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rev1-31 醜いもの

ようやくこちらも更新できました。

dm200のセッティングにいろいろと手間取りまして。結局ケーブルでやった方が面倒でなくてええわと言う結論に至った次第です←トオイメ

まぁ、それはさておき。

今回からイリア視点になります。今回はやや短めですが←汗

やや重めな話になりますので、ご注意ください。

 それはとても醜かった。


「あー、あー、あぁぁぁぁぁぁ!」


 青白い毛並みの巨体は美しかった。その身の向こう側さえも透けて見えてしまいそうなほどに、不純物のない巨大な氷の塊のように見えた。


 けれど、それはとても醜かった。体はきれいなのに、顔が醜かった。なにせ、顔の下半分がどろどろに溶けた肉とその下からは骨が見えていた。上半分はとても整った顔立ちをしているのに、下半分のせいで台無しになっている。それが余計に醜さを強調していた。


 でも、その顔はたしかに醜いものではあるけども、本当に醜いのはその子じゃない。むしろ、顔なんて気にならないほどに、その心はとても美しかった。だから醜いというのはその子を指すものじゃない。その子を取り巻く者がただただ醜かった。たとえそれがかつて敬愛したあの人の、変わり果てたあの人であっても。その姿はひどく醜いと思えた。


「ふふふ、どうシリウスちゃん? 新しい力は得られたかしら?」


「あぁぁぁぁぁぁ!」


「あらあらあら? 嬉しすぎて、まま上にお返事もできないの?」


「あぁあぁぁぁぁぁぁあ!」


「ふふふ、いい声で啼くわね。見た目は、少しも似ていないけれど、声だけはあの子とそっくり。だからかしらね? あなたの苦しむ声は聞いていると、すごくぞくぞくするの。興奮さえしてしまいそうなほどに。ふふふ、イケないことだとわかっているのに、愛娘の苦しむ声で興奮なんてしうまうなんて。イケないまま上よね」


「いだい、いだい、いだいよぉぉぉぉ! ままうえ、ままうえぇぇぇぇぇえ!」


「あぁ、いいよ。最高にかわいいわ。もっといい声で啼きなさい。少しでも私を楽しませてね? シリウス(代替品)ちゃん?」


 くすくすと上機嫌な声が響く。なにがそんなに楽しいのか、私にはわからなかった。その子は必死にあなたを呼んでいるのに。あなたへ助けてほしいと泣き叫んでいるのに。なんで笑っていられるのかがわからない。どうして頬を染めているのもわからない。そんなお気に入りのオモチャで遊んでいるみたいな態度を取れるのかがまるで理解できない。


「やめて」


 腕の中でベティちゃんが言った。ベティちゃんは大粒の涙を流しながら、その光景を見つめている。けれどあの子の泣き叫ぶ声でベティちゃんの声はかき消されている。でもそれ以上に、周囲を満たす強い怒気がすべてを押し流していた。


「……ふざけるなよ、あの女」


 仮面越しでもわかるほどの強い怒り。ルリ様がお怒りになられている証拠だった。その小さな手は血で濡れていた。ルリ様自身の血で、爪が食い込み、手のひらの皮膚を破ってしまった結果、ルリ様の手はご自身の血で染まっている。


 目の前の光景はルリ様にとって、許されざること。ルリ様の怒りを買う行為。だからこその怒り。その怒りはいまにも暴発しかねない。


 でも、いまこの場にはベティちゃんがいた。ベティちゃんがいるからこそ、ルリ様はまだ抑制されていた。ベティちゃんを巻き込みかねないからこそ、抑制されている。それがかえって現状を、あの人の凶行を加速させてしまっていた。


 でも、あの人はそのことを知らない。いや、知っていたとしても、あの人は同じことをしていたのかもしれない。あの人は、姉様はそういう人だった。そういう人になってしまっている。


「そういえば、あの人はまた新しい娘を用意してくれたのね。ふふふ、本物のシリウスちゃんやカティちゃんによく似ている。こんな代替品とは違ってね」


 くすくすと笑いつつ、姉様は私の腕の中にいるベティちゃんを見つめていた。その視線はとても妖しい。その視線に晒され、ベティちゃんは体を震わせた。その反応さえも姉様には興奮しているみたい。その様子にルリ様が強く歯を噛み締めていた。


「貴様が継嗣とカティの名を口にするな。そしてベティをその目で見るでないわ!」


 ルリ様が吼える。その咆哮は霊山そのものを震わせてしまうのではないかと思えるほどに大きかった。それだけルリ様が感情をあらわにされているということ。ここ数ヶ月、一緒に暮らしていて忘れそうになってしまうけれど、この方はやはり神獣の一角だったのだと思い出させるには十分すぎた。


 それでもなお、姉様は笑っていた。笑いながら、その足下にいるあの子を見つめていた。


「ふふふ、怖い怖い。ねぇ、シリウス(代替品)ちゃん? あの怖~いお姉さんからまま上を守ってちょうだい? そうしたら、その痛みから解放してあげる。いいえ、それだけじゃなく、その醜い顔をきれいに治してあげる」


 笑いながら姉様は言った。でもその声は優しいのに、言葉は辛辣だった。母親として慕ってくれている子相手に「醜い」と言い切った。その時点でこの人は壊れているんだと思った。それがとても悲しかったし、胸が痛かった。


 けれど、私の心情など姉様にはどうでもいいのだろう。姉様はあの子を、シリウスちゃんそっくりなプロキオンを、「古き神」と一体化し、巨体の狼となったプロキオンの頭を蹴りつけた。


「さぁ、蹂躙なさい、代替品」


 にやりと口元をゆがめて笑う姉様と、その命令に従って動き始めたプロキオン。そんな光景を見つめながら、私はいまに至るまでの数十分のことをおもいかえしていた。

プロキオンはもう少し引っ張る予定だったけど、予定を早めました←

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