Act2-67 幼なじみな嫁が天然です(Byカレン
唇が触れている。
希望とまたキスをしている。
昨日の夜に散々したのだけど、好きな人とキスをするのはいいものだね。
……告白どころか、奮い立たせるための勇気さえもありませんけどね。
しかしなんでまたキスをされましたかね?
いやキスをしてくれるのは嬉しいよ?
ただ意味がわからないだけ。
なにせいきなりだったもんよ。
どうしてキスされたのかもわからないもんよ。
……うん、ちょっと混乱していますね、俺。
とりあえず落ち着こうか。
まずは深呼吸から、ってできないよ!?
キスしているもん!
仮にできたとしても、希望の唇が柔らかいし、まつげ長くてきれいだし、凶悪なブツが見えるしで、とてもじゃないけど落ち着けないよ!
しかし本当に大きいよね。
なにを食えばこんなに大きくなるのかな?
試しに触ってみようかな。
うん。なにが試しなのかはまるでわからないけど、とりあえず触ってみます。
そっと手を伸ばしてみるが、手の甲をつねられました。地味に痛いです。
「……いきなりなにをしようとしているの、あんたは」
希望は呆れていました。
いきなり胸に触ろうとしたのは、俺の落ち度だ。
うん、それは認めるよ。たださぁ。
「それを言うのであれば、希望もだろう? い、いきなりキスしてくるし」
嬉しいか嬉しくないかで言えば、もちろん嬉しいよ?
嬉しくて小躍りしてしまいそうなほどですよ?
だけどさ、いきなりキスしてきたのは事実なんだし、胸を触るくらい構わないと思うんですよね、カレンちゃんとしては。
「あんたのはただのスケベ心からの行動でしょう? 私はれっきとした理由があるもん」
希望は胸を張りながら言い放つ。胸を張るのはいいんだが、胸を張るとふるふると震えているんですが、それはどうにかした方がいいんじゃないかな?
むしろ誘っているよね。こ
れは誘われていると思ってもいいんじゃないかなってカレンちゃんは思うのです。
そう、いわば据え膳って奴ですね。
……発想が童貞さんみたいだけど、実際そういうことをしたことがないのだから、あまり間違ってはいないね。俺は女だから童貞とは言わないけれども。
しかし、れっきとした理由ね。
キスをする理由かぁ。
いったいどんな理由なのかな。
皆目見当もつかないんだけども。
「理由ってなんだよ?」
「だからさっきから言っているじゃん。楽に言葉を憶える方法だよ」
そう言って希望はまた俺にキスをしてきた。
えっと、カレンちゃん、意味がわからないですね。
なんで? なんでキスすることが言葉を憶えることと繋がるの?
意味がわからない。そもそもそれって=になるの?
初耳すぎてぽかーんだよ。
いったいどうしたらキス=言葉を憶えられるっていう図式になっているのかが、俺にはさっぱりわかりません。
「え、えっと?」
「この世界の言葉で話しかけて?」
「へ?」
「ピロートークをすると外国語は憶えやすいって話だから」
頬を赤らめながら、希望はそんなことを言ってくれました。
うん、たしかにそういう話であれば聞いたことはあるね。
でも、あれは要するに恋人と会話をするために頑張って憶えようとするってことなんだと俺は思うのだけど。
要は愛が言語を超えるって感じじゃないかと思うわけなんですが。
それにネットで試しに調べてみたところ、言い回しとかそういうのは憶えやすいみたいだけど、不自由なく英語を使えるようになるってわけじゃないみたいだったし。
たぶん、ピロートークをすると~っていうのは、あくまでもある程度のレベルまでってことなんだと思う。
日常会話が使えるようになるってだけであって、外国語をマスターしたってわけじゃないと思うんだよね。
ただどうも希望はそのあたりのことを鵜呑みにしちゃっているのかもしれない。
ピロートークさえすればこの世界の言語を憶えていけるって思っているんだと思う。
うん、間違いだとは言わないよ?
そういう部分も無きにしも非ずだとは思うし。
ただあくまでも一定のレベルまで。
たぶん、かなりゆっくりとした会話であれば、どうにかできるようになるとは思うけれど、いままでみたくアルトリアと言い争いはできないはず。
仮にできるようになっても、時間はかかると思うんだよね。
というかさ、それを言うのであればピロートークでも同じことが言えると思うんですよね。
一回だけでこの世界の言葉が話せるようになるわけがないし。
それこそ何度もしてようやくってところだと思う。
そのあたりのことを希望はちゃんと考えているのかな?
単純にピロートークすれば、あっさりと憶えられるとか考えているんじゃないかな?
