Act1-85 霊草エリキサ その二十一
閲覧ちゅーいです
表記おかしくね、と思われても、あえてスルーしてください。
「……それで、アルトリアはなんのようなのかな?」
震える身体に鞭を打ちながら、アルトリアを見やる。アルトリアは口元を拭いながら、鼻を鳴らして、顔を背けた。お怒りは、まだ治まらないようだ。
まぁ、告白を期待していたら、まさかのセクハラであれば、誰だって怒っちゃうよね。
ちなみにセクハラの代償は、吸血になった。いつもとは違って、罵倒つきだったけど。
「「旦那さま」のヘタレぇ。やることをちゃんとしてくれない「旦那さま」なんて、ヘタレのカレンを略して、ヘレンで十分なのぉ!」
血の瞳を、怒りで血走らせながら、アルトリアは、たっぷりと吸血してくれました。もちろん、恒例の致死量ギリギリです。
アルトリアは怒るとすぐこれだから困ってしまうね。そういうところも愛らしいと思うあたり、俺は相当にアルトリアにやられてしまっているのだろう。
おかげで、うまく体が動かないと来たもんだ。もうないとは思うけれど、襲撃があったらやばいな。まぁ、いまはそんなことよりもアルトリアの用事を聞こうか。話してくれればだけど。
「用事があったから来ました。ヘレンギルドマスター」
頬を膨らましながら、アルトリアは俺を見ようとしない。これは相当にお怒りのようだ。
わかるけどさ、俺のところに来たってことは、業務連絡なのだろうから、そろそろ許してほしいものだよ。
というか、業務連絡は個人の感情云々はなしにしてほしいのだけど、そんなことを言っても、アルトリアはヘタレを連呼するだけだろうなぁ。
実際にヘタレのカレンを略した蔑称で呼んでくれているもの。俺はヘタレじゃないのに。
「あの、俺はカレンで」
「セクハラでごまかす、ヘタレなカレンギルドマスターの方がよろしいですか?」
「……ヘレンで大丈夫です」
へタレなカレンは、やめてほしかったけど、やらかしたことを踏まえると、いいわけできません。
まぁ、ヘレンという名前の人もいないわけじゃないから、問題はない。それを蔑称と気づかれなければいいだけのことだもの。
ただ、今後アルトリアは、俺がヘタレたら、まず間違いなく、人前で呼ぶだろうね。そうなれば、ヘレンが「ヘタレのカレン」の略であることが広回るのは、時間の問題だ。
釘を指したいところだけど、へたなことは言えない。イニシアチブを握られたのは、ほかならぬ俺の方なのだから。
俺にできるのは、アルトリアが、人前でヘレンと呼ばないことを祈るだけだ。
な、情けなくないもん! アルトリアには勝てないだけだもん! 毅兄貴が久美さんに勝てないのと同じだもん! 尻に敷かれているだけさ!
「ゴンさまから、ヘレンギルドマスターにお伝えしてほしいとのことで」
アルトリアはまだ怒りが治まっていないようで、頬を膨らましていた。そういうところも、かわいいと思うけど、いまはゴンさんからの伝言の方が優先したい。アルトリアには、悪いと思うけどさ。
「ゴンさんが?」
「はい。風さまがご帰還なされたとお伝えしてほしいとのことです。それでおわかりになると言われておりました」
風さま。古竜の一頭が帰ってきたということか。
「ゴンさんはいま?」
「中庭でお待ちしているそうですよ。デートですか。いい御身分ですよね」
アルトリアは拗ねたように言う。怒りは徐々に治まりつつあるけれど、今度は拗ね始めてしまったみたいだ。
まったく、アルトリアは。こういうところがかわいいんだよね。苦笑いしつつ、俺はベッドから上半身を起したいつもであれば、ネックスプリングで起き上がれるのだけど、今日はそんな余力などあるわけもない。ほかならぬアルトリアのおかげで余力を奪われてしまっているのだから。
だけど余力がなくても、やれることはある。
ベッド脇で顔を背けるアルトリアの腕を掴み、ベッドに引き倒す。
アルトリアが小さな悲鳴を上げるけれど、怪我をさせるつもりはない。
引き倒しながら、その体をそっと抱きしめた。アルトリアが腕の中で小さく息を呑む。
背けられていた顏がゆっくりと正面を向き、俺を見つめて来る。さっきまでの妖艶さは影も形もない。年相応の姿を見せるアルトリアがいる。
「……だ、抱きしめたら、機嫌が直るとでも? わ、私はそんな安い女じゃありません」
