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rev1-3 違和感

遅くなりました←汗

P.s.サブタイ間違えていました←汗

シリウスが咆哮をあげていた。


その目はまっすぐに俺を見つめている。憎悪に満ち溢れた瞳で、殺意しか感じられない。


愛娘にそこまでの殺意を向けられるというのは、胸を痛ませてくれる。


だが、そんな俺の心情なんてシリウスにはどうでもいいようだ。


ただまっすぐに駆け抜けながら、咆哮をあげる姿は一頭の獣だ。下半分を覆う覆面越しに、鋭い牙が見えるようだった。


アイテムボックスから魔鋼の刀を取り出して下段に構えた。本当は素手で相手をしたいのだけど、シリウス相手に下手な手加減はかえって危ない。


シリウスはそれほどに強い。俺の自慢の愛娘たちの一番上のお姉ちゃんだった。


そんなシリウスに怪我をさせないようにしながら制圧するというのは、もはや神業に近い所業だった。


だけど、いまはその神業にあえて挑むしかない。そうして魔鋼の刀を構えると、シリウスもまたアイテムボックスから二振りのナイフを取り出し、左右それぞれに握りしめた。


「パパの仇!私からパパを奪った仇!」


シリウスは泣いていた。左目から涙を流しながら怨嗟の声をあげていた。


(……顔を隠しているからわからないのかな?それとも鼻が利かなくなっているのかな?)


どちらなのかはわからない。


だが、いまのシリウスは「レン」と「カレン」を別人だと思っているようだった。そしてその別人である「レン」が、シリウスのパパだった「カレン」を殺したと思い込んでいるようだった。


外見はたしかに変わった。服装は以前とはまるで違う。手にしている武器は、魔鋼の刀だけ。ガルムが宿っていた「黒狼望」は消滅してしまった。「黒天狼」はどこに行ったのかもわからない。シリウスの前で魔鋼の刀を振るうのは、あまりしたことはなかった。


だからこそ、魔鋼の刀を持つ俺を見ても、「レン」と「カレン」が同一人物だとは思えないでいるようだった。


ふぅ、と小さく息を吐きながら、刀を握る手に力を込めていく。


ほどなくして、シリウスが間合いに入り込んだ。迷うことなく、刀を下段から上段に振り上げる。シリウスは身を屈めて最初の一撃を避ける。でも動きは止まった。


「双剣で脚を止めたらダメだろう?」


振り上げた刀をシリウスの頭上目掛けて振り下ろす。シリウスは舌打ち混じりに転がるようにして、時計回りに避けた。振り下ろした剣は空を斬った。シリウスはふぅと一息吐きながら立ち上がろうとしていた。


だが、まだ俺の攻撃は終わっていない。右足を軸にして、駒のように回転しながらシリウスの後を追いかける形で刀を走らせる。


「なっ!?」


シリウスが驚愕としていた。そんなシリウスを眺めながら鞘を左手で掴んだ。


シリウスは刀だけを見つめていた。刀を避けることに集中していて、俺の左手は見ていない。


(まだ甘いな)


俺も人のことは言えないけど、シリウスは戦闘能力に反してまだ経験が浅いようだった。というよりも自分の力に振り回されている感じがする。


(数百年生きたと言っていたけど、あれは比喩だったのかな?数百年生きたにしては、お粗末な気がする。いや、油断はしない方がいいな。いつ想定外の動きをするのかわかったものじゃない)


シリウスの動きは誘いという可能性も十分にあった。むしろ誘いだと踏まえれば、その動きの拙さの理由もわかる気がする。


(そもそもなんで武器なんて持っているんだ?シリウスはどちらかというと無手の方が強いはずなんだが)


シリウスは無手の方が強い。マーナが宿る「黒護狼」を手にすることは多いけど、基本的には無手の格闘の方が合っている。


なのにいまのシリウスはなぜか双剣を手にしている。その戦闘スタイルはシリウスというよりも、カルディアのものに近い。ただカルディアのそれをいくらかダウングレードしたもので、まるっきりカルディアと同じというわけじゃない。


そもそもカルディアならば、とっくに反撃に出ている。


仮にカルディアの戦闘スタイルをなぞらえていたとしても、シリウスのそれはいまのところお粗末だった。


威勢よく突っ込んできたのはいいけど、反撃する余裕もなく、回避しかしていない、というのはお粗末にも程がある。


(……なにが狙いだ?)


シリウスの狙いがわからない。わからないけど、いまはただ本命を振り下ろすことだけを考えればいい。


俺が狙う本命。それは──。


「くっ!」


シリウスが双剣を交差して重ね合わせた。そこに刀の一撃が直撃する。シリウスの双剣と俺の刀が鎬を削っていくが、俺の本命はこれじゃない。


「……刀だけを見ているのはよくないな」


ぼそりと忠告してあげた。シリウスが「なに?」と言うのと同時に、左手の鞘をシリウスの首筋に振り下ろした。


「なっ!?」


想定外の一撃だったんだろう。


シリウスは慌てた。だが、もう遅い。本命の鞘の一撃はすでに放たれた。誘いの刀の一撃に乗った時点で、負けは決まっていた。


「……ごめんな。せめて一撃で意識を刈り取るから」


あまりしたくはなかった。けれどシリウス相手に下手な手加減はできない。


だからこればかりは致し方がなかった。


(後で何回でも謝るから許してくれ)


心の中で謝罪しながら、鞘の一撃はシリウスの首筋に直撃したんだ。

違和感を覚えるレンでした。

次回もレン視点です。

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