希望って英語があまり得意じゃなかったからなぁ。
俺だってそこまで得意ではなかったけれど、希望ほど完全に相性が悪いというほどではなかったよ。
だからこそ思うんだよね。
希望が言語を憶えるのが面倒になって、聞きかじった知識を実践しようとしているだけじゃないかなってさ。
「ほら、ちゃんとこの世界の言葉で話しかけてきてよ」
希望は期待に満ちた顔をしている。
どうやら俺の推測通りみたい。
……普段はいろいろと気が回るいい嫁なんだけど、どうしてこういうことに関しては残念な子になっちゃいますかね。
「……あのさ、希望。ひとついい?」
「なぁに?」
「ピロートークするからと言って、確実に憶えられるわけじゃないよ?」
はっきりと言ってあげると、「え?」と言って固まってしまう希望。
ああ、やっぱりか。
どうやら本当に面倒すぎたからこその強硬手段を選んだみたいだね。
そういうところもかわいいなと思ってしまうあたり、相当に俺は希望にやられちゃっているみたいですね、はい。
「で、でも、そういう話はわりと」
「わりと聞くことだけどさ、あくまでも一定のレベルまでってらしいよ? せいぜい日常会話をゆっくりと話せるようになるってことくらいでって、不自由なく会話できるレベルで習得できるわけじゃないって話だもの」
「そ、そうなの?」
「そうみたいだよ? あと一回こっきりじゃ憶えないって」
「え?」
「それこそ何度もしないと無理だよ。だいたいさ、どんなことでも一回で憶えられれば、そもそも努力なんてしないだろう?」
「そ、それは」
希望の目が泳いでいる。
どうやらそこまで考えていなかったみたいだ。
ピロートークはお手軽に外国語を憶えられるってことを鵜呑みにしすぎた典型だね。
それにさ、希望ってばわかっているのかな?
「それにさ、希望わかって言っているの?」
「な、なにを?」
「ピロートークって要はそういうことをした後の会話だよ? たしかにキスもするけれど、キスだけをするのはピロートークとは言わないよ、たぶん」
希望の表情が再び固まりました。
あー、もうどうしてうちの嫁はこうも抜けているかなぁ。
そういうところも愛らしいと思う俺は、どうしようもないのかもしれない。
「で? どうすんの?」
じっと希望を見つめると、希望が慌てて離れようとする。
けれど逃がすか。
離れようとする希望を逆に抱き寄せる。
がたりと希望が座っていた椅子が倒れていく。
が構わずに抱きしめるというか、そっとテーブルの上に組み伏した。
「か、香恋? 冗談は」
希望の頬が染まっている。
耳まで赤くなっている。
恥ずかしいからだと思う。
それがどういう意味なのかは、できれば俺と同じ気持ちであればいいんだけど。
というか、いま思うにかなり大胆なことをしているよね、俺も。
「冗談でこんなことをするかな? 希望の幼なじみの鈴木香恋は」
「……わりとするけれど?」
我ながら殺し文句のつもりだったのに、あっさりと返されてしまった。
ああ、どうして以前の俺は冗談半分でバカなことをしてしまっていたかな。
自分のことではあるけれど、自分を恨みたい気分だよ。
「と、とにかく。冗談ではこんなことをする気はないよ」
こほんと咳ばらいをして希望を見つめる。
希望が顔を逸らそうとする。
だが、壁ドンの要領でテーブルに手を着く。
ちょうど希望の顏の脇あたりに手をつき、希望を見つめる。
「顔を逸らしていいって言った?」
「……意地悪だよね」
「意地悪でいいよ」
「ばか」
「バカでもいい。希望がピロートークをお望みとあれば、答えるのも吝かじゃないよ」
「……そんなことを言って香恋がしたいだけじゃないの?」
「そうとも言うね」
実際そういうことをしたいとは思うよ。
できれば希望とがいい。
希望もそう思ってくれているのであればいいのだけど。
「……私のこと好き?」
「好き」
「どういう意味で?」
希望の瞳が濡れている。
一瞬アルトリアの魅了の魔眼を思い出しそうになったけれど、いま思えばあれはどこかおかしな感覚に陥らせてくれていた。
それまでは普通だったのが、あれを見たら堪らなくなる。
なんというか、狂ってしまいそうなほどの激情で自分を抑えきれなくなってしまうんだ。
希望の目はそういうわけじゃない。
けれど似たところはある。
狂ってしまいそうなほどではない。けれど──。
「抱きたいって。同性の君を抱きたいと思うくらいに好き」
「……いきなり口調を変えるな、バカ香恋」
希望の顏がいままで以上に赤く染まる。
けれどもう自分を止めることはできない。
狂ってしまいそうなほどの激情じゃない。
ただ希望への気持ちが溢れていく。
抑えきれないほどの想いが俺を突き動かしていく。
突き動かされるがままに俺は希望に顔を近づけていき、そっと希望の服に手をかけた。
なんだかR指定になりそうなラストですが、そうはならないので←サムズアップ
ちなみに実際ピロートークで憶えられるのはある一定のラインまでみたいですね。




