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rev4-25 担い手

えー、一週間ぶりとなりました。

そしていつもとは違う時間です、こんばんは。

なんで一週間ぶり&いつもとは違う時間かと言いますと、本当はこの話は5日に更新したつもりだったんですが、予約をマチガエテイマシタ←トオイメ

こどもの日に予約したつもりだったのに、12日に予約していました←

どうりで今日の21時に予約しようとしたら、エラーになるわけです←汗

寝不足はダメっすね←汗

なわけで、明日も「なんでもや」になる予定です。

「おたま」は水曜日か、金土連続かもです。

とにかく、いろいろとご迷惑をおかけしましたが、25話となります。

 突然の来訪だった。


 位の高い相手の元への訪問というのは、前以てアポイントを取るもの。


 それはこの世界だろうと、元の世界だろうと変わらない。


 だが、アリシア陛下はあまりにも唐突に来訪された。


 来訪されたベヒモス様は気にしている様子はない。


 逆に来訪したアリシア陛下は、申し訳なそうなお顔をしていた。もっとも、かなり狸な人だから、それがどこまで本当なのかはわからないが。


 でも、それはあくまでもアリシア陛下だけ。ファラン少佐以下護衛の方々は、アリシア陛下同様に包拳礼に似た一礼を真摯に行っている。


 無理もない。相手はこの国でアリシア陛下以上の地位を持たれている方だ。今回の非礼に対して、思うところはどうしてもある。


 俺も彼らと同じ立場であれば、内心恐縮しているどころか、戦々恐々くらいになっていたかもしれない。


 それくらい、今回の来訪は本来ありえないことだ。


 だが、そのありえないことを選択するほどの状況に追い込まれているということなのかもしれない。


 アリシア陛下はなにを考えているのかはまったくわからない。


 だが、ファラン少佐やその部下の兵士さんたちは、焦りを抱いているようにも見えた。


 その焦りが今回の来訪に対してのものかもしれないけど、そうじゃない可能性も十分にありえる。


 まぁ、どのみち、話を聞かない以上はどうしようもないわけだけども。


「謝罪はよい。して、今日は何用だ、アリシアよ? そなた自らがわざわざ尋ねてくるなど珍しいではないか。それも前以て先触れを出すわけでもなく。なにやらあったのかの?」


 ベヒモス様は穏やかな口調で尋ねていた。その言葉にアリシア陛下は頭をゆっくりとアゲながら告げた。


「……重ねてこの身の非礼をお詫び申し上げます。ですが、こうでも致しませんと、ベヒモス様との面通しが叶わないと思いまして」


「別に、前以て連絡をくれれば、いくらでも対面したが?」


「そうでしょうか? ここ数年は、いくら前以ての連絡を致しましても、ベヒモス様は面通しの許可をくださりませんでした。お体のこともありますゆえ、致し方がないと思っておりました。ですが、此度は「黒雷の戦女神」と称されるレン殿一行が舞い戻ってこられなかったことを踏まえまして、此度であれば面通しが叶うのではないかと思い、無礼を重々承知の上で参上いたしました」


 つらつらと前以て用意されていたような口上を続けるアリシア陛下。


 その口上を受けて、ベヒモス様は小さなため息を吐いた。同時にその視線がアリシア陛下を貫いた。対してアリシア陛下はわずかに口元を綻ばせる。だが、立ち位置の関係からその綻んだ口元はファラン少佐たちには見えていない。


 しかし、その笑みを見てベヒモス様はわずかに頷いた。もっとも頷くという仕草にしては、あまりにも動きが小さすぎた。どちらかと言えば、頭をわずかに動かしたという方が正しいような気さえする。


 でも、その仕草に対して、アリシア陛下の表情は一気に破顔する。どう言えばいいのかな。満面の笑みというか、悪戯心溢れる笑顔と言えばいいのか。ひとつ言えるとすれば、それは実にコメントに困る表情だということくらいかな。


 そのコメントに困る表情を浮かべたアリシア陛下を見て、ベヒモス様は視線をアリシア陛下の背後にいるファラン少佐たちに向けると──。


「その方」


「は、はい! お呼びでございましょうか!」


 ファラン少佐は包拳礼をやめて、背筋をぴんと伸ばして立ち尽くす。それは少佐だけじゃなく、その部下の方々も同じだ。加えて部下の方々は顔面蒼白と言えるくらいに真っ青な顔をしている。いまにも倒れてもおかしくないほどだ。まぁ、少佐はそれ以上に顔が真っ青でいまにもというか、このまま倒れてしまいそうだった。本当に苦労人だなぁと思う。


