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Act1-83 霊草エリキサ その十九

本日一話目です。

 時間は容赦なく過ぎていく。


エリキサを見つけるための手がかりさえ、有力な手がかりさえ見つかることはなかった。


古竜の血をかけるという方法は、あまりにも眉唾すぎた。それにその古竜自体がいないとあれば、俺にはどうすることもできない。


それ以外にも方法がないのかと、アルーサさんに頼んで、いろんな文献を探してみたのだけど、すべて空振りだった。


書かれている内容は、すでにわかっている内容ばかりで、なんの進展もなかった。


情報規制や箝口令が敷かれているわけではないだろうに、なんの進展も得られない。それだけ、エリキサを見つけるのが難しいという証拠だ。


何度も言われているし、何度も口にしたことだが、幻と言われている霊草なのだから、そう簡単に見つかるわけもない。


わかっていたことだが、改めてエリキサの納品が、とんでもない難易度であることを痛感させられた。

その一方で、引っ掛かるものがある。エリキサは、幻の霊草と呼ばれているのは、痛感させられていた。そのことはいい。


ただ、エリキサを見つけたという状況があまりにも似通いすぎている。


状況事態は、さまざまだけど、共通しているのが、危険度の高い魔物の近くに生えていたということ。魔物の種類はさまざまだけど、すべて危険度の高い魔物であることが共通している。具体的に言えば、Cランク以上だ。


Cランク以下の魔物がいくらいようとも、エリキサは見つからない。そのCランクの魔物でも一匹だけでは見つからない。複数、Cランクの魔物が複数いる群れだったり、Cランクの魔物同士が縄張り争いをしていたりすると、見つかることがあるようだ。


だが、Cランクの魔物同士が縄張り争いをするなんて、そう頻繁に起こることじゃない。


Cランクにもなると、知能がかなり高くなる。


縄張り争いをするのは、Cランク以下の魔物がほとんどで、Cランク以上の魔物は、よほどのことがない限りは、同ランクの魔物と戦うことはない。


Cランクの魔物と言うと、中規模の群れのボスになれる個体だ。


だからこそ、余計なことはしない。ほかの群れに手を出して、余計な被害を出すという愚を犯すことはしない。


なかには、余計な被害を出してしまうボスもいる。魔物の種族にもよるが、好戦的な種族は、ほかの群れに手を出してしまいやすい傾向にある。


しかし、まれに被害を出してでも、手を出さねばならないこともある。シリウスの父親のナイトメアウルフがそうだったようにみずからの誇りのために戦うことを選ぶボスもいる。


 俺はナイトメアウルフのことを好ましく思っているけれど、群れのボスとしては失格だったと思っている。


 たしかに俺はナイトメアウルフの親友だというダークネスウルフを殺した。けれどこの世界では、「弱肉強食」という唯一にして、絶対の法がある。その法に従うのであれば、死んだダークネスウルフが弱かったから悪いということになる。そんなことはナイトメアウルフだって承知していたはずだ


 それでもナイトメアウルフは、親友の仇を討ちたかった。それ自体は別に構わない。いくら「弱肉強食」という法があろうとも、それだけですべてを納得できるわけがない。それは人も魔物も変わらない。むしろ常識というものに囚われることのない魔物たちの方が、より感情で動くのだと思う。実際あいつは感情のままに動いてしまい、群れをみずから壊滅においやる結果を作り出してしまった。


 たとえ、そのきっかけを俺みずからが作ったとしても、あの場でナイトメアウルフがするべき判断は、群れ全体で俺を殺しにかかるのではなく、ナイトメアウルフ単体で俺に戦いを挑むことだった。そうすれば、群れが壊滅するなんて結果にはならなかった。敗死するのはナイトメアウルフだけになっていたはずだった。


 しかしあいつはそれを選ばなかった。ナイトメアウルフだけで戦いに挑むよりかは、群れでの戦いに挑んだ方が、より勝率が高いと考えたのだろう。たしかにその考えは間違ってはいない。より確実な勝利に近づける。だが同時に、敗北すれば群れに壊滅的な被害が出るということでもあった。いわば諸刃の剣だった。


