖がっちゃうでしょう?」


 希望はアルトリアをさらに挑発するようなことを言ってくれる。


 いや、だからなんでそんな挑発ばかりするんですか? 


 希望さんや。あなた、そんなキャラじゃないでしょうに。


「挑発なんてしていないよ? これは私とアルトリアなりの友情のたしかめ方だよ?」


 明らかに方便なことを笑顔で言い出す希望。


 こんなとんでも友情のたしかめ方なんてあるわけがないだろうに。


 でも惚れたら負けと言うように、希望の笑顔を見ていたらなにも言えませんです、はい。


 そもそもアルトリアに対してもなにも言えないわけですけどね? 


 俺って結構ヘタレさん? 


 いやいや、そんなバカな。


 俺は自称狼さんだぜ? ヘタレなわけが──。


「「旦那さま」! いつものヘタレさんな部分を出している場合じゃないですよ、いまは!」


 いや、だから俺はヘタレじゃ──。


「そうだよ、香恋? 私はヘタレな香恋も大好きだけど、いまはびしっと言ってほしいかな? 言ってくれれば、香恋の好きなことなんでもしてあげるよ?」


 希望は頬を少し赤らめてそんなことを言ってくれた。


 好きなことってなにさ? 


 具体的になにをしてくれんのよと言いたい。


 ええ、言いたいです。でも言えない。


 だってアルトリアの目が血の色になっているもんよ。


 すでに吸血鬼モードになっているもんよ。なにも言えないよ。


 しかし俺って、公認のヘタレさんなんだね。心が折れそうです。


「聞いておられるのですか!? ヘタレさんな部分を出している場合ではないのですよ、「旦那さま」!」


「ほら、香恋。ちゃんと言って? アルトリアは怒りすぎだって。ヘタレさんになるのはそれからだよ?」


 でも、心が折れそうな俺に追撃を仕掛けてくれる嫁たち。


 その言葉のひとつひとつが、俺の心を抉っていることに気づいていますか、キミタチ?


「「旦那さま」!」


「もう、香恋ってば!」


「「ヘタレさんになっている場合じゃないの(ないのですよ)!」」


 ついには希望にまで怒られてしまう俺。


 おかしいな? 俺ってば、「旦那さま」ですよね? 


 なんでその「旦那さま」の心を嫁たちは折りに来ているんですかね?


 泣くよ? 


 しまいには泣くよ? 


 泣いちゃうよ? 


 カレンちゃん、泣いちゃいますよ? 


 なんて言っても嫁たちは聞いてくれやしないんでしょうけども。


「わぅわぅ、ぱぱ上はやっぱりヘタレさんだな」


 シリウスが離れたところでしみじみと頷いてくれる。


 待とうか、シリウスちゃんや。


 なんだよ? やっぱりって。


 やっぱりってなんだよ? 


 というかさ、いつの間に離れたんだ? 


 そんなシリウスにファフニールさまが穏やかに笑いながら話しかけていた。


「まぁ、そなたの父君がヘタレであるのは、どうしようもないようだな。さて、シリウスとやら、少し話をさせては貰えるかね?」


「わぅ? わたしと?」


「あぁ、そなたとだ。少し近くに寄りなさい」


「わぅ!」


 シリウスはファフニールさまのそばに寄っていく。


 シリウスちゃんや。いくらファフニールさまのお言葉でもさ、そこはぱぱ上を助けたいからって言うべきでしょう? 


 なぜにぱぱ上を放置するのよ? 


 ぱぱ上、いまままとまま上たちにいじめを──。


「「いじめじゃないんですけど?」」


 揃ってにこりと笑ってくれる希望とアルトリア。


 キミタチ、本当にこういうときは気が合うよね? 


 できたら普段からそうしてくれません? 


 そして譲り合いの精神をですね。


「「そんなことよりも、さっさとアルトリア(ノゾミ)に言ってよ、香恋(「旦那さま」)!」」



希望とアルトリアの声が重なるのを聞きつつ、結局俺はなにも言えないまま、ふたりに心を抉られ続けるのだった。

 次回から第三章が始まります。

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