 そんな苦労人な少佐に向かって、ベヒモス様は鼻を鳴らされ、どこか不愉快そうなお顔で言われた。


「邪魔だ。立ち去るがいい」


「で、ですが」


「なんだ? 我が命を聞けぬと申すか?」


「い、いえ! 失礼を致しました。たたちに部屋の外に」


「部屋の外ではなく、この社の外まで出るがいい。我はそなたらまで滞在を許したわけではない」


「し、しかし」


「なんだ? なにか言いたいことでもあるのか?」


「い、いえ! 失礼いたしました! 陛下、我らはお社の外でお待ちいたしますゆえ」


「わかりました。下がりなさい」


「は!」


 短いが、しっかりとした返事をしながら少佐たちはそそくさと謁見の間から出て行く。その足音は部屋の外では終わらず、足音は徐々に遠ざかっていき、やがて聞こえなくなる。


 そうして足音がきこえなくなってからしばらくの間、謁見の間は無言の時間が流れていった。


 その時間はいったいどれほどのものだっただろうか。


 数分か。それとも数十分か。


 沈黙の時間はあまりにも重々しい空気を漂わせてくれる。


 だが、重々しい空気なのはたしかなのだけど、ベヒモス様とアリシア陛下の表情は雰囲気とはまるで異なっていた。


 なぜかというと、おふたりとも揃って笑顔なんだ。


 それも「してやったり」と言わんばかりに揃って口元を歪めている始末。


 なぜか、一芝居打ってやったぜとアリシア陛下がいまにも言われそうな気がする。


 いや、だが、まさか、ね?


 アリシア陛下のご性格を踏まえると、その可能性はありうる。ありうるんだが、さすがにそれはないだろうと思っていた。そんな時期が俺にもありました。けれど、事実は非常に酷といいますか。小説よりも奇なりと言いますか。


 具体的に言いますと、ね。


 アリシア陛下はいきなりその場で胡座を搔かれたんですよ。


 同時にベヒモス様も人の姿になられると、アリシア陛下のすぐそばにまで近寄られると同じようにあぐらを搔かれました。


 そこから先はあっという間だったね。


 アリシア陛下はアイテムボックスからなぜか酒壺を取り出されると、ドンと強く床に置くと、ご自身の前とベヒモス様の前に杯をそれぞれ置かれたんだ。そしてその杯に酒壺の中身をなみなみと注ぐやいなや──。


「はー、やーっといなくなったぜ、あの堅物は。まったく、ちぃっとばかっし酒飲みに来ただけだっつーのに、わざわざ護衛になるなんざ言いやがってからに」


 ──苦虫を潰すかのような、とっても忌々しそうなお顔になりながら、注いだ杯を手に取ったんだ。そのあまりにもいつも通りすぎる態度に俺は固まった。いや、俺だけじゃないか。アスランさんも含めたほぼ全員があまりの発言に固まってしまっていた。


 固まっていないのは、アリシア陛下の対面のベヒモス様と、酒につられてふたりのそばにいつのまに座っていたルリだけだった。ベヒモス様はいいとして、ルリはダメだろうと言いたかったが、当のアリシア陛下とベヒモス様は気にしていなかった。それどころか──。