 その諸刃の剣を選んだ結果、あいつはシリウス以外のすべてを失ってしまった。たったふたりの標的を倒すためだけに、子供以外のすべてを失う結果になってしまった。その時点で、あいつは群れのボスとしては失格だった。たとえどんなに武人然としていても、どんなに個としての戦力を誇ろうとも、それだけでは群れのボスとしてはやっていけない。そういう意味では、あいつはボスには向いていなかった。


 ただボスとしては向いてはいなかったが、あいつはカリスマ性があった。でなければ、群れ全体で俺とモーレをいつまでも襲い続けるわけがなかった。慕われていなければ、あれほどの被害があってもなお、一切手を緩めることなく、襲い続けられるわけがなかった。慕われるという意味であれば、あいつほどボスとしての素質がある奴もいないのだろう。


 ちょっと脱線してしまったが、通常であれば、Cランクの魔物同士でぶつかり合いなんてものは起こらない。よほどの理由がなければ、高位と呼ばれ始めるCランクの魔物同士での潰し合いなんてものは起こりえないんだ。


 だからこそ、Cランクの魔物同士での潰し合いをどうにかするという依頼なんてものは、そう簡単には飛び込んでは来ない。


 仮にあったとしても、あと数日でその依頼が舞い込んでくるとは限らなかったし、そもそもそいつらを排除できたとしても、その周囲にエリキサがあるとも限らなかった。


 そもそも危険度の高い魔物のそばでばかり、エリキサが見つかるということが、どうにも気になる。


 危険度の高い魔物のそばに生えてくるのか、それとも危険度の高い魔物がエリキサに呼び寄せられているのか。


 前者も後者もちょっと考えづらい。特に後者なんて、食虫植物が虫を引き寄せるための甘い香りを発しているようなもので、ちょっと気味が悪い。


 前者も前者だ。危険度の高い魔物がそばにいるだけで、なんでエリキサが生えて来るというのか。それとも危険度の高い魔物から生じたなにかしらの要因でエリキサが生えて来るってことなのかな。


 どちらにしろ、考えづらい。というか、どちらも荒唐無稽すぎる。


 ただより現実的なのはと言えば、後者だった。さすがに呼びよせているというわけではなく、その逆だ。危険度の高い魔物は、なにかしらの方法でエリキサの在り処を知っているんじゃないかってこと。だからこそ、危険度の高い魔物のそばで、エリキサを見つけることができるんじゃないかと俺は思っている。


 ただそうなると、古竜の血で、エリキサを生み出すっていうのは、真っ赤な嘘ってことになってしまうが、そもそもいくら古竜の血とはいえ、血をかけただけで、どうしてエリキサになるのかがわからない。古竜の血とやらは、なにかしらの特殊な成分でも含んでいるのかって話になってしまう。


 その可能性はなくもないだろうけれど、いまいち頷けない。というか、考えづらいと言った方がいいかな。そもそも古竜の血に含まれている成分ってなんだよってことになる。地球で言えば、主成分は鉄分ってことなる。この世界でもそれは変わらないだろう。あとこの世界で特有のものがあるとすれば──。


「魔力とかかなぁ」


 地球になくて、この世界にあるもの。それは魔法ないしは魔力だ。魔法を使えるのは、この世界の生き物が魔力を持っているからこそだ。その魔力は地球にはないものだ。まぁ、創作物の中では、地球の住人にも魔力を持っている人がいるってことになるけれど、現実的にはそんなことあるわけがなかった。しかしこの世界にはある。だから仮にその魔力が血にも通っていれば、この世界特有のものってことになるわけであり──。


「うん? 血に魔力?」


 血に魔力が通っているというのは、いままで考えたことのないものだ。


 もしだ。もし血に魔力が通っているのであれば、古竜の血には、そうとうな魔力が通っているんじゃないだろうか。ということは、大きな魔力でエリキサに変化するってことなのだろうか。


「でも、同じ血であれば、なんでゴンさんの血では」


 ゴンさんに血を貰ったときは、適量を試験管で貰ってから、庭の雑草にかけた。それで変化はしなかった。もし血に魔力が通っているのであれば、ドラゴンロードであるゴンさんの血にも相応の魔力が通っているはずだ。しかし変化はなかった。


「魔力は関係ないのかな?」


 堂々巡りになっていることを自覚しながら、エリキサについてを考えたが、結局答えはでなかった。

続きは二十時になります。

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