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Act1-82 霊草エリキサ その十八

PV42000突破しました!

いつもありがとうございます!

 意気込んだのはいいものの、エリキサは見つからなかった。


 アルーサさんが集めてくれる情報は、大体が手記による、主観によるものだから、信憑性は薄い。


 ただ考察などもあって、なかなかバカにできない内容だった。そうして集めた情報によると、過去見つけられた人たちも、すべて偶然だったそうだ。


たまたま強い魔物の巣に一本だけ生えていた珍しい草を採取したら、それがエリキサだったとか、とある薬草の群生地に危険度の高い魔物が現れて、どうにか狩猟できたが、怪我を負った仲間の治療に薬草を採取していたら、明らかに色合いが異なる薬草があったから、採取したらエリキサだったとか。


発見方法はさまざまだったが、一番眉唾なのが、傷付いた竜が流した血を浴びた草が、エリキサに変化したというものだ。


 いくらなんでもそれはないだろうと思ったのだけど、試しにゴンさんに血を少し分けてもらい、ギルドの庭の草にかけてみたが、赤く染まっただけで、なにも変わらなかった。


 ゴンさんは、竜は竜でも、古竜と呼ばれる竜の血だったのではないかと言った。


 古竜とは、かつてドラゴンロードを務めた、まだ存命な竜のことで、竜全体の中でも長老と呼ばれる存在のことらしい。


 神獣の「双竜」さまたちよりも偉いのかなと思い、聞いてみたら、すごい勢いで怒られてしまった。


「いいですかぁ! 「双竜」さま方は、我々ドラゴンの始祖たるお方たちなのですよぉ!? いわば、最長老さま方なのです! 普通のドラゴンとは比べようもないほどに、偉いお方たちなのですよぉ!」


 間延びした喋り方で叱られるというレアな体験だった。


 そういう喋り方をする人が怒らないというわけではないよ。ただ、うん、通常時のゴンさんにそこまで怒られるとは思っていなかったんだよね。


 逆に言えば、ゴンさんがそれほどに怒ってしまうくらいに、「双竜」さまたちというのは、別格な存在なのだろう。君子危うきに近寄らずとも言うし、下手なことを言って怒らせるのは得策じゃない。


 それよりも、だ。古竜の血があれば、エリキサを人工的に作り出せる可能性があるってことはわかった。なら、その古竜さんに頼んで、血を分けてもらえれば、エリキサの安定供給だって可能になるかもしれない。そんな皮算用をしていた俺に、ゴンさんは冷水を浴びせかけてくれた。


「ちなみに、古竜さま方は、「竜の王国」にはいらっしゃいませんよぉ?」


 言われた意味をすぐに理解することができなかった。


 え、だって、ここは「竜の王国」でしょう? なのに、なんで竜の長老たる古竜がいないんだろう。それ詐欺に近くないかな。っていうか、詐欺でしょう、それ。


「あー、カレンちゃんさんは、勘違いしているみたいですねぇ。というかぁ、私が勘違いするようなことを言ってしまったのが原因ですかねぇ。古竜さま方は、いまは「竜の王国」にはいらっしゃらないのですよぉ」


「いまは、ってことは、普段はいるってこと?」


「はいぃ。いつもであれば、先代の火さまと水さま、先々代の闇さまと土さま、先々々代の光さまと風さまが、それぞれの山脈の巣にいらっしゃるのですがぁ、いま「翼の王国」でいろいろと面倒事が起きている模様でしてぇ、「翼の王国」と一番近いところに巣があった先々々代の光さまのお言葉で、みなさま、そろって「翼の王国」にいらっしゃっているのですよぉ。なのでぇ、古竜さま方の血をいただくのは、無理ですねぇ」


「いつ帰ってくるとかは、聞いている?」


「さぁ? 相当に面倒なことが起きているそうなのでぇ、いつご帰還になるのかまではぁ、さすがに存じませんねぇ」


 もしかしたらと思っていたのだけど、肩透かしだった。


 まぁ、仮に古竜さんたちの誰かがいたところで、血を分けてくださいと頼んで、景気よく分けてくれるわけもない。


 俺だってさ、アルトリア以外にいきなり血をくれなんて言われても、まず間違いなく拒否するね。それは古竜さんたちにも同じことが言える。


 たとえ当代のドラゴンロードであるゴンさんからの紹介だったとしても、そう簡単に血を分けてくれるわけもない。


 そもそも古竜の血ってかなり貴重そうだしな。悪用すれば、それだけで波乱が起こる可能性がある。それは血の持ち主である古竜さんたちが一番わかっているだろう。自分たちの血が危険物だとわかっていて、それをほいほいと渡してくれるわけがなかった。