「おや、大姉上もやられますかの?」


「はっ! いいねぇ! 元神獣サマとはもう一度飲みたかったところだしなぁ。まぁ、差し飲みじゃないのが、ちょい残念だが、まぁ、爺さんの墓前酒にはちょうどいいか」


「これ、アリシアよ。我はまだ死んでおらんわ」


「なぁに抜かしてやがる。そんな骨と皮だけの体になりやがったくせによぉ。だから、俺が毎回飯よこしてやっているってのに、そのまま送り返しやがるしさぁ」


「仕方なかろう。飯を食ったところで状況は変わらぬ」


「それでも、なにも食わねえよりかははるかにマシだろうがよ。まったく、そんななりになっても昔となんも変わらねえよな、あんたはさ」


 そう言って杯を呷るアリシア陛下。呷りつつも、杯をもう1つ取り出して、ルリに差し出していた。差し出された杯を受け取ってからルリはその杯に酒壺の中身を注いでいく。


「……やはり、女王陛下殿は我の正体に気づいておったか」


「まぁ、気づいていたというか、そっちの爺さんに話を聞かされていただけだよ、元神獣サマ。あぁ、いや、フェンリルサマと言うべきかね?」


「ふん。どちらでもいいと言いたいところだが、いまの我はルリだ。知っておるであろう?」


「わかっているよ。あえて言わせてもらっただけさ」


「ならいい」


 ルリは注いだ杯を陛下同様に呷る。見れば、ベヒモス様も少量だが、少しずつ杯を呷っていた。


 状況に少々どころか、大いに着いていけていない。


 というか、ルリの言った「やはり」ってどういうことだろうか? 


 アリシア陛下がルリの正体に気づいていたことをルリ自身は知っていたってこと?


 しかも、ただ知っていただけじゃなく、ベヒモス様から聞かされていた?


 そのベヒモス様相手に、アリシア陛下は慇懃無礼、いや、もう完全に無礼にもほどがある態度を取っているし、なのにベヒモス様は全然気にしていない。どころか、それが当たり前みたいな態度だし。


 もういろいろと意味がわからない。


 いったいなにがどうなっているんだろうか?


「んー? どうかしたかー? 神子サマ? それとも婿殿がいいかね?」


「いや、どちらでもっていうか、そっちも知っているんですか?」


「おうよ。まぁ、つっても、ほんの数日前までは半信半疑だったけどな」


「半信半疑?」


「そりゃそうだろうよ。なにせ、50年前から言われ続けてきたしなぁ。今日明日のことだって言われても疑うっていうのに、50年後のことなんざ言われても半信半疑になるだろう、普通」


「えっと?」


 話が読めない。


 アリシア陛下がなにを言われているのか、まるで理解できなかった。


 そんな俺の様子にアリシア陛下もベヒモス様も揃って笑っていた。ルリは相変わらず憮然とした様子で呷っているけれど、興味深げにアリシア陛下を見つめていた。


「まぁ、一言で言えば、俺はあんたらがここに来ることを50年前から知っていたのさ。そちらにおわすくだばり損ないの神獣サマに教えられてな」


「これ、アリシアよ。口が悪いぞ?」


「うっせえな。俺のこれは昔からなのは、あんたも知っているだろうがよ!」


「だからといって、ここには幼い子もおるのだ。年長者としての自覚をだな」


「はいはいはい! もう耳がたこになりそうなくらいに聞き及んでいますよー」


「これ、アリシア!」


「だからうっせえわ、このクソジジイ!」


 いまにも説教しそうなベヒモス様とそんなベヒモス様を鬱陶しそうにぞんざいに対応するアリシア陛下。……なんだろう、見た目は同じくらいに見えるのに、内容は自由奔放すぎる孫娘に苦慮するおじいちゃんというように見えてならない。


 本当にいったいどうなっているんだか。


「……やれやれ、こういう主従もどうなのかの?」


 ルリが呆れたように呟いた。呟いたが、その言葉はなんだか含みがあるように感じられた。

「おっと、さすがはルリサマ。気づいたかい?」


「元からそうではないかなと思っていただけだ。ただ、確信したのは女王陛下がここまで来てからだがな」


「なるほどなるほど。だが、神子サマと比べりゃ上出来だろうさ。なにせ、俺と爺さんの関係に気づいてなかったしな」


「いや、気づけるわけもあるまいて。普通はわからぬよ」


「まぁ、それもそうだなぁ」


 今度はアイテムボックスから干物を取り出して、炙りはじめるアリシア陛下。完全に酒盛りと化しているが、それはもういい。大事なのはだ、3人の言っている意味がいまだにわからないということだった。


「えっと」


「簡単なことだ、レン。この女王陛下と四のは、そなたの嫁になった女王陛下と七のと同じということだ。もっと言えば、プーレリアとも同じという方がわかりやすいかの?」


「ルクレとプーレと同じ? ……もしかして、アリシア陛下って」


 ルリの言葉を聞いて、アリシア陛下を見遣ると、アリシア陛下は炙った干物を豪快に噛みつきながらも頷かれた。


「おう。俺もルクレと同じで、神器の担い手だ。まぁ、元がつくがね?」


 アリシア陛下が口にした言葉で、3人以外の絶叫が謁見の間に響き渡ることになったのだった。

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