頬を赤らめながら、アルトリアは強気なことを言っている。
けれど目まではごまかせない。その目は、いつものように期待に満ちた光がともっていた。
いや、いつも以上に期待がこもっているように見える。なら、応えよう。
アルトリアをベッドの上に寝かせる。
え、とアルトリアが驚いた顔をしている。でもあえていまはなにも言わない。
なにも言わずに、アルトリアの胸元を少し肌蹴させる。
アルトリアは耳まで真っ赤にしながら、俺を見上げる。濡れた紅い瞳と目が合った。
「ギルド、マスター?」
恐る恐るとアルトリアが口を開いた。
でもまだ答える気はない。なにも言わずに、アルトリアの首筋に顔を埋める。
アルトリアが俺の血を吸うのと同じように、アルトリアの細く、白い首筋に顔を埋め、きれいな形をしている鎖骨にそっと唇を落とした。
アルトリアが小さく息を漏らす。
アルトリアの両手はいつのまにかに、ベッドの上に放りだされていた。シーツを掴むことなく、弱々しく手が開いていた。その両手を掴む。指と指を絡め合わせるようにして、手を掴む。
同時に唇を落としていた鎖骨に、甘く噛みついた。
アルトリアがするような肉を穿つためのものじゃない。
ただそこに「マーキング」をするためだけの行為。「マーキング」が施せる程度の力で、鎖骨に噛みついていく。そのたびに、アルトリアが体を小さく震わせていく。
俺の下で、体を震わせるアルトリアはかわいく、そしてどこまでも淫らだ。
夢中になりそうだ。このままどこまで突き進んでいきたいという欲求に駆られそうになる。それはつまりこの場で、アルトリアとするということになる。
まだ告白さえもろくにしていないというのに、そういうことをしようとは思わない。
だって告白もしていないのに、するということは、つまりアルトリアとそういうことがしたいだけってことになるから。もっと言えば、アルトリアの体が目当てだと言っているようなもの。
そんな遊び人みたいな最低なことをしようとは思わない。
抱くという言葉には、ふたつ意味がある。ひとつは体を抱くということ。もうひとつが心を抱くということ。もうちょっと簡単に言えば、体を愛するということと、心を愛するということと言った方がいいかな。
俺はアルトリアを抱きたいと思っている。もう女同士とかそういうことはどうでもよく、この子を愛したいっと思っている。
でも、それは想いがきちんと通じ合ったうえでのことだ。そういう前提でのことだ。だからいまはまだ抱けない。いま抱けば、俺の想いというのは、アルトリアに欲情しているだけだったということに成り下がってしまう。
だからこそいまは抱けない。まだきちんと自分の想いを伝えられるという自信が抱けない、いまはまだアルトリアの大切なものを貰うわけにはいかない。
ただそのせいで、アルトリアを不安がらせてしまったら、元も子もない。だからこそ、もう一歩だけ前に進もう。決してヘタレだからという意味ではない。
とにかく、アルトリアを不安がらせないためには、こうするしかない。いや、キスでもありかなとは思ったけれど、まだキスをする勇気がないので、うん。ただ考えようによっては、こっちの方がより勇気がいるよね。うん、わかっている。でももうやっちまったものは仕方がない。突っ走るぜ。
「……これでいいかな?」
「……これは、その」
首筋から顔をあげた。アルトリアが自身の鎖骨を擦りながら、意味を考えているようだ。いや、アルトリア自身もわかっているだろうけれど、それでも少し信じられないという気持ちが強いのかもしれない。
「「マーキング」した。アルトリアが、お、俺のものだってことが誰にでもわかるように、した」
やっぱり「そのひと言」は言えず、近い言葉を口にするのが精いっぱいだった。アルトリアは一瞬唖然としていたけれど、すぐに嬉しそうに笑ってくれた。
「本当に、「旦那さま」はヘタレさんですよね。ちゃんと言ってくれたらいいのに」
くすくすと笑うアルトリア。うるさい、と言いつつ、いつもならできないはずのことが、今日はできそうな気がした。顔を近づけると、アルトリアがまぶたを閉じた。ためらうことなく、俺はそのまま顔を近づけていった。
はじめて「そこ」にするそれはすごく甘い味がした。
だから、閲覧ちゅーいと言ったのです←ヲイ
久しぶりに書いたら、疲れました←しみじみ