「風さまがいらっしゃれば、少しはお話を聞いてくださったかもしれませんがねぇ。いない以上はぁ、どうしようもないですねぇ」


 ゴンさんは申し訳なさそうな顔をしていた。ゴンさんがそんな顔をする理由はない。そもそも俺がちゃんとエリキサを見つけられていればいいだけの話なんだ。それを誰かのせいにする気はない。悪いのは、後先考えていなかった俺なのだから。


「ないものねだりをしても仕方がないよ。ごめんね、ゴンさん。わざわざ血をわけてくれたっていうのにさ」


「いえいえ、気にしないでくださいぃ。私は私で、カレンちゃんさんと会えるのを、楽しみにしていますからねぇ」


「え? そうなの?」


「はいぃ。カレンちゃんさんと会うのは、私の中で、いま一番の楽しみですからねぇ」


 ニコニコと笑いながら、ゴンさんは言った。なんで俺なんかと会うのが楽しみなのかは、まるでわからなかった。けれど俺なんかと会うだけで、ゴンさんが喜んでくれるのであれば、いくらでも会ってもいい。


「ゴンさんが、そういうのであれば、いつでも遊びに来ていいよ。なんならうちのギルドに、ゴンさんの部屋を用意しようか?」


 職員の人数が当初の半分以下になったせいで、職員用の部屋はまだまだ余っていた。勇ちゃんたちも、それぞれに余った部屋を使っているから、ゴンさんの部屋を用意しても問題はない。あくまでも人化しているときのゴンさんであればだけど。


「ふぅむ。なかなか魅力的なお言葉ですがぁ、いまの私はぁ、ご主人のペット兼護衛ですからねぇ。勝手に引っ越しをするわけにはいきませんのでぇ」


「護衛のわりには、フットワーク軽くないかな?」


 ラースさんの護衛と言うのであれば、もっとラースさんのそばにいるべきだろうに、ゴンさんはわりと城を抜け出してきてくれる。


 まぁ、ラースさんからの許可を得ているというのもあるし、うちのギルドがラースさんの城のそばにあるというのも理由なんだろうね。なにかあれば、すぐに駆けつけることができる距離だった。


 ただすぐに駆けつけることはできても、その場で即応することはできないということでもあるから、ゴンさんが渋ってしまうのも無理はない。


「それを言われてしまうとぉ、私はなんとも言えませんねぇ。まぁ、ご主人であれば、二つ返事で許可を出してくれるとは思いますがねぇ」


「なら、一緒に許可を貰いに行く?」


「ん~、そうしたいところは山々ですがぁ、そうするとアルトリアちゃんさんがヤキモチ妬きそうですからねぇ」


「あ~」


 否定できなかった。アルトトリアはすぐにヤキモチを妬く。


 具体的に言えば、俺がほかの女性と一緒にいるだけで、ヤキモチを妬いてしまう。


 浮気だなんだと言い募ってくれる。まぁ、そういうところも俺にとってはかわいいのだけど、ただヤキモチを妬くたびに、致死量ギリギリまで血を吸うのは、やめていただきたい。


 いや、血を吸っているアルトリアを見られるのは眼福ではあるのだけど、さすがに命と引き換えにというのは、ちょっといただけない。


「なのでぇ、後日また伺いに来ますよぉ。具体的には明日ですねぇ」


「めちゃくちゃ早いね」


「こういうのは、さっさと済ませるべきですからねぇ」


 面倒事とまでは言わないけれど、大変なことはさっさと済ませるに越したことはない。ゴンさんの意見には大いに賛成できる。時は金なりだもんね。


「では、また明日ぁ~」


 人化したままゴンさんは、城へと帰って行った。その翌日、宣言通り、ラースさんの許可を得て、人化中の着替えやらなにやらを持ってゴンさんがギルドに顔を出したのは言うまでもない。

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