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Act0-26 お年頃の女性陣(一人除く)

活動報告でも書きますが、そのうち、タイトルやあらすじを少し弄ることにします。

P.S.アクセスが、1200突破しました。いつもありがとうございます。

 水色の部屋だった。


 王宮の奥にあるかなり広い部屋。その部屋にあるものは、大半が水色だけど、時折白が混ざる。そんな配色の部屋だった。その色はまるで空を思わせてくれる。そんな部屋に俺と勇ちゃんたちは通されていた。


 この部屋はレアさんの私室らしい。普通は応接室とかに通されるようなものだと思うのだけど、私的な話でありつつ、重要な話でもあるので、警備が厳重なレアさんの私室を選んだという話だった。


 いくら警備が厳重でも、私室を選ぶかなとは思うけれど、当のレアさんがそれでいいというのだから、それ以上俺にはなにも言えなかった。いつもこうなのかなとは思ったけれど、勇ちゃんたちもレアさんの私室に通されたのは初めてのようで、物珍しそうに部屋を見回していた。


「広い部屋だなぁ」


 レアさんの部屋は、数十人くらいは入れるんじゃないかと思えるような広さなうえに、ものは散らかっておらず、すべて整理整頓されていて、とても清潔感があった。レアさんの残り香なのか、嗅いだことのある香りを感じられた。まるですぐそばにレアさんがいるかのようだった。


「王さまって、やっぱりすごいんだなあ」


「そうだね。ドラっちの私室に入ったことはあるけれど、こことは趣がまるで違っていたよ。ドラっちの部屋は、なんというか、無骨な感じで、男の部屋って感じだった。でも、ここは女性らしい部屋って感じだね」


 そう言って、勇ちゃんは、きょろきょろとあたりを見回している。他の皆さんと似ているようで、まるで違う。というか、なにかを物色しているかのように思えるのは、俺の気のせいだろうか。まぁ、気のせいだろう。相手は王さまだし、いくら女好きの勇ちゃんでも──。


「ねぇ。コアコア、エンエンの服とか下着とかはどこに、げふっ」


 訂正。勇ちゃんは、どこまで行っても勇ちゃんだった。まぁ、そうしてひとり、バカなことをとても真剣な顔で言い出した変態はいたけれど、特に問題なく、俺たちはレアさんの私室で過ごすことになった。その相手をコアルスさんはしてくれていた。あの体でどうやってするんだろうと、王宮に入るまでは思っていたけれど、その疑問はすぐに解消されることになった。


「どうぞ、カレンちゃんさま」


 かぐわしい香りが、鼻腔をくすぐった。


 ひと言で言える言葉であり、とても安っぽく聞こえてしまう言葉でもある。もっと言えば、使い古された言葉とも言えるかもしれない。


 ただ、これ以上明確に言える言葉もそうそうなかった。そんな香りを楽しみつつ、俺は手元のティーカップの中に注がれた琥珀色のそれをそっと口に含んだ。わずかな渋みとともに特有の香りが広がっていく。


「……うん、美味しい」


「お褒めにいただき光栄です。カレンちゃんさま」


 胸に手を当てて、深々と一礼するのは、白い髪の女性だった。ただ女性であるのに、着ているのは執事服だった。後ろ姿だけを見れば、男性っぽく見えるけれど、正面から見れば、完全に女性だった。一部問題はあるが。


 あとメイドさんらしき人もいたけれど、服装はエプロンドレスだった。むろん、某電気街にいるようなミニスカのメイドさんではなく、丈の長いスカートの、クラシカルなエプロンドレスを身に着けた、正統派のメイドさんだった。そう、正統派のメイドさんがいた。重要なことなので、二度言ってみたが、うん、あれには感動した。


 というか、この世界でも執事服やらエプロンドレスってあるものなんだな。まぁ、執事服にしろ、エプロンドレスにしろ、フォーマルでもありつつ、機能美を追求した形でもあるから、この世界にあっても別に不思議ではなかった。むしろ当然と言っていいのだろう。


「おかわりはいかがですか?」


「あ、はい。ではいただきます」


「では、失礼をして」


 飲み干したティーカップを渡すと、女性は慣れた手つきで紅茶を注いでくれた。不思議と落ち着けた。が、すぐにそれは消え失せてしまう。


「どうぞ、カレンちゃんさま」


 女性はにこりと笑い、縦に裂けた瞳孔で俺を見つめる。まぁ、うん。これが問題だった。爬虫類特有の冷たい目。見た目は完全に女性なのだけど、目だけが怖い。物腰も柔らかく、笑顔はとてもきれいなのだけど、目が怖い。温度を感じられない瞳がただただ怖かった。


 とはいえ、この人が俺を食べようとしているとか思ってはいない。かと言ってなにか企んでいるわけでもない。単純に、種族というか、人の姿になっても目だけは変えられないというだけのことなのだけど、それだけのことが、俺の恐怖を煽ってくれていた。


「ありとうございます、コアルスさん」


 そう、目の前にいるのは、レアさんのペットであるケツァールコアトルのコアルスさんだ。コアルスさんが人の姿になったのが、いま目の前にいる白い髪の女性だった。口ぶりからして、女性とは思っていたけれど、かなりの美人さんだった。歌劇団とかにいてもおかしくないレベルだ。執事服がよく似合うことが、より一層にそう思わせてくれる。


「コアコア、俺にもおかわり」


「はい、少々お待ちください、勇ちゃんさま」


 勇ちゃんがなれなれしくコアルスさんに声をかける。特にコアルスさんの容姿については気にしていないようだ。それはアルゴさん他の勇ちゃんのパーティー全員が同じだった。特にクリスティナさんに至っては──。


「コアルスさんの髪って相変わらずきれいよね。どうやって維持しているの?」


「そうですね。人化の際には、手入れをよくしていますね。何分、私の主はどうにも自由な方ですので、その分私の心労が大きいのです。手入れができるときには、きっちりとしておかないとすぐに傷んでしまいますから」


「ああ、心労って髪を傷ませるからね」


「ええ、まったくです。なのできっちりと手入れをしています。具体的には、植物系の油脂に少々のマバの油を混ぜたものなどを」


「え? マバの油を?」


「ええ、意外かもしれませんが、私の髪にはマバの油と相性がいいようですので。クリスティナさまも試されますか?」


「そうね。少し貰えるかな? あ、でもちょっと懐事情が」


「大丈夫ですよ。私的に使っているものですし、マバは、大量にありますので」


「……そうね。じゃ、貰ってもいいかな?」


「はい、後程ご用意いたします」


 という女子的な会話を弾ませていた。しかし髪の手入れねぇ。したことがないな、俺は。っていうか、なんで女って奴は、すぐに髪の手入れだの、肌の手入れだのとしたがるのか、マジでわからない